2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25287135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 丈洋 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (40470124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スロー地震 / 断層 / 地震 / 沈み込み帯 / 摩擦実験 |
Research Abstract |
沈み込み帯で発生するスロー地震には,水が深く関与していると考えられている.しかし,スロー地震の物理的発生メカニズムはまだよくわかっていない.本研究では,水の圧力(間隙流体圧)の上昇がスロー地震の発生と密接に関わっているという仮説を,地震発生域の熱水環境を再現した低~高速すべり摩擦実験によって検証したい.特に,「断層の摩擦特性が間隙流体圧の変動によってどのように変化するのか」ということを詳細に調べて,物質学的な視点からスロー地震の発生メカニズムの解明を目指したい. 平成25年度は,(株)東洋高圧の協力のもと,高知コア研究所に設置されている回転式摩擦試験機に組み込む熱水圧力容器の設計図面をほぼ完成させることができた.平成26年度中に作製に取り掛かり,年度内に予備実験をおこなう予定である.また設計の遅れから研究が滞らないように計画していたガス圧式三軸高温高圧摩擦実験を,連携研究者である高橋美紀博士(独立行政法人産業技術総合研究所)および澤井みち代(広島大学大学院・日本学術振興会特別研究員DC1)と共同でおこなった.実験には,2011年東北地震の震源域に存在すると考えられる藍線石片岩をもちいて,温度100~300℃,封圧150 MPaにおいて間隙水圧を10~140 MPaに変化させ,摩擦構成則の速度依存性パラメータが有効圧(封圧-間隙水圧)の変化に応じて系統的に変化することを確認した.また,同様の実験結果を,研究協力者である澤井みち代が,オランダ・ユトレヒト大学の高温高圧回転式試験機をもちいた実験によって確認した.これらの実験結果は,地震のサイクル時に間隙流体圧が変化することによって,地震の発生様式が変化する(スロー地震が発生する条件も現れる)ことを示しており,沈み込み帯における間隙流体圧の推定およびその時系列変化をモニタリングすることの重要性を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スロー地震の震源域では,プレート固着域浅部で100~150℃,プレート固着域深部で350~450℃の高温間隙水が存在すると考えられる.しかし,このような熱水条件下での低~高速実験をおこない,摩擦特性を調べることのできる試験機は存在しない.申請者が所属している高知コア研究所に設置されている回転式高速摩擦試験機で高温熱水実験ができるように圧力容器を新たに開発して,スロー地震を実験室で再現することで,スロー地震発生の物理・化学プロセスの解明を目指すことが本研究課題の目標である. 本研究課題の初年度に計画していた,回転式摩擦試験機に組み込む熱水圧力容器の開発は,(株)東洋高圧の協力のもと設計最終段階までには到達したものの,圧力容器を設置するスペースを確保するために,試験機側にも改良が必要なことが明らかとなったため,圧力容器の作製に取り掛かることができなかった.圧力容器の図面はほぼ完成しているので,平成26年度中頃までには作製に取り掛かると同時に,作製する圧力容器は第一種圧力容器となるため,法規的な手続きを進めていきたい.ただ,このような状況においても研究成果が出せるように計画していた,ガス圧式三軸高温高圧摩擦実験は非常に順調に進んでおり,平成26年度も継続的にこの試験機をもちいた実験を断続的におこない,明らかになってきた「有効圧が摩擦(地震の発生)に与える影響」に関する論文の公表を目指したい.
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Strategy for Future Research Activity |
高知コア研究所に設置されている回転式高速摩擦試験機に圧力容器を組み込み,高温熱水実験ができるように試験機開発をおこない,スロー地震を実験室で再現することで,スロー地震発生の物理・化学プロセスの解明を目指すことが本研究課題の目標である.設計は,平成25年度まで(株)東洋高圧と継続的に改良を重ねてきた図面をさらに精査し,平成26年度中頃には作製にかかり,年度内に熱水環境下での予備実験を目指す. 予備実験がうまくいった場合は,東北・関東・西南日本弧の3つの沈み込み帯のスロー地震発生域に実際に存在すると考えられる物質を用いて,「スロー地震の発生が間隙水圧の力学的効果によってのみ規定されているのか」,もしくは「物質の持つ摩擦特性が本質的にスロー地震の発生に制約を与えているのか」ということを熱水条件下における摩擦実験によって検証したい.東北日本弧に沈み込んでいる堆積物は,2012年4~5月におこなわれた東北地方太平洋沖地震調査掘削航海で採取されている.関東・西南日本弧に沈み込む物質は,これまでに国際海洋底掘削航海によって採取されている.本年度に高知コアセンターでサンプリングをおこない,実験をはじめる前に光学・電子顕微鏡観察と粉末X線解析分析によって物質の同定をおこなう. 高速摩擦試験機に圧力容器を組み込む試みは世界的にも例がない.不測の場合に備えて,高橋美紀博士および澤井みち代氏と共同で,高温高圧低速摩擦試験機,常温・低~高速摩擦試験機をもちいて実験をおこない,主要な研究目的である「摩擦特性に対する間隙水圧の効果」を圧力容器の開発と並行して調べていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の初年度に計画していた,回転式摩擦試験機に組み込む熱水圧力容器の開発は,(株)東洋高圧の協力のもと設計最終段階までには到達したものの,圧力容器を設置する試験機側のスペースを確保するために,試験機にも改良が必要なことが明らかとなったため,圧力容器の作製に取り掛かることができなかった.そのため圧力容器に係る経費を次年度に持ち越すこととなった. 圧力容器および試験機改良の図面はほぼ完成しているので,次年度中頃までには作製に取り掛かると同時に,作製する圧力容器は第一種圧力容器となるため,法規的な手続きを進めていきたい.ただ,このような状況においても研究成果が出せるように計画していた,ガス圧式三軸高温高圧摩擦実験は非常に順調に進んでおり,次年度も継続的にこの試験機をもちいた実験を継続的におこない,主要な研究課題である「摩擦特性に対する間隙水圧の効果」を圧力容器の開発と並行して調べていきたい.
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] NanTroSEIZE Stage 3: NanTroSEIZE plate boundary deep riser 32013
Author(s)
Hirose, T., Saffer, D.M., Tobin, H.J., Toczko, S., Maeda, L., Kubo, Y., Kimura, G., Moore, G.F., Underwood, M.B., and Kanagawa, K.
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Journal Title
IODP Science Prospectus 348
Volume: 348
Pages: -
DOI
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