2013 Fiscal Year Annual Research Report
極限条件下の角度制御核磁気共鳴測定による量子相転移の研究
Project/Area Number |
25287083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴 / 量子相転移 / 極限条件 / 重い電子系 / 量子スピン系 |
Research Abstract |
極低温高圧下の角度制御NMR測定技術の開発:2軸回転機構を用いて、圧力セルの方位を超伝導マグネット中で自由に制御するために、本年度はまず3Heガス循環型の大型の3He冷凍機の設計を行った。物性研究所内の超低温技術の専門家と相談しながら、既存の超電導マグネットの一部である4He温度可変インサートを1Kポットとして使用し、圧力セルの冷却に必要な大容積を備え、かつ循環3Heガスの冷却効率を最適化するような構造を検討し、設計をほぼ完了した。 フラストレートした擬1次元スピン系の研究:最近接強磁性相互作用と次近接反強磁性相互作用がフラストレートした擬1次元スピン系LiCuVO4単結晶について、平成24年度にアメリカ国立強磁場研究所において45テスラまでの強磁場、0.4Kの極低温において核磁気共鳴の測定を行ったが、本年度はその結果の解析を完了した。バナジウム原子核の共鳴周波数シフトは、41テスラ以上で磁場に依らない一定値を示し、磁化の結と一見矛盾する結果となった。一方、核磁気緩和率の磁場・温度依存性からは、励起ギャップがスピン1個のゼーマンエネルギーの2倍であることがわかり、2マグノン束縛状態の存在が示された。このことは飽和磁場以下で、2マグノン束縛状態が試料の不均一性によって局在していることを示唆している。この結果は現在論文投稿準備中である。 価数搖動を示す重い電子系化合物ベータYbAlB4について、アルミおよびホウ素原子核の核磁気共鳴測定を、希釈冷凍機を用いて50mKの極低温まで行った。比熱や磁化の結果からの予想と異なり、磁場を磁化用意軸に垂直にかけてゼーマンエネルギーの寄与を抑えた条件下でも、核磁気緩和率には量子臨界性を示す発散的振る舞いは観測されなかった。この結果も現在論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技術的側面に関しては、希釈冷凍機ないでピエゾ素子を用いて試料の2軸回転を行うことができ、初期の目的は一応達成された。しかし動作がまだ不安定で再現性にも問題があり、引き続き改善の努力が必要である。3HeインサートおよびNMRプローブに関しては、設計が終了したが、これから製作を開始する段階である。設計段階で試料容積の確保や3Heガスの冷却効率など様々な問題が生じたため、予定より少し遅れている。 核磁気共鳴実験に関しては、フラストレートした擬1次元スピン系LiCuVO4と、重い電子系化合物ベータYbAlB4に関する当初予定してた測定をほぼ終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず3Heインサート、NMRプローブに関して完了した設計に基づき、製作を進める。核磁気共鳴測定に関しては、新しく開発されたフラストレートした擬1次元スピン系の測定を進め、スピンネマティック秩序を検証する。また四極子近藤効果を示すPrTi2Al20の極低温下の測定を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は3Heインサート、およびNMRプローブの製作を平成25年度内に関しする予定であったが、構造の検討・設計に多大な時間を要したため、製作は次年度に持越しとなった。 3Heインサート、およびNMRプローブの製作費に充てる。
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Research Products
(8 results)