2014 Fiscal Year Annual Research Report
光ポンピングと超偏極ラベリングによる表面敏感NMR法の開発
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25287092
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
後藤 敦 独立行政法人物質・材料研究機構, 極限計測ユニット, 主幹研究員 (30354369)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気共鳴 / 動的核偏極 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、表面敏感な核磁気共鳴法を実現するための技術として、半導体の光ポンピング核磁気共鳴技術と固体界面での核磁化転写技術の組み合わせによる「超偏極ラベリング技術」の開発を目指している。初年度(平成25年度)は、本技術の実現に不可欠となる「光ポンピング核磁気多重共鳴装置」について、その主要部分となる「試料ステージ及びマウント機構」の開発を行った。これを受けて、本年度(平成26年度)は、開発したシステムの低温での安定性の評価を行った。砒化ガリウム試料を対象に光照射下での光ポンピング効果の確認を行い、十分な性能が発揮されていることを確認した。 続いて、光照射と核磁気共鳴用の高周波パルスのタイミングを一体制御するためのシステムの開発を行った。まず、準備として、砒化ガリウム試料におけるガリウム核の低温での光ポンピング強度の照射波長依存性の測定により、光ポンピングスペクトルの詳しいデータを得た。その結果に基づき、光ポンピングに最適な波長を決定し、光源となるレーザーシステムの仕様を決定した。さらに、その仕様に基づき励起光源システムの導入を行った。今後、同システムとプローブをつなぐ導光システム、及び、核磁気共鳴装置と同期させるためのシステムの開発を予定している。 また、これと平行して、偏極転写技術の開発に向けた基礎測定を開始した。具体的には、偏極転写のモデル物質として砒化ガリウム・燐化ガリウム系の積層構造を用い、数十ナノメートル程度の厚さを持つGaAsP層内の希少核であるリン核の偏極度をガリウム核に移動することで、リン核に近接するガリウム核の選択的な検出を試みた。すでにリンの核磁気共鳴信号の検出には成功しており、引き続きガリウム核への偏極転写を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、前年度の研究の継続から開始し、引き続き新規の開発を行った。前者はほぼ予定通りに進行したが、後者において、光源システムの仕様を決めるための予備測定に多少の時間を費やした。すでに仕様が決定し光源の導入も完了したことから、今後、目標とするシステムの開発を着実に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は以下の予定で開発を進める。まず、前年度に開始した光-高周波の一体制御システムの開発を進める。具体的には、前年度に導入した励起光源システムからクライオスタットの真空槽内のプローブまで光ポンピング用の励起光を導光するためのシステムの開発を進める。さらに、光源システムの変調機構を用いて、励起光を試料に照射するタイミングを制御する技術を開発する。具体的には。核磁気共鳴分光計の高周波、及びパルス出力部分の改造を行うとともに、測定に必要となる具体的なパルスシーケンスの開発を進める。 また、これと平行し、前年度に開始した偏極転写の模擬実験を進める。核スピン偏極の転写モデルとして砒化ガリウム・燐化ガリウム系の積層構造を用い、特定の原子核の核磁気共鳴信号を選択的に検出することで、本技術の実効性を検証する。
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Causes of Carryover |
今年度導入した「光―高周波一体制御用の励起光源システム」において、当初は複数の波長の光をコンバイナーでまとめる構想であったが、再検討の結果、コンバイナーを使用せずに単一波長で励起する方式に改めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度雇用する研究協力者の雇用費に充当する予定。
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Research Products
(2 results)