2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25288003
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
尾関 寿美男 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60152493)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水 / 磁場 / 磁気処理 / 酸素クラスレート様ハイドレート / ラマン散乱 / シリカゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
磁気的相互作用により生成する水の状態をO-17NMRと蒸気圧を測定して検討した。超純水をNMR管に封入し、超伝導マグネットボア内(298K)の6Tの磁場中を振動させたが、NMRスペクトルに有意差は認められなかった。前年度までに、水の活量が磁気処理によって増加した。この追試のために、0.1K以内に制御するように装置を改善し、水の蒸気圧を磁気処理しながらin-situで測定した。磁気処理によって水の蒸気圧が昨年度と同様に上昇したが、その変化量は一桁小さく0.01Torr程度であった。したがって、水の活量への磁気処理効果は留保して、今年度も検証実験を継続することにした。 酸素クラスレートハイドレートは100atm以上の高圧で生成する。しかし、水の磁気処理においては、磁束変化がハイドレート様構造を1気圧でも生成させるとの仮説を検証するために、高圧分光セルシステムを設計・製作した。次年度に酸素および水素結合の圧力依存性の検討を通じて検討する。 クラスレート生成助剤が酸素クラスレート様ハイドレート生成を促進するかを検討するために、テトラヒドロフランを共存させて磁気処理し,接触角を測定した。現在のところ、磁気処理効果が得られていないが、継続して助剤による磁気処理条件の軽減効果による磁気処理機構を調べる。 磁気処理水を用いて珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得た活性珪酸からシリカゲルを生成した。そのゾルの粘度とSi-29NMRスペクトルの時間変化を調べ、縮合反応および凝集反応の速度論への磁気処理水効果を検討した。活性化過程が308Kを境に変化することがわかった。また、生成したシリカゲルに均一メソ孔が生じるなどの細孔構造への磁気処理効果も得られた。これは今後磁気処理効果の好例となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遅れていた磁気処理による酸素クラスレート様ハイドレート形成を高圧によって容易に、磁気処理効果を高める試みを実施するための装置製作もほぼ終了し、27年度当初から計画を実施に移す体制ができたところである。予定していた4つのテーマにはすべて着手でき、そのうち3テーマで結果を得た。特に、水の活量に関するテーマでは、かなり結論に迫ることができた。また、初年度に発見したシリカゲルへの磁気処理水効果の研究が順調に推移し、新しい成果が得られている。 真実に迫るために、すべてのテーマで今後も継続的に検討していく予定であるが、全体の進捗状況としてはほぼ順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
動的磁気処理水(測定セルの振動運動による)とその急速凍結氷の赤外線吸収スペクトル(in-situ装置:初年度購入)やラマン散乱スペクトル(in-situ装置:現有)をその場測定するとともに,高圧光学セル(昨年度製作)を用いて,溶存酸素量依存性やクラスレートハイドレート様構造の有無を,広い周波数(数10cm-1~7000cm-1)範囲にわたる分子振動を調べる。これによって,水および水溶液の水素結合やクラスター,酸素クラスレートハイドレートの誘電的性質,集団モード,結合振動モード,結合音,倍音を調べる。特に低波数の集団モードに注目する。さらに,昨年度に引き続いて、酸素ハイドレート形成をアシストするテトラヒドロフランやキセノンを共存させ,磁気相互作用条件(磁場強度,処理時間,酸素濃度)の軽減効果を調べて,クラスレート生成助剤が酸素ハイドレート生成を促進するかを検討する。これらの分光測定と同時に,磁気処理による水の活量(蒸気圧)変化を検出するシステムのさらなる高精度化・温度制御の精密化を図り,磁気処理による蒸気圧変化の有無を確定する。 磁気処理の利用のために永久磁石による磁気処理効果を検証する。永久磁石を用いて磁気処理システムを構築するために、磁場のデザイン(磁場強度や磁極の配列)とそれを検証するための鉄板の腐食システムを組み込む。水の濁度と鉄イオンの溶出量を調べる。また、磁気処理水の利用の例としてシリカゲル生成を継続し、磁場効果と比較する。シリカゲルの生成プロセスと調製したシリカゲルの構造・物性を調べる。 平成28年度には,磁気処理水中の各種成分分析や状態分析を行う。オゾン濃度,ラジカル種(ESR)などで調べる。磁気処理水生成の誘導時間、メモリー効果および磁気処理水の保存方法を再検討する。
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Causes of Carryover |
高圧発生装置に付属の圧力計などの周辺機器を既存装置で代替することにしたために、予定額を下回ったことによる。新システムとの整合性を図るために費用が発生したが、節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高圧セルを使用する際の危険回避のための防護策をとるための費用に充てる。具体的には、金属材料費、防護壁のための塩化ビニルの厚板などの材料費に充当する。
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Research Products
(7 results)