2015 Fiscal Year Annual Research Report
東北巨大地震断層近傍の応力状態:「ちきゅう」による日本海溝掘削からのアプローチ
Project/Area Number |
25287134
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
林 為人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー (80371714)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (00452699)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 応力 / 断層掘削 / 東北地震 / 非弾性ひずみ回復 / ブレークアウト |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方太平洋沖地震に伴った津波が巨大化した直接の原因は、日本海溝付近のプレート境界断層が50mという、前例のない大きさですべったことである。平成24年度、地球深部探査船「ちきゅう」による「東北地方太平洋沖地震調査掘削(略称JFAST)」は、日本海溝付近の、東北地震時に断層が最も大きくすべった海域において、プレート境界断層を貫通する掘削を行った。断層のすべりを決定する主要な要素の1つは断層近傍の応力状態であるため、研究代表者はこの応力状態を決定するために、研究航海に参加して船上で非弾性ひずみ回復(ASR)測定等を行うとともに航海後詳細解析用の貴重な掘削コア試料と検層データの配分を受けた。本研究は、JFASTの掘削コア試料と近接海域である下北沖の掘削コア試料を用いて様々な実験研究を行い、掘削孔内、特にMw9.0の巨大地震時に滑った断層近傍の応力状態を正確に決定することを目的とする。 平成27年度は前年度に引き続き、ASR船上測定のひずみデータを応力値に換算するために必要な、長時間を要する粘弾性定数を測定する実験が概ね終了した。また、研究分担者山本裕二氏(高知大学)や研究協力者高橋 学氏(産業技術総合研究所)の協力のもと、コア方位決定のための古地磁気測定結果の検討・とりまとめや、関連物性の計測を行った。その結果の速報として、国際と国内の学会でそれぞれ発表した。また、東海沖海域の海洋掘削のコア試料を用いて、ASR法による応力測定を実施した結果を国際学術誌 Marine and Petroleum Geology に投稿して、出版された。日本海溝プレート境界断層の先端部の地震後応力状態(平成24年JFAST掘削時)と、南海トラフのプレート境界断層先端部の応力状態(平成20年の南海トラフ掘削時)を取りまとめ、比較検討を行った。その成果を国際学術ジャーナルTectonophysicsに投稿して、採択された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非弾性ひずみ回復(ASR)の船上測定のひずみデータを応力値に換算するための粘弾性定数を測定する実験などが概ね終了した。その結果の速報として、国際と国内の学会でそれぞれ発表した。また、東海沖海域の海洋掘削のコア試料を用いて、ASR法による応力測定を実施した結果を国際学術誌Marine and Petroleum Geologyに投稿して、出版された。さらに、日本海溝プレート境界断層の先端部の地震後応力状態(平成24年JFAST掘削時)と、南海トラフのプレート境界断層先端部の応力状態(平成20年の南海トラフ掘削時)を取りまとめ、比較検討を行った。その成果を国際学術ジャーナルTectonophysicsに投稿して、採択された。したがって、本研究は当初の計画以上に進展している。 このように、各種データ解析とコア試料測定は、当初予定よりも早く進捗し、断層近傍の応力状態を決定することができたため、実験に使用する消耗品等が削減でき、未使用額が生じた。平成28年度は取得した応力データと東北地震の断層すべりとの関係解明をより精緻に達成すべく、これまでの測定データの信頼性を高める目的で追加する実験を実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、平成27年度まで実施した非弾性ひずみ回復法(ASR法)による沈み込み地震発生帯等の原位置応力測定の追加実験を行う。その結果を取りまとめて、国際学会「7th International Symposium on In-Situ Rock Stress」にて発表する予定である。また、次年度は最終年度として、各種測定結果や研究成果を取りまとめ、論文作成を行い、国際学術ジャーナル等に投稿して成果を公表する予定である。
|
Causes of Carryover |
掘削の検層データ解析とコア試料のひずみ測定は、当初予定よりも早く進捗し、断層近傍の応力状態を決定することができたため、実験に使用する消耗品等が削減でき、未使用額が生じた。平成28年度は取得した応力データと東北地震の断層すべりとの関係解明をより精緻に達成すべく、これまでの測定データの信頼性を高める目的で追加する実験を行うとともに、国際学会における成果発表、ならびに学術誌への論文投稿を行いたい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの測定データの信頼性を高める目的で追加するひずみのキャリブレーションテストを行うための実験消耗品、研究用参考資料、国際学会での成果発表のための旅費や学会参加費、学術誌への論文の英文校閲費や投稿費に充てたい。
|
Research Products
(14 results)
-
-
-
[Journal Article] Distribution of stress state in the Nankai subduction zone, southwest Japan and a comparison with Japan Trench2016
Author(s)
Lin W., T. Byrne, M. Kinoshita, L. McNeill, C. Chang, J. Lewis, Y. Yamamoto, D. Saffer, J.C. Moore, H.-Y. Wu, T. Tsuji, Y. Yamada, M. Conin, S. Saito, T. Ito, H. Tobin, G. Kimura, K. Kanagawa, J. Ashi, M. Underwood, T. Kanamatsu
-
Journal Title
Tectonophysics
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-