2013 Fiscal Year Annual Research Report
全球水素循環解明のための水素の発生・消滅過程の安定同位体比解析および大気観測
Project/Area Number |
25287146
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊田 栄 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30313357)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 桂太 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70323780)
樋口 浩二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 主任研究員 (40352520)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水素 / 環境変動 / 生物圏現象 / 安定同位体比 / 地球化学 |
Research Abstract |
ガスクロマトグラフ、安定同位体比質量分析計から成る簡便な分析システムを試作し、種々の濃度の水素/窒素・混合試料をシリンジで直接導入し、水素濃度100ppmの気体試料2mLに対して3‰の精度で水素同位体比が測定可能であることを確認した。より低濃度の試料の分析を可能とするために、充填剤の量を段階的に減じた3本のカラムを用いて種々の気体試料中の水素を低温分離し、室内大気の混入を最小限に抑える前処理システムを設計・製作した。水素を空気で希釈した高濃度試料(20-40%)、熱伝導度検出器、および微量還元性ガス検出器(TRA)を用いて分離条件を検討し、ドライアイス/エタノール、液体窒素などの寒剤を用いて水素を大気主成分と分離することが可能な条件を見出した。 水素濃度の連続観測および同位体比測定用試料の分取が可能な、TRAを用いた可搬型測定システムを設計、特注し、導入した。畜産草地研究所の試験設備においてチャンバー内で牛を飼育する実験を行い、胃で生成し放出される水素の濃度をこのシステムを用いて連続的に観測した。その結果、給餌直後に高濃度(~50ppm)の水素ピークが見られ、メタン濃度がやや遅れてピークを示すことが確認された。ピーク時に合わせて水素およびメタン同位体比分析用のガス試料を採取した。今後、同位体比分析システムをまず10-50ppmの試料に適用できるように改良し、採取した試料の分析を行うことを計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始前の予備的な研究で試行した測定法を改良して、水素濃度100ppmの気体試料の同位体比分析を可能にできた。さらに、低濃度試料の分析を目的とした前処理装置の製作を計画通り実施し、比較的安価な方法で、水素を大気主成分から分離する条件を見出した 。また、畜産草地研究所での牛のチャンバー試験を当初計画よりも前倒しで実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度設計・製作した前処理システムの改良を行い、まず、水素濃度10-50ppmの試料に適用できるようにする。試料中の水素を定量的に濃縮し安定同位体比質量分析計に導入する条件を詳細に検討する。3‰の精度での測定が可能となったら、次にさらに低濃度の試料を分析するための改良に取り組む。開発した前処理システムを用いて、昨年度畜産草地研究所の試験設備において採取した、チャンバー内で飼育された牛の胃から放出された気体試料中の水素の安定同位体比測定を行う。得られた結果を解析し、給餌直後に放出される高濃度(~50ppm)の水素の起源や生成過程について考察する。必要に応じてメタンの炭素・水素同位体比の分析にも取り組み、さらに詳細な解析を行う。本年度と異なる条件下での牛の飼育試験と水素濃度の現場観測、安定同位体比分析用試料の採取と分析にも取り組む。 本年度導入したTRAを用いた可搬型測定システムを利用して、大学構内など都市域での大気中水素濃度の連続観測を行い、時間的・空間的な変動を調べる。高濃度の水素が観測された場合には、同位体比測定用試料も採取し、上記のように開発したシステムによる分析も試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入を計画していた「ターボ分子ポンプ排気システム」の購入を延期したこと、購入予定であった気体試料採取容器を外部から利活用物品として譲りうけることができたこと、および学会発表をとりやめたことにより、平成25年度に残額が生じた。 平成26年度は、予算の制約から当初購入を断念していた小型冷凍機または液体窒素自動供給装置を購入する予定である。
|
Research Products
(1 results)