2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25287104
|
Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
山下 眞 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (00393786)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 弘光 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究員 (00649551)
稲葉 謙介 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究主任 (10564990)
土浦 宏紀 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30374961)
菅 誠一郎 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40206389)
鈴木 隆史 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40444096)
向井 哲哉 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (70393775)
栂 裕太 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70641231)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 冷却原子気体 / 光格子 / 多成分 / 量子物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究成果を理論と実験に分けて報告する。 【理論】NTT理論グループと東北大グループは共同で、光格子中のボース原子気体のダイナミクスを解析し、動的不安定性の前駆現象として密度変調が生じることを明らかにした。さらに、この解析をスピン1の三成分ボース原子気体に適用し、超流動スピン流が対向的に流れる場合、動的な磁気不安定性が生じることを見出した。また、兵庫県立大グループでは、閉じ込めポテンシャルの影響で二次元光格子のボース・モット絶縁相に生じるギャップレス・エッジ状態を解析し、その普遍的性質を明らかにした。 並行して、新奇量子相の探索に向け、最近光格子で実現されている特殊な格子構造に対する基礎理論の構築を精力的に進めた。NTT理論グループでは、光格子の実験に即して、多層構造になったLieb格子において強磁性状態が発現するメカニズムを解明した。さらに、この理論を有限温度に拡張し、多層化によって平坦バンドを制御することで磁気転移温度を大幅に上昇させることが可能であることを明らかにした。また、兵庫県立大グループはハニカム格子におけるスピン流体相の動的性質を粒子間相互作用とスピン軌道相互作用の影響に注目しながら、詳細に調べた。その成果は国際会議で発表し、現在論文化を進めている。 【実験】NTT実験グループは、より擬一次元性の強い磁場ポテンシャルを発生させるための新しい超伝導アトムチップを作成し、擬一次元ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)の生成に成功した。飛行時間法(TOF)の観測結果は、一次元の軸方向にいくつかのピークに分裂し、そのピークの大きさや形状は測定ごとに異なることが分かった。これは、3次元的な通常のBECでは見られない、擬一次元性による強い量子揺らぎを反映した実験結果である。また、ラムゼー干渉法を利用した量子揺らぎの時間変化測定方法を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論に関しては、先ず、光格子中BECの動的性質の解明が進んだ。動的不安定性の前駆現象として超流動流に密度変調が発現することを明らかにした。さらに、多成分系固有の動的性質として、スピン1のBECでは、ある臨界速度で、スピン混成が急激に起きる磁気不安定性が存在することを発見した。また、新奇量子相の探究に対しては、一次元系ではないが、最近光格子で実現されつつある特殊な格子構造での量子相を詳細に調べ、その特性を解明した。多層Lieb格子の磁気相転移、ハニカム格子のスピン流体相の動的性質など、実験に先駆けた理論予測が得られた。 一方、実験に関しては、より強い擬一次元性を実現するための新しい超伝導アトムチップを作成し、その実験が大いに進展した。その結果、プレリミナリーではあるが、擬一次元性に由来するBECの強い量子揺らぎを反映したTOF像の観測に成功した。また、今後の実験指針となる、多成分化によるラムゼー干渉を利用した量子揺らぎの時間変化測定法の提案を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、これまでの研究成果を踏まえて、目標達成を目指した今後の研究推進方策を、理論と実験に分けて、以下にまとめる。 【理論】1次元光格子中の高密度・強相関 多成分ボース原子気体の量子物性の探究(NTT理論、兵庫県立大学、東北大学) これまでに得られた知見、ならびに開発してきた解析手法をグループ間で協力しながら、さらに応用・発展させることで、実験に先駆けた理論研究を推進する。具体的には、東北大グループとNTT理論グループで、光格子中の多成分BECの動的性質の理論研究を進展させ、新奇な量子物性を探究する。さらに、1次元系で重要となる量子揺らぎの効果をより正確に取り込めるように解析手法の改良を目指す。兵庫県立大学グループとNTT理論グループは、新奇量子相探索に向けて構築した基礎理論を多成分系に発展させる。格子構造に起因したバンド構造の特異性と成分間の相互作用が相まって出現する多様な量子相の解明を目指す。 【実験】擬一次元2成分BECの量子揺らぎの測定および1次元光格子の導入(NTT実験) 新しい超伝導アトムチップ上で実現した擬一次元BECの量子揺らぎをさらに詳細に調べる。平成25年度に確立したマイクロ波とラジオ波の2光子遷移によるスピン制御技術を適用して、擬一次元BECを2成分化し(F=1, mF=-1と F=2, mF=1のスピン2成分)、さらにラムゼー干渉実験を行う。干渉縞の明瞭度の時間変化を通して、擬一次元BECの量子揺らぎが時間変化する様子を観測する。また、理論グループと協力して、量子揺らぎの時間変化を決定する要因を、実験結果と理論解析の比較を通して解明する。これと並行して、超高真空装置中の新超伝導アトムチップに1次元光格子を導入し、高密度・強相関2成分ボース原子気体を実現させる。
|
Research Products
(40 results)