2013 Fiscal Year Annual Research Report
π共役巨大クラスターの機能と界面アーキテクチャーの創製
Project/Area Number |
25288031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 正明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90260033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属錯体 / クラスター / 多核錯体 / 大環状分子 / X線構造 / 酸化還元 / 電子移動 / 電荷移動吸収 |
Research Abstract |
(1)π共役巨大クラスターの結晶構造:合計6種のπ共役系の大環状巨大クラスターの構造を単結晶X線解析により決定した。結晶中においては溶媒分子を格子間に取り込むことで規則配列を示し、1次元積層カラム構造および2次元シート配列が示された。(2)酸化還元挙動:pz架橋の大環状クラスターおよび1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)架橋の大環状クラスターの溶液状態における電子状態を定電位電解赤外分光法によりCO伸縮振動を観測することで検討した。定電位電解によりin situで生成した混合原子価pz錯体では、CO伸縮振動が顕著なブロード化を示した。これは大環状フレームワーク内の分子内電子移動が赤外の時間スケールで起こっており、1電子還元ユニットと未還元ユニットが明確には区別されない平均化した混合原子価状態であることがわかった。一方、混合原子価dabco錯体では、1電子還元ユニットと未還元ユニットのCO伸縮振動はそれぞれ独立にシャープな吸収帯として観測されており、両者は赤外の時間スケールで明確に区別され独立に存在していることが示唆された。dabco錯体ではpz錯体のようなRu間の架橋配位子を通したπ相互作用(π電子の非局在化)が起こらないことに起因すると考えられる。(3)電荷移動遷移:混合原子価Pz架橋クラスターは、近赤外領域にRu3ユニット間の原子価間遷移(IVCT遷移)に基づく強い吸収帯を与えるため、Hushモデルにより解析した。還元電子は大環状クラスター全体に平均的に非局在化するよりはある程度局在化する傾向にあるが、ユニット数が多くなるほど還元電子は非局在化(平均化)に向かうことが示唆された。 以上のように本年度は、本研究で目指す界面アーキテクチャーの部品となるπ共役巨大クラスターの構造と化学的性質について詳細に検討し、その基礎的知見を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、種々の架橋配位子と員環数を持つ大環状クラスターの合成と構造解析を行い、酸化還元挙動を明らかとすることに成功しており、当初の研究計画をほぼ完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度基本的性質を明らかとすることのできた大環状クラスター分子を基板表面へ固定化、配列化、ネットワーク化する研究を開始し、レドックス活性分子配線の構築に向けた研究を本格化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
化合物の合成が予想以上に収率良く進み、また化合物同定に関する研究も想定以上に能率的に進行し、当初見込んだ物品費(主に貴金属試薬、有機溶媒、一般的化学試薬)を押さえることができたため。 次年度に繰り越した額は、成果報告の旅費やさらに新化合物を得るために使う物品費に充当する計画である。
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Research Products
(10 results)