2014 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡散逸系におけるプロトコル依存性の解析とその「熱」機関への応用
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25287098
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 尚男 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (90222223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 智香子 山梨大学, 総合研究部, 教授 (30221807)
沙川 貴大 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60610805)
渡辺 優 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (80633271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロトコル依存性 / 熱機関 / エントロピー / レオロジー / 粉体 / 量子非平衡 / 熱化 |
Outline of Annual Research Achievements |
非ガウスノイズは非平衡系において普遍的に現れるノイズであり、その存在によって特異なプロトコルに依存した「熱」機関を作り得る可能性を秘めている。しかし、その発現メカニズムは明らかになっていなかった。当該年度は研究代表者のグループでブレークスルーがあり、ガウスノイズと非熱的なノイズの共存によって非ガウスノイズが普遍的に現れる事を明らかにした。 また、代表者等は熱浴をサイクリックに制御する事でパラメータ空間に現れるベリー曲率を利用した量子ポンプに流れるカレントの非断熱効果を解析的に明らかにする事や、その考え方を液晶高分子に適用する事にも成功した。更になだれが与える剛性率への影響や、粘着性粉粒子のレオロジー、高密度剪断粉体系のモード結合理論、量子ローレンツ気体での固有値解析が使えない例外点での扱いに成果を出した。 一方、量子非平衡系においてエントロピー生成をどう定義すべきかは基本的な問題である。沙川らは従来理論的に提案されていた量子軌道を用いた定義と、量子相対エントロピーを用いた定義が等価であることを証明した。それに基づき、量子相対エントロピーの単調性の新しい証明を、特別なクラスのCPTP写像について示した。 また沙川はフィンランドのグループとの共同研究により、単一電子箱を用いて、フィードバック制御により情報を仕事に変換する情報熱機関を実験的に実現した。この際の効率は約75%であった。さらに相互情報量を含んだ形の一般化Jarzynski等式を検証した。 また渡辺は、孤立量子系の熱化に際し、マクロな物理量の緩和現象がランダムな帯行列によって近似的に記述されることを示し、マクロな物理量の緩和のタイムスケールはシステムサイズが大きくなるにつれて長くなる事を示している。この成果は未だ論文としてまとめられていないが、興味深い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者と沙川を中心に研究論文は雑誌論文だけでも13本で、数多くの招待講演をこなし、実績は順調に挙がっている。また交付申請書と照らし合わせてもほぼ予定通り研究が進んでいると言って良い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も概ね交付申請書に書いた計画に従い進めていく予定である。研究メンバー間の議論を深めるために研究成果交換会を開き、随時Skype等を使って議論を深めていく予定である。
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Research Products
(35 results)