2014 Fiscal Year Annual Research Report
台風強度を規定するアウトフローレイヤーの氷晶粒子直接観測と上層加熱率推定
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25287121
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坪木 和久 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (90222140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 太郎 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 准教授 (50335022)
上田 博 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (80184935)
大東 忠保 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (80464155)
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 台風 / アウトフローレイアー / 氷晶粒子 / 雲粒子ゾンデ / 雲解像モデル / 偏波レーダ / 上層加熱率 / 台風強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
台風の周辺に広がるアウトフローレイアーの巻雲の氷晶粒子の特性を観測するために、前年度に引き続いて、雲粒子ゾンデを用いた観測を実施した。観測は沖縄本島の国頭群恩納村の独立行政法人情報通信研究機構沖縄電磁波技術センターで実施した。同時に琉球大学理学部の屋上に設置した名大地球水循環研究センターのXバンド偏波レーダによる観測を実施した。観測対象とした台風は2014年8月8日に沖縄本島に接近した台風第11号である。この台風に対して、8月7日から9日にかけて観測を実施した。沖縄本島の東側を通過した中心の西側に広がる巻雲と降雨帯に伴う雲を対象として、雲粒子ゾンデを放球した。8月8日1246時(日本時間)のレーダ画像では、高度10~13kmに巻雲の弱いエコ-が観測された。雲粒子ゾンデで捕捉された氷晶粒子を、粒子板状粒子・柱状粒子・過冷却水滴・凍結降水・凝集体・不定形の6種類に分類した。氷晶粒子は高度9.5~13.25 km付近で捕捉された。粒径を測定した結果、300μm程度の大きさの板状粒子が高度11 km付近で数個観測された。しかし全高度において大半は目視で形状が判断できない10~数10μm程度の粒子で占められており、形状が判断できる場合でも100μmを超えるような粒子はあまり存在していなかった。観測された数濃度は高度により異なっており、またほとんどが粒径100μm以下の粒子であった。この結果より、台風の上層巻雲の数濃度は高度ごとに一様ではなく、一方で氷晶粒子の粒径はほぼ一様に数10μm程度の大きさを持つことがわかった。また、昨年度観測を行った台風の巻雲粒子についての解析を実施した。その結果から、台風の上部吹き出し層の巻雲は、中心から離れたところでは、粒子数が極めて少なく、中心に200~300km程度の近い所で比較的粒子が多くなり、大きな粒子が存在するようになることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の観測計画は、雲粒子ゾンデHYVISの新型版を、台風接近時に台風周辺の巻雲に放球し台風のアウトフローレイヤーの雲の観測を実施し、琉球大学に設置した名古屋大学地球水循環研究センターの偏波レーダと沖縄のNICTの偏波ドップラーレーダを用いて、雲粒子ゾンデ放球時の降水観測を実施するというものであった。研究実績の概要に述べたように、これらの観測計画について、現在までの達成度は概ね計画通りと考えられる。ただ、平成26年度は沖縄に接近する台風の数が少なく、2事例しか観測できなかった。また、それらは観測目的としてはあまりよい条件とはいえなかったので、本来であれば、もう1事例の観測を行いたいところであった。これについては翌年度に観測を継続したいと考えている。観測データの解析についての計画として、それぞれのレーダの偏波機能を用いて降水粒子の判別を行い、HYVIS通過点の降水粒子のタイプと量を調べ、同時に実施される雲解像モデルCReSSによるシミュレーションを検証し、氷晶粒子がどのような降水粒子に変化していくのかを調べるという点については、レーダの偏波機能を用いた粒子判別はできるようになった。また、同時に雲解像モデルCReSSによるシミュレーションも実施した。現在、氷晶粒子が降水粒子へどのように変化していくのかについて雲解像モデルの結果を解析している。これについても概ね計画通りである。観測された雲粒子ゾンデHYVISのデータについて詳細な解析を実施しており、それによる加熱率の計算のための手法も整備した。これらのことから、研究全体として、概ね計画通りに進められたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、これまで概ね計画通り進められているので、最終年度もこれまでの研究を発展させる方向で研究を進める。ただ、平成26年度の台風の観測例が十分でなかったことから、最終年度の平成27年度にもう一回程度、観測を実施したいと考えている。特に雲粒子ゾンデHYVISの新型版を、台風接近時に台風周辺の巻雲に放球し台風のアウトフローレイヤーの雲の観測を実施したい。また、琉球大学で稼働している名古屋大学地球水循環研究センターの偏波レーダ(GINレーダ)を用いた観測は、最終年度も継続して実施し台風についての降水構造を明らかにしたい。また、これまで行ってきたように、観測された雲粒子ゾンデHYVISのデータについて詳細な解析を今後も継続して実施する。具体的には雲粒子の種類と大きさ、及び数濃度について測定し、粒径分布についてモデル化まで行いたい。さらに観測された氷晶粒子のデータに対して、雲解像モデルCReSSに導入した放射過程モデルを用いて、台風周辺の対流圏上端部分の加熱率を見積もる。また雲解像モデルCReSSを用いて、高解像度の台風のシミュレーションを行い、氷晶粒子や降水粒子の鉛直分布構造を調べ、氷晶粒子の数密度などに対する加熱率の敏感度を調べる方針である。
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Causes of Carryover |
当初計画では、沖縄での台風の観測例を3回実施する予定であった。しかしながら、今年度は沖縄本島地方への接近する台風が少なく、2回しか観測を実施できなかった。そのため経費をすべて予定どおり使い切ることができなかったため、次年度使用額が生じた
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に観測が1回できなかったので、今年度、沖縄本島地方への台風の接近があるときに観測を実施したいと考えている。この観測の旅費に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)