2014 Fiscal Year Annual Research Report
捕獲岩の温度圧力情報から探る100mオーダーのリソスフェア構造
Project/Area Number |
25287139
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 順司 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60378536)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 秀巳 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70456854)
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ラマン分光分析 / 二酸化炭素 / 波数分解能 / 地質圧力計 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に行った研究作業を順に記す. 1.捕獲岩の採取.本課題の地質圧力計は流体包有物の圧力を圧力指標に用いるが,そもそも流体包有物の内圧が外圧と平衡であったのか否か検証する必要がある.検証実験の内容は後述するが,その実験過程で天然の流体包有物が必要になるため,流体包有物に関する報告が多い秋田県一丿目潟や島根県隠岐の島町で捕獲岩を採取した. 2.分光分析システムの開発(継続).昨年度から開始した高波数分解能ラマン分光分析装置の開発および改良を継続した.当初の想定通り,極めて高い波数分解能で分光分析を行えるようになった.例えば,二酸化炭素に見られる主要な2本のラマンピークの波数差を0.003 cm-1の精度で分析できるようになった.この波数差をCO2密度の測定精度に変換すると,およそ0.0009 g/cm3となる.この密度測定精度は従来の報告値より1桁改善されており,本研究で目指す100mオーダーのリソスフェア構造探査において十分適用できる水準に達したと言える.本作業の成果は国際雑誌に公表された(Takahata et al., 2014, Chemistry Letters). 3.流体包有物の流体保持能力の検証(地質圧力計の確度検証1).地質圧力計の確度に影響する要素の一つとして,「輝石温度との同時性」問題が挙げられる.本研究で適用する地質圧力計は,流体包有物を構成する流体の相図に,流体密度と輝石温度を照らし合わせることで圧力を推定する方法である.そのため,輝石温度と流体密度双方が平衡状態になるタイミングにずれがあった場合は今回の地質圧力計が適用できない.そのため,まずは輝石温度の平衡状態を検証する研究作業を行った.作業方法自体は数値計算によるものであるが,鉱物中の元素濃度勾配から輝石温度の平衡状態を判断する指標を得た.本作業の成果は国際雑誌に投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で平成26年度に予定していた研究作業はほぼ全て実施できており,その成果は国際雑誌に掲載(3報)・投稿中(1報)と,順調に公表されつつある.平成26年度に予定していた研究作業のうち,まだ成果が十分でないもの(人工流体包有物の作成)については,その作成装置の設計および設置環境整備をほぼ終えているため,平成27年度早期に実施できると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度は,初年度に採取した捕獲岩の薄片を作製し,本課題で開発した高波数分解能顕微ラマン分光分析装置によって流体包有物の流体密度(圧力)を測定する.また,電子線プローブマイクロアナライザー(代表者の所属機関に設置)によって試料の主要元素組成を分析し,捕獲岩の最終平衡温度を推定する.得られた流体密度と平衡温度を流体の状態方程式に組み込むと,捕獲岩の最終平衡圧力が得られる.つまり捕獲岩の由来深度が得られる.一般的な測定機器によって得られる由来深度の誤差は3ー4km程度が限界であるが,導入する分光装置を用いれば,その高い波数分解能によって,リソスフェアの諸構造を100mオーダーの空間分解能で議論できるであろう.
|
Causes of Carryover |
昨年度に実施する予定であった研究作業の一部が今年度にずれ込んだため,その遂行に必要な予算が必要であるため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度行う研究作業のため,適切に使用する.
|
Research Products
(10 results)