2014 Fiscal Year Annual Research Report
次亜塩素酸錯体の反応性と反応選択性の分子機構の解明及びそれに基づく制御法の開発
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25288032
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
藤井 浩 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (80228957)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酵素反応 / 反応中間体 / 次亜塩素酸 / ヘム / 酸化反応 / 反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度のポルフィリン配位子の電子吸引生効果と鉄3価次亜塩素酸付加錯体の安定性の関係をさらに定量化するため、メソフェニル基やピロールβ位にフッ素原子を導入した4種類のポルフィリンを設計、合成した。これらのポルフィリン配位子から鉄3価次亜塩素酸付加錯体の合成を低温で行った。これらの鉄3価次亜塩素酸付加錯体は、NMRやEPRを用いて電子構造を明らかにした。反応性の変化を解明するため、シクロヘキセンのエポキシ化反応を行った。速度論的な手法により反応性を定量化するため、種々の反応条件を検討した結果、実験条件を最適化することができた。その結果、ポルフィリン環に導入したフッ素原子が増加し、ポルフィリン配位子の電子吸引性効果が大きくなるに伴い、次亜塩素酸イオンの反応性が低下するという結果を得た。この結果は、高原子価オキソ錯体のエポキシ化反応の反応性とは逆の関係であり、驚くべき結果であった。 鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体と塩素イオンから次亜塩素酸錯体の生成についても検討した。昨年度までの研究により、高い反応性を持った鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体しか塩素イオンと反応しないことが明らかとなったので、上の実験で示したポルフィリン配位子を用いて鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体の合成を試みた。ピロール位にフッ素原子を導入したヘムから鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体は合成できなかったが、メソ位にフッ素原子を導入したヘムから非常に高い反応性を有する鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していた実験は、ほぼ順調に行うことができた。その結果、高原子価オキソ錯体と次亜塩素酸錯体の反応性がまったく逆の傾向を示すという驚くべき結果を得ることができた。この成果は、論文投稿できるよう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験で、次亜塩素酸錯体の反応性を評価する手法を開発することができた。これにより、エポキシ化反応の反応性を解明できた。今後は、この手法を使って次亜塩素酸イオンの塩素原子が添加される塩素化反応の反応性についても検討を加える。これにより、次亜塩素酸錯体の反応性を支配する機構を統合的に理解できるようになると考える。 本年度に本申請者は、研究機関を移動した。そのためストップドフローの実験装置のセットアップに少し時間を要した。現在は無事新しい研究機関で稼働しているので、この装置を活用してさらに不安定な活性種の検出、および次亜塩素酸錯体やそこから生成する鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体のより詳細な反応機構の解明を行いたい。
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Causes of Carryover |
本年度4月より予定通り研究員を雇用したが、8月から企業に就職が決まり退職してしまったため、人件費として予定していた予算の一部を使用することができなかった。すぐに新しい研究員の採用を試みたが、本研究課題を行うために適した人材を見つけることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本申請者は、本年度に研究所から大学へ研究機関を移した。これまで研究員を中心とした少人数の研究体制で研究を行ってきたが、本年度から大学に移動し、学生、大学院生と研究を行うようになった。これまで予定していたより多くの試薬、溶媒、器具が必要になるため、繰り越し金の一部はこれら消耗品として使用する。また分光器が足りないこともわかったので、次年度早々にそれらの購入に充てる。
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