2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25288003
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
尾関 寿美男 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60152493)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水 / 磁場 / 磁気処理 / 酸素クラスレート / シリカゲル / 炭酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,磁気処理水を用いて珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得た活性珪酸の粘度とSi-29NMRスペクトルを調べた。本年度はゾルの粘度の時間変化をさらに詳細に調べた。温度を5℃~40℃で変化させ,縮合反応および凝集反応の速度論への磁気処理水効果を活性化エネルギーによって検討した。磁気処理系では活性化過程が308Kを境に変化することを再確認した。この過程には水和が重要な役割を果たしていることをDSC測定から確かめた。また,活性ケイ酸を磁場中に静置して,同様に検討した結果,静磁場はシリカゲル成長を速めたが,磁気処理効果のように凝集を速めることはなかった。無機アモルファス系であるシリカゲルへの磁気処理効果はこれまで報告がないと思われる。 炭酸カルシウム生成への磁気処理水効果はよく知られているが,我々の検討ではCa2+水溶液への磁気処理効果であり,今回,再度実験し,これを確かめた。また,いくつかのCa2+化合物生成への磁気処理効果を検討し,アパタイトなどいくつかの化合物でも磁気処理効果の感触を得た。 これまで強磁場効果を追求してきたが,磁気処理効果は永久磁石を用いて行われるのが通例であるので,ネオジム磁石をチューブを挟むように配列して,0.5 T以下で実験した。純水をチューブ内に流して3 h循環させたところ,接触角が3o程度減少し,磁気処理効果を示した。食塩水に変えると,接触角変化が小さくなり,塩の存在は通常不可欠と信じられているが,磁気処理効果には必要ではないと考えられる。 酸素クラスレートハイドレート様化学種の磁気処理による生成が重要との立場から準備してきた高圧実験装置はガス導入などに支障があることが判明し,12月までに改良した。その後,高圧試験を繰り返し,年度末に漸く完成をみた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい磁気処理効果が発現する新しい系として無機アモルファスであるシリカゲルを見出した。また,静磁場効果との比較によって,動的な磁場効果との違いも見出した。炭酸カルシウム生成への磁気処理効果において,Ca2+水溶液への磁気処理効果が重要であることを確定し,他のCa2+化合物への磁気処理効果を見出した。磁気処理効果は,溶媒としては水でのみ確認されており,Ca2+化合物も炭酸カルシウムだけが報告されている。これらの物質系を広げて,磁気処理効果の普遍性を示していくことが必要であり,今回のアパタイトでの磁気処理効果の検出は重要である。また,永久磁石を用いた磁気処理装置によって磁気処理される結果を得たことは大きな前進であるが,結論を得るには慎重にならざるをえない。 このように,いくつかのテーマで成果を得ており,高圧実験が遅れているとはいえ,概ね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気処理水そのものを調べると磁気処理効果を得ることが難しいため,多くは間接的に磁気処理水を用いた現象(結晶変化や腐食抑制など)を調べることが多くなる。我々のシリカゲルやカルシウム化合物生成への磁気処理水効果もそれである。これらの間接的磁気処理効果の証明も重要であるので検討を続けるが,磁気処理水の構造や性質を直接的に調べることが,磁気処理水が存在するかどうかの解決には不可欠である。 今後の研究の方向は,磁気処理によって生成されると推定している酸素クラスレート様ハイドレートを高圧セルを使用して,生成量の関数としてラマン及び赤外スペクトルによって構造を調べ,定量化する。また,SQUIDマグネトメーターによって,磁気処理水の磁気特性を7 Tまでの磁場下で,273~323Kの範囲で測定し,磁気特性を詳細に比較する。H217OでのNMR測定によって,磁気処理過程でのスペクトル変化を,短時間積算のデータで詳細に追跡し,クラスレート構造の成長を実証する。 さらに,酸素ハイドレート形成をアシストするテトラヒドロフランやキセノンを共存させ,磁気相互作用条件(磁場強度,処理時間,酸素濃度)の軽減効果を調べて,クラスレート生成助剤が酸素ハイドレート生成を促進するかを検討する。これらは,in-situでラマン散乱やIR吸収を調べて行う。 最終年に向けて,磁気処理の特徴である誘導時間やメモリー効果を定量的にさらに検証して,長年の論争に決着つつける必要がある。
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Causes of Carryover |
研究に不可欠な超伝導マグネットが1月に破損し,メーカーに修理依頼したが,3月末の納入になり,多めに見積もって残しておいた修理見込み額と実際の請求額に差額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度請求額と合わせて,酸素17同位体水の購入(NMR測定用)やボストンで開催予定の磁場関連学会MAP7共同研究者が発表する費用の一部に充てる。
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Research Products
(18 results)