2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光によるディラック電子系における微細電子構造の解明
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25287079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇史 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 鉄系超伝導体 / ディラックコーン / スピン偏極 / フェルミ面 |
Research Abstract |
本年度は、ディラック電子系の電子状態を明らかにするためにスピン分解光電子分光装置の改良・調整を行った。とりわけ、スピン検出部の心臓部となるターゲット材料の作成を行い、清浄試料表面を得る事に成功した。装置の建設・改良と同時並行して、いくつかのディラック電子系の電子状態の決定を行った。様々なトポロジカル絶縁体について角度分解光電子分光(ARPES)実験を行った結果、表面バンドにおいて物質の種類に強く依存した六回対称のフェルミ面およびバンド構造の歪みを観測した。スピン分解ARPES 実験により、これらの表面ディラック電子状態は共通して面内ヘリカル方向のスピン偏極度を示す一方で、物質の種類に依存して面直方向にも有限のスピン偏極度を示すことを見出した。バンドの歪みを定量的に評価した結果、スピン面直成分とバンドの歪みには明確な相関がある事がわかった。この結果は、表面ディラック電子のスピン偏極度とバンド形状の相関関係を初めて示したものであり、基礎実験やデバイス応用などにおいて、トポロジカル絶縁体のスピンを制御する上での実験的指針を与える。また、分子線エピタキシー法によって最も単純な結晶構造を持つ鉄系超伝導体であるFeSeの超薄膜をSrTiO3の上に成長させる事に成功し、その電子状態を高分解能ARPESを用いて決定した。その結果、ブリルアンンゾーンの対称点から少しずれた波数において、低温でディラックコーン的なバンド分散を見出した。このディラックコーンは高温で消失することから、その起源として、斜方晶への構造転移および磁気転移が関係していると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン分解光電子分光装置の建設・改良においては、ターゲット材料の清浄試料表面を得る事に成功したが、まだ装置との完全なマッチング調整が不十分であり、次年度にさらに調整を行う必要がある。 トポロジカル絶縁体については、種々の物質、とりわけ、Bi2Se3, Bi2Te3, TlBiSe2, PbBi2Te4などの物質でフェルミ面の精密決定とそのスピン分解ARPES測定に成功し、高精度でフェルミ面ワーピングパラメータとスピン偏極度が実験で決定できたことから、当初の予定以上の成果が得られたと思われる。 鉄系超伝導体においても高品質の薄膜試料を育成することに成功し、そのディラック電子状態を決定する事ができたことから、研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スピン分解光電子分光装置の更なる改良・調整を行い、その装置と高輝度放射光施設を併用して、ディラック電子系の微細電子構造を高精度で決定するスピン分解角度分解実験を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スピン分解光電子分光装置の開発に必要な真空パーツや試料基板などの設計に当初の予定からの変更の必要が生じたため、次年度に調達する事とした。 平成26年度請求額とあわせ、真空パーツや試料基板などの消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(21 results)