2014 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯・中高緯度の気温構造の季節的遷移が大気循環・降水帯の形成と変動に果たす役割
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25287120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (10251406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 和晃 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50623401)
三瓶 岳昭 会津大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50571775)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気候 / ジェット気流 / 梅雨前線 / 秋雨前線 / 冬季モンスーン / 台風 |
Outline of Annual Research Achievements |
冬季東アジアモンスーンの変動をもたらす「西太平洋(WP)パターン」に特徴的な3次元構造やそれに由来する気候平均場からのエネルギー変換の特徴について,前年度までに得られた解析結果をとりまとめた論文は投稿準備がほぼ整った.さらに,冬季東アジアモンスーンの経年変動と熱帯域の海面水温変動の関連を改めて調査したところ,従来の認識とは異なり,海面水温変動とは同時相関をもたない熱帯太平洋の降水活動の経年変動成分がモンスーンの経年変動と統計的に有意な相関を有することが見出され,モンスーン変動の予測可能性について新たな知見が得られつつある. 一方,前年度に引き続き,日本周辺に秋雨をもたらす大気大循環場の特徴を調査し,梅雨期に伴う場との詳細な比較を行った.その結果,秋雨をもたらす気候平均循環場のみならず,経年変動においても亜熱帯ジェット気流に伴う対流圏中層における暖気移流が秋雨降水帯の経年変動に関わることを見出した.ただし,暖気移流をもたらす亜熱帯ジェット気流の蛇行に伴っては,地表の亜熱帯高気圧の変動とも連動するため,台風の発生や移動経路にも大きく影響する.そこで,日々の循環場を詳細に解析し,熱帯低気圧に伴う降水とそれと無関係な降水への分離を試みたところ,秋雨降水帯の平均場やその経年変動においても熱帯低気圧からの寄与がかなり大きいことを見出した.これらの成果については現在論文への取り纏めを進めている.さらに同様な観点から,IPCC評価報告書に関わる全球気候モデルにおける秋雨降水帯の再現性や将来変化について調査を開始した.なお,日本の夏季天候に大きな影響をもたらす「太平洋・日本(PJ)パターン」に見られる長期変調については,その3次元構造の長期変化とそれに伴う気候平均場からのエネルギー変換の長期変化の観点からどの程度長期変調のメカニズムを説明できるかについて現在解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会津大所属の研究分担者については,所属機関における復興支援関連プロジェクトへの従事を予想以上に求められているため,研究の進展に若干の遅れがみられるものの,その他については研究の進展は概ね順調である.特に,秋雨降水帯については,研究計画通りに気候平均場の降水を,それをもたらす大気循環場,海面水温,水収支の観点から調査し,その梅雨期との相違点を明らかにした.さらに熱帯低気圧のもたらす降水の分離にも成功し,気候モデルでの再現性及び将来変化に関する調査も開始した.また,夏季のPJパターン,冬季のWPパターンについては,そのメカニズムや長期変調に関わる調査がほぼ予定通り進み,論文への取り纏めも進んでいる.加えて,海面水温変動とは同時相関をもたない熱帯太平洋の降水活動の経年変動成分が冬季モンスーンの経年変動と統計的に有意な相関を有することを見出したのは,当初予期しなかった斬新な成果に繋がるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
冬季東アジアモンスーンの変動については,WPパターンの構造・エネルギー収支を通じた形成・維持に関する論文を投稿し,掲載に向け査読意見への対応を行う.さらに,冬季東アジアモンスーンの経年変動に影響を与える海面水温変動とは同時相関をもたない熱帯太平洋の降水活動の経年変動成分について,その実態とモンスーンへの遠隔影響のメカニズムの把握に向けて更なる解析を進める. 一方,夏季のPJパターンの長期変調については,解析結果を取り纏めて論文投稿を目指すとともに,こうした長期変調がIPCC評価報告書に関わる全球気候モデルにおいてどの程度再現されているかを調査し,気候系の内部変動に伴う揺らぎか地球温暖化に伴う変調かを調査する.さらに,秋雨前線の平均場と経年変動についても全球気候モデルにおける再現性を評価し,現在気候における再現性が高いモデルからその将来予測についての知見を得る.そして本研究で示されたメカニズムが,東アジア以外の地域の亜熱帯・中緯度降水帯の形成・変動まで拡張できるのかを吟味し,気候システムにおける気温構造の果たす役割の再評価を行う.
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Causes of Carryover |
気象庁による最新の全球再解析データJRA55のデータの整備には,その膨大さ故に前年度から当初計画以上に時間を費やしており,その影響は今年度も続いている.また,IPCCの第5次評価報告書に関わる全球気候モデルの数は,第4次評価報告書の段階よりもかなり増加し,かつモデルの空間解像度が向上したため,整備すべきデータ量が大幅に増加した.熱帯低気圧からの降水への寄与など,日々の出力データを扱う必要がある解析が多く,その解析に予想以上の手間をかけている.よって,これらの膨大な解析を進める事はできたが,その結果の取り纏めにやや時間を要しており,今年度に執行する予定であった国内外での成果発表の旅費や論文受理時に支払う印刷経費を来年度に繰り越す必要が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
IPCCの第5次評価報告書に関わる全球気候モデルの出力データの解析から派生する膨大な副生成データを収めるため,次年度早々にRAID装置を一式購入する.さらに,国内外での成果発表旅費や論文受理時に支払う印刷経費の支払いに充てる.
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Research Products
(29 results)