2015 Fiscal Year Annual Research Report
LHC軽原子核衝突超前方測定にむけたシリコンピクセルカロリーメータの開発
Project/Area Number |
25287056
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
さこ 隆志 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (90324368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛受 弘彰 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10447849)
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 高エネルギー原子核反応 / LHC加速器 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに完成した信号読み出し回路によるシリコンピクセル検出器の試験を継続した。その過程で連携研究者の田島らとさらに汎用性の高い読み出し回路の製作に成功した。新読み出し回路を用いたミュー粒子の測定に成功し、多層読み出しに向けた準備を進めた。この点で旧回路を用いた研究の繰り返しとなり若干の遅れを生じたが、新回路を用いることで、同時複数読み出しの自由度が高まり、信号対雑音比の改善も見込まれる。 モンテカルロ計算による将来のLHC酸素原子核衝突実験の可能性を詳細に検討した。宇宙線研究に使用されている最新のモデル QGSJET II-04, EPOS-LHCと SIBYLL 2.1により LHC酸素原子核衝突を再現し、陽子衝突の計算と比較することで各モデルの原子核効果の違いを求めた。その結果、軽い原子核にもかかわらず、モデルによる違いが2倍もあることが明らかになった。これらの違いを明らかにするために検出器に要求される性能は、5mm以上離れた粒子を確実に弁別することである。ピクセル検出器のピクセルサイズを変えた検出器シミュレーションとデータ解析を行ったところ、2mm角が最適なピクセルサイズであることが明らかになった。 イタリアの研究協力者が準備したシリコンストリップ検出器を用いて、タングステンを用いたサンプリングカロリーメータの加速器ビーム試験を行った。CERN SPS加速器で 100-250GeVの電子ビームを照射し、電磁シャワーの横広がりを測定しMC計算を比較したとことろ、シャワーの構造がMC計算でよく再現されていることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までに開発した信号読み出し回路で試験を続けてきたが、今後の発展性を考慮した新読み出し回路の開発を進めたため。開発は連携研究者によって進められ成功し、年度途中から本研究にも使用した。当初は基本性能確認のための基礎測定に終始したため、若干の遅れとなった。ただし、本読みだし回路を利用することで、28年度の研究を効率よく進め遅れを取り戻すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
新読み出し回路を用いた複数枚のピクセル検出器読み出しを実現する。はじめに2-3層でのミュー粒子望遠鏡を完成し、宇宙線の到来方向分布の測定を行う。定常観測により東西効果の測定ができることを確認する。層間にタングステン板を挿入し、シャワーカロリーメータを実現する。定常観測によって、宇宙線電磁成分およびハドロン成分によるシャワーを観測し、そのエネルギー、到来方向分布を測定する。現在の回路ではダイナミックレンジが狭いため、高エネルギーのシャワーではサチュレーションが起きるはずである。サチュレーションが起きた事象を実際に記録し、これを解析で処理する方法、できない限界も明らかにする。また、測定結果を CORSIKAシミュレーションと比較し、妥当性を検証する。これらの測定によって本研究の技術的実証を完成する。 昨年度に進展したLHCでの実験デザインのシミュレーション計算を進め、より詳しい装置デザインと提案を行う。昨年度は無視した読み出し回路の雑音やダイナミックレンジも考慮し、これらの読み出し回路性能に対する要求を明らかにすることで、将来のデザイン目標を明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度途中で読み出し回路の性能を向上させた。本来は、旧回路の構造をもとにタングステンカロリーメータを構築する予定であったが、新回路の動作確認と新回路用カロリーメータ開発が遅れたため次年度使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新回路の読み出しは成功しており、新回路を用いたカロリーメータ開発を行う。旧回路でのカロリーメータ構造のデザインは完成していたので、この小さな修正と実際の建設を行うのみで遅れを取り返すことは可能である。
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Research Products
(4 results)