2014 Fiscal Year Annual Research Report
電子活性メゾサイズ錯体集合体の構築と外場誘起状態変換
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25288024
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 剛 中央大学, 理工学部, 助教 (40564109)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 双安定性錯体 / 原子価互変異性 / メゾ構造 / 両親媒性分子 / コバルト錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は申請者が積み上げた独自の分子とマクロ相の動的変換法に立脚し、化学的刺激や物理的外場に応答しうる100 nm-10μmサイズのメゾ構造体構築を目指している。 平成26年度は、両親媒性VT錯体からなるメゾ構造体の構築を展開に向けた新規物質の合成及び両親媒性の制御を進めた。一般に溶媒中での両親媒性分子の会合構造は、臨界充填パラメーターにより制御される。CPPが低い場合、親水性又は疎水性側鎖を導入したcis/trans型VT錯体は水/非水系溶媒中で右表に示すミセル構造を形成すると予想される。一方、CPPの上昇によりヘキサゴナル相やラメラ相を形成し、マクロ相へと接近する。また濃度上昇によってもこれらのメゾ構造体の形成も可能である。はじめにcis型錯体については、N,N,N’,N’-tetratridecyl ethylenediamine (C13en)を有する新規Co錯体の合成に成功した。興味深いことに、この錯体は融解前においてはhs-[CoII]種を保持するのに対し、融解後及び溶液中においてはVT挙動を示すという、融解を境にした2つのモードが発現することを明らかにした。またこの現象がアルキル長鎖が引き起こすCo周りの構造ひずみに由来することを明らかにし、メゾ構造体の双安定性制御に向け有用な知見を得た。 次にtrans型錯体においては、メゾサイズ分子集合体を構築すべくC17鎖を導入したCoC17Espyを新たに合成し、そのVTとマクロ相同期変換を実現すると共に、CoC9Espyと比べて融点が下がる傾向も見出した。これは今後錯体を液体状態でメゾ化にするうえで非常に有用な結果となった。また、トリエチレングリコール部位を導入したCoTEGEspyを合成し、そのVT挙動並びにCoC17Espyが不溶な極性溶媒への溶解挙動も確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行には、まず両親媒性を示すcis/trans型VT錯体の合成が不可欠である。このような両親媒性VT分子の合成例は無いため、合成法の確立が課題であった。本研究では、trans型錯体に対しては、親水性エステル部位を有する錯体の系統的に合成及びVT挙動の制御(鎖長依存性など)に成功し、親油性側鎖の特徴を系統的に明らかにすることができた。一報、過去に例のない親水性VT分子の設計を遂行し、トリエチレングリコール部位を有する新規補助配位子の設計と合成に成功すると共に、これを用いた錯形成反応にも成功した。構造解析には成功していないものの、結晶性固体を得る段階にある。この錯体も良好なVT挙動を室温付近にしめし、弱い協同性を発現することも確認している。一報、cis型錯体については、はじめて長鎖の導入に成功し、Co周りにアルキル長鎖が誘起する構造ひずみによりVT挙動を制御できるというこれまでにない知見を得ることに成功した。これによりメゾ構造体においてもアルキル鎖の集合状態と分子の電子状態を強く連動させた系が構築できると期待される。更に親水性側鎖を有する配位子の設計も完了しており、trans体と併せてメゾ構造体の構築に向け基盤となる物質群の新規合成に成功している。異常のことから、同所計画した計画に沿い合目的に研究を展開できる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、「物理化学的刺激によるメゾ構造体の動的変換機能の発現」を遂行するべく研究を展開する。(1)熱的状態変換:加熱を例にあげると熱刺激はメゾ構造体内の長鎖部位の乱雑さの上昇や溶媒和構造の変化を引き起こすばかりでなく、分子レベルにおいてVTを誘起する。これらの二つのイベントは系に固有の温度で発現し、強い協同効果が発現する場合、電子移動と構造変形は同期する。本研究では、熱的に引き起こされるメゾ構造体の変換やVT変換及びそれらの結合度を解明する。(2)光誘起状態変換:光誘起電子移動によるVT発現をトリガーとした状態変換を実現する。本研究ではVTを引き起こすLMCT吸収帯である532 nm付近の定常光やパルス光照射による状態変換を試みる。(3)メゾ構造体の電気化学的状態変換:中性のVTコアは、電気化学的な還元を受けアニオン性コアを与えdual modeのVTを示す。この還元により中性VTコアがアニオン化され、安定化しうるメゾ構造が劇的に変化する。これによりメゾ構造体の多重変換やイオン拡散に基づく膜電位制御等の機能を開発する。(4)メゾ構造体の化学的刺激による状態変換:ベシクルやラメラ相における親油性部には非極性分子が取り込まれ流動する一方、親水性界面にはプロトン等が相互作用可能である。本研究では溶媒分子の取込や小分子を導入し状態変換を実現する。 具体的には、trans型錯体については、CoC17EspyのCTABによるミセルへの可溶化や超音波乳化法を用いたメゾサイズエマルジョンの合成を進める。またCoTEGEspyについては結晶化を遂行し、構造を決定すると共に、そのバルク状態におけるVT挙動を明らかにしつつ、両親媒性の利用によるメゾ化及び、熱、光、化学的刺激によるメゾ構造体の動的状態変換を実現する。
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Causes of Carryover |
合成条件の最適化により効率化を計れたため、当初平成26年度に購入を予定したガラス器具類の購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度においては計画よりも多くの合成を行う必要があり、かつこれにより当初の計画通りの研究を遂行できるため、当初の計画に従い平成27年度に行う合成のためのガラス器具類の購入にあてる。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Spontaneous Construction of Nanoneedles Using Ruthenium Complex-conjugated Porphyrins on Substrates2014
Author(s)
Togashi Takanari, Atsushi Izumi, Kon Hiroki, katsuhiko kanaizuka, Manabu Ishizaki, Ryosuke Miyake, Ho-Chol, Chang, Masaaki Haga, Masatomi Sakamoto, Masato Kurihara
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Journal Title
Chem. Lett.
Volume: 43
Pages: 1201-1203
DOI
Peer Reviewed
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