2014 Fiscal Year Annual Research Report
豪雨の主要因となる海上での下層水蒸気の蓄積メカニズム解明
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25287125
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
加藤 輝之 気象庁気象研究所, 予報研究部, 室長 (70354438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
津口 裕茂 気象庁気象研究所, 予報研究部, 研究官 (90553165)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気象学 / 豪雨 / 水蒸気 |
Outline of Annual Research Achievements |
5分毎の高頻度衛星観測データを用いた研究では、積乱雲群の発現に関連した低層雲の広がりや伝播特性及び地形効果による積乱雲の形成、下層暖湿気塊の流入を示唆する低層雲の存在を確認した。 高層観測・地上観測データを用いた研究では、6月20日から2週間連続して名瀬と南大東で強化高層気象観測を実施するとともに、沖縄本島と西表島に設置した地上気象観測装置をほぼ1年間連続して運用した。局地循環による水蒸気の変動や台湾の風下にできる収束線による風向の変化など、海上の水蒸気蓄積に関係する現象のデータが取得できた。またNTTドコモ環境センサーネットワークによる湿度観測データの利用時の問題点を検討した。気象庁の海洋気象観測船に搭載したGNSS受信機を用いて可降水量(鉛直積算水蒸気量)の解析実験を行い、高層気象観測と比べて平均二乗誤差3mm程度で一致する結果が得られた。またGNSSによる水蒸気リアルタイム解析手法の開発を行った。 客観解析データを用いた研究では、2014年8月20日の広島での大雨について解析を行い、豊後水道から大量の下層水蒸気が流入する一方、豊後水道で流路が狭くなる効果によって、水蒸気流入量が増すだけでなく、大量の水蒸気を含む層の厚みが増えたことが分かった。これらの特徴は1999年6月29日での広島での大雨事例と共通していた。梅雨前線の活動について、6月と7月の経年変動に相違があることを明らかにして経年変動を生む物理メカニズムを解明した。夏季の中緯度SSTの決定に対し、上層海洋での対流・拡散による季節躍層下への熱浸透が夏季SSTの上昇を大きく抑制していることを定量的に評価した。 数値シミュレーションを用いた研究では、2013年8月9日に秋田・岩手県で発生した大雨について下層の暖湿気塊の形成・維持過程に着目して数値実験を行い、平年よりも暖かい日本海の海面水温が影響していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度新たに研究協力者を加えたことで、衛星データを用いた研究でも成果が得られつつある。 高層観測・地上観測データを用いた研究では、予定していた通り2週間連続して名瀬と南大東で強化高層気象観測を実施することができた。また、停電による数時間程度の欠測を除き、沖縄本島と西表島に設置した地上気象観測装置をほぼ1年間連続して運用でき、貴重なデータが取得できた。 客観解析データを用いた研究では、昨年発生した広島で大雨事例について解析を行い、地形の効果によっても下層水蒸気が蓄積されることが分かるなど、水蒸気浮力以外の下層水蒸気蓄積メカニズムが複数あることが分かりつつある。 数値シミュレーションを用いた研究でも、複数の大雨事例について取り組み、下層水蒸気蓄積および維持メカニズムの解明が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
高層観測・地上観測データを用いた研究では、平成27年度も平成26年度に引き続き、6月下旬~7月上旬にかけての2週間連続で名瀬と南大東島で強化高層気象観測を実施し、平成26年度の観測データと合わせて大気下層でお水蒸気の蓄積の変動を調査する。東大大気海洋研究所新青丸の協力を得て、船舶搭載GNSSによる水蒸気リアルタイム解析実験を行う。 数値シミュレーションを用いた研究では、2013年8月9日の秋田・岩手県の大雨や2014年8月20日の広島での大雨について、水蒸気の収支解析から下層の暖湿気塊の形成・維持メカニズムを定量的に明らかにする。また台湾の風下にできる収束線による下層水蒸気蓄積について、取得したデータや数値実験結果を用いて解析を行う。 全体のとりまとめを行い、研究成果を関係者に共有し、この研究を今後発展させるための研究集会を12月に実施する。
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Causes of Carryover |
平成26年度計画していた高層観測の一部を平成27年度実施するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高層観測機器を購入する。
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Remarks |
報道発表:沖縄本島での大雨の発生要因(http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H26/260725/Press_ty1408_heavyrainfall.pdf) 広島での大雨の発生要因(http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H26/260909/Press_140820hiroshima_heavyrainfall.pdf)
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Research Products
(22 results)