2014 Fiscal Year Annual Research Report
5d遷移金属酸化物の強いスピン軌道相互作用がもたらす強相関量子相に関する微視理論
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25287096
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
柚木 清司 独立行政法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 准主任研究員 (70532141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 知功 独立行政法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 基礎科学研究員 (40571237)
渡部 洋 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 協力研究員 (50571238)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 5d電子系 / 遷移金属酸化物 / スピン軌道相互作用 / 第一原理バンド計算 / ヘテロ構造 / 動的平均場近似 / 変分クラスター近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず、正方格子上に定義された一軌道ハバード模型のハーフフィルドにおける温度誘起金属絶縁体の性質を変分クラスター近似を用いて調べた。その結果、金属絶縁体転移は、相互作用Uが小さい場合はスレータ型、相互作用が大きい場合はモット型であることがわかった。これは、例えば、ネール温度以下および以上の一粒子励起スペクトルを見るとその区別ができることを指摘した。次に、SrIrO3とSrTiO3からできた超格子構造の電子状態を第一原理バンド計算を用いて調べた。その結果、(SrIrO3)1/(SrTiO3)1超格子構造では、有効角運動量Jeff=1/2の反強磁性絶縁体が実現し、磁気モーメントはxy平面内にねており少しキャンとしていることが分かった。これらの結果は実験結果と非常に良く一致している。さらに、強誘電体物質であるBaTiO3と5d遷移金属酸化物であるBaOsO3あるいはBaIrO3を用いたヘテロ構造界面では、ラシュバ効果が非常に大きくなり、しかもその符号が強誘電体の分極を反転することにより正から負に制御できることを第一原理バンド計算より提案した。また、スピン軌道相互作用が強い三軌道ハバード模型で電子濃度が5であるときの基底状態相図を動的平均場近似を用いて調べた。その結果、クーロン相互作用が大きい場合、スピン軌道相互作用が大きいければ、Jeff=1/2反強磁性絶縁体が基底状態であるが、そこからスピン軌道相互作用を小さくしていくと励起子絶縁体が出現することを明らかにした。これは、低スピン状態でしかも強いクーロン相互作用と弱いスピン軌道相互作用の領域で実現するユニークな基底状態である。最後に、この模型に対して、磁気励起をRPA近似を用いて調べた。その結果、フント結合が有限である場合にだけ磁気異方性が現れることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はまず、Sr2IrO4に代表されるスピン軌道相互作用が強い多軌道ハバード模型の磁気励起スペクトル、電荷励起スペクトル、およびRIXSの計算を行い、低エネルギー励起がそのような励起で特徴づけられるか解明する。次ぐに、5d遷移金属酸化物を用いた遷移金属へテロ構造で実現するユニークな電子状態を第一原理バンド計算をもとにに調べる。5d遷移金属のなかでもIrとOsに焦点をあてる。
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Causes of Carryover |
第一原理バンド計算を行うポスドクの雇用(半年間)を初年度見送ったため、おおむねその分の予算を今年度も繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第一原理バンド計算を行うポスドクの雇用を今年度半年間ではなく一年間に変更する。
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Research Products
(8 results)