2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25288026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 博之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20262850)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属間結合 / 多重結合 / 反応化学 |
Research Abstract |
本年度は嵩高いアリールオキシド配位子をもつニオブ錯体の合成を検討した。オルト位に2つのアダマンチル基をもつアリールオキシド配位子のリチウム塩LiOArとNbCl4(THF)2を2:1の割合でTHF中反応させることで、ニオブ錯体(ArO)2NbCl2 (1)を合成した。錯体1はd1電子配置をもつ常磁性単核錯体である。次に、錯体1のTHF溶液にKBHEt3を加えることにより、 [(ArO)2Nb]2(H)4 (2)を得た。X線構造解析より、錯体2は、2つのニオブ金属間を4つのヒドリド配位子が架橋した、D2対称の2核構造をもつことを明らかにした。Nb-Nb金属間距離は2.6674(5) Åと短いこと、および錯体2が反磁性であることより、2つの金属間に相互作用が存在していると推測される。 次に、金属間結合をもつ錯体2と一酸化炭素の反応を行った。錯体2のトルエン溶液を1気圧の一酸化炭素雰囲気下で撹拌すると直ちに、反磁性錯体である[(ArO)2Nb]2(O)(CH2) (3)が得られた。X線構造解析より、2つの[(ArO)2Nb]フラグメントをオキソおよびメチレン配位子が橋掛け、金属中心はそれぞれ四面体構造をとることが明らかになった。錯体3のNb-Nb金属間距離は2.7188(9) Åであり、ヒドリド架橋錯体2よりも短くなっている。13COを用いた同様の反応から得られた錯体3-13Cの13C NMRではメチレン配位子が159.5 ppm (1JCH = 120 Hz)に観測された。このことは、メチレン配位子がCOに由来することを示している。 錯体3が生成する反応過程で、錯体2の4つの架橋ヒドリド配位子のうち2つが水素分子として脱離している。残る2つのヒドリド配位子は一酸化炭素の水素化に使われ、C-O結合切断を伴うことにより、メチレン配位子とオキソ配位子を生成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嵩高いアリールオキシド配位子を用いることにより、金属間結合をもつ配位不飽和種の前駆体となりうる、ヒドリド架橋二核錯体を合成、単離を達成した。この錯体は反応性が高く、一酸化炭素との反応ではC-O結合切断が進行することを見いだした。また、金属間結合が分子変換過程で必要な電子を蓄積、放出するのに重要な役割を担っていることを明らかにした。以上より、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)嵩高い置換基を導入したアリールオキシド配位子を補助配位子として用いることにより、ヒドリド架橋二核錯体を合成、単離した。二核中心からヒドリド配位子が還元的脱離すれば、電子は金属間結合として分子内に蓄えられるとともに、配位不飽和な金属間結合をもつ錯体フラグメントを生み出すことができる。すなわち、金属間結合をもつ配位不飽和種の前駆体として働くと期待できる。しかし、アリールオキシド配位子の電子供与性が強いため、ヒドリド配位子の還元的脱離が抑制されていることが明らかになった。今後、配位子設計を通してヒドリド配位子の還元的脱離の促進をおこなう。 (2)ヒドリド錯体に換わる前駆体を探索する。例えば、脱離が容易なアレーン配位子をもつ前駆体の合成を検討する。
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