2014 Fiscal Year Annual Research Report
ラングミュア循環に伴う運動量の乱流混合:現場観測と数値実験
Project/Area Number |
25287123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 裕 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40346854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋物理 / ラングミュア循環 / ラージエディシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表層の乱流混合過程に大きな影響を与えると考えられているラングミュア循環について、現場観測および数値実験を行った。
現場観測は、和歌山県白浜沖と有明海・八代海で行った。11月に行った白浜沖の海象観測塔(京大防災研)での観測では、観測塔にHADCPとADCP、水温計などを取り付け、流速場の水平構造と水温の鉛直構造、そして波浪場の計測を二週間にわたり行った。計測データのパワー・クロススペクトル解析などを行った結果、波浪(うねり)に伴う軌道運動とそれよりも大きな規模の乱流運動(風成乱流やラングミュア循環など)を別々に精度良く捉えることに成功した。乱流強度は波浪や風、熱フラックスなどに起因して変動している様子が見られ、これらの外力に対する海洋乱流の応答を調べる上で極めて重要なデータである。一方、7月下旬から8月上旬に行った有明海・八代海観測では、天候・海況に恵まれず、波浪と乱流に関する現象は計測できなかった。
一方数値実験では、東北沖における人工衛星可視画像で捉えられた漂流物(瓦礫)のストリーク構造に着目し、その構造がラングミュア循環に起因するものであるとの仮説の元、数値実験を行った。現実的な(再解析気象データの)風や熱フラックス、風と平衡状態にある波浪場を海面の境界条件として与えラージエディシミュレーションを行い流動場を再現し、漂流物を想定した仮想粒子をモデル内に配置しその動きを追跡したところ、衛星画像が取得された時刻において定性的に一致するストリーク構造が再現された。この結果は、ラングミュア循環が漂流物の攪拌過程に大きな影響を与えることを示す貴重なものであった。また、海面風応力と海面熱フラックスに対する混合層の応答を数値実験で調べたところ、海面加熱時は風波の効果が無くても観測値を概ね再現することが全球規模で確認され、海面加熱が強い時には風波の効果は限定的であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有明海・八代海では天候・海況の不良により期待した現象の計測ができなかったが、白浜沖の観測では十分な精度・量のデータを計測できた。白浜観測の計測終了・測器の回収が12月であったため、その解析とその後の数値実験が予定より遅れた。一方、年度の前半に、別の観測結果(衛星画像)を新たに対象として数値実験を行い、ラングミュア循環の影響評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにスピードをあげて当初の全体計画を進める。
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Causes of Carryover |
現場計測データをより多く集積するため、次年度も現場観測(和歌山県白浜沖など)を行うため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現場観測時に必要な、観測機器を設置するための民間会社(ダイバーなど)への支払いや、観測用消耗品などの購入、また数値実験のための大型計算機使用料、そしてそれらの成果を公表するために用いる予定。
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