2014 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の構造遍歴ダイナミクスと機能発現の分子機構の理論的解明
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25288011
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質 / 構造変化動力学 / 階層ダイナミクス / 動的構造 / 時計タンパク質 / 反応座標 / 分子シミュレーション / 多時間相関関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子系における構造変化ダイナミクスおよび機能発現の分子機構の解明に向けた解析として以下の4つの研究を進めた。 1 長時間分子シミュレーションから得られる動的情報から構造変化に関する反応座標抽出:我々は、長時間シミュレーションのデータからタンパク質の構造に関する分散・共分散時間相関行列を求め、時間相関行列の固有関数から構造変化に伴う遅い変数(反応座標)を抽出する方法を開発しFiP35 WWドメインタンパク質を例に示した。 2 生体分子系にみられる様々な時間スケールを持つ運動の動的結合に関する理論解析手法の開発とその応用:タンパク質では、様々な時間スケールの運動が絡み合い機能発現につながっている。我々は、構造揺らぎの3時間相関関数から2次元寿命スペクトルを求め、その寿命スペクトルの時間変化から構造揺らぎ間のカップリングの時間変化を解明できることを、アデニル酸キナーゼの粗視化シミュレーションを例に明らかにした。 3 光合成系における高効率励起状態エネルギー移動(EET)に向けた解析:、タンパク質の構造や揺らぎがどのように高速かつ高効率なEETを制御しているかを分子レベルで解明するため、Fenna-Matthews-Olsonタンパクを例に量子化学計算と分子シミュレーションを結びつけた独自の解析手法の解析を進め、異なる環境に置かれた7つの色素の励起エネルギーの揺らぎの解析に成功し、色素の配位および局所環境の揺らぎの違いを明らかにした。 4 時計タンパク質KaiCの概日リズムの分子機構の解明に向けた解析:連携研究者の秋山教授がATP状態およびADP状態のKaiCの構造解析に成功した。我々は、KaiCにおけるATP加水分解能が低い分子論的起源の解明を目指し、局所的構造変化およびATPの加水分解に関わる水の位置揺らぎなどについて分子シミュレーションに基づいた解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から進めてきた異なる時間スケールを持つ構造揺らぎの新しい解析手法の開発し、論文の特集号に掲載されたことに加え、時計タンパク質に関して実験研究者と共同研究を進め論文作成を進めることができたため(現在査読中)。さらに、光合成系における効率的エネルギー移動の解明に向けた解析を進め、論文として纏めた。これらの研究に加え、長時間のシミュレーションデータから反応座標を抽出する新しい方法論の開発を行い、論文として成果を纏めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の構造変化動力学に関する解析を進めるとともに、時計タンパク質におけるATP加水分解サイクルがなぜ遅いか、光合成系における高効率高速エネルギー移動の起源について、さらに研究を進める。
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Causes of Carryover |
博士研究員として雇用を予定していた研究者の学位取得が遅くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の博士研究員の雇用のための人件費を主として使用する計画である。
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