2013 Fiscal Year Annual Research Report
局在型ビラジカルの高密度配列化による低電圧駆動有機半導体の創製
Project/Area Number |
25288033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 繁和 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00312538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 開殻分子系 / 超分子化学 |
Research Abstract |
本研究では、リン原子の電子摂動効果とかさ高い置換基の立体保護効果を受けた高安定性局在型一重項ビラジカルの高い電子供与性がユニークな電子機能性の発現に有効であると考え、適切なパイ共役平面構造を導入してビラジカルユニットを高度に集積化させ、独特な低電圧駆動性半導体を創製することを目指している。本年度の成果を示す。 1)固体状態で極めて高い安定性を示す、リン原子上にアリールメチル基を導入したビラジカルの創製と物性について検討を行った。これまでの検討から、ベンジル(フェニルメチル)基を導入した誘導体がFET特性を示すことを見出している。このことを踏まえ、まず、ナフチルメチル基を導入した誘導体について検討したところ、ベンジル基と類似した結晶構造をとることがわかったものの、分子配列が不均一である等の理由から、シンプルなドロップキャスト法で作成したデバイスはFET特性を示さなかった。一方、2-アントリルメチル基を導入した誘導体を合成して構造改正すると、ベンジル基の場合と同じ結晶構造となり、若干性能は低くなったものの、FET特性が現れることがわかった。また、一分子としての物性を検討したところ、アントラセン構造の分子軌道レベルがビラジカルユニットと非常に近くなることに由来する現象が示唆された。 2)リン原子上に直接アリール基を連結したビラジカルの合成と物性について検討したところ、ナフタレン構造を直結させた誘導体がFET特性を発現することを見出した。この誘導体の結晶構造は明確な分子間相互作用を示していないことや、前項に示した、ナフチルメチル基を導入した誘導体とは対照的な結果となったことから、機能性を示すビラジカルの新たな設計指針の策定に有用な知見と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
半導体特性を示す局在型ビラジカルとして見出した化合物の構造的特性を踏まえて分子設計した化合物がほぼ予想通りの特性を示したが、一方ではほとんど同じような結晶構造にもかかわらず半導体特性を示さないこともわかった。さらに、半導体特性を示さない誘導体の構造をほんの少し変化させるだけで半導体特性が現れることもわかった。これらの知見は、ビラジカルの設計と固体物性発現を関連づけるデータとしては予想以上のものであったといえる。また、ビラジカルの分子軌道をより高度に利用できる分子設計も可能であることが見出され、新たな物性発現が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ビラジカルの結晶構造の制御を司るためにパイ共役系構造を導入する検討を継続して行うが、さらに、ビラジカルユニットの電子状態をより高度に利用できる置換基構造の導入とそれに伴う物性の発現にも着目する。たとえば、テトラセン構造を導入することができれば、ビラジカルユニットとテトラセン構造が本来持つ電子機能性に加えて、ビラジカルの分子軌道と複雑に相互作用することになり、興味深い物性発現が期待できる。また、高度にビラジカルユニットの電子状態をチューニングすることによって、スピン多重度の制御や外的刺激による伝導度制御をはじめとしたユニークな電子物性の発現に挑む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アラインを用いたビラジカルユニットへの直接芳香族置換基導入の実験を行う予定であったが、このプロセスで合成した誘導体の結晶構造および半導体特性が特徴的であったことから、合成実験を一旦止めて物性について基本的な検討を行った。このことから、実験で使用する予定であった物品の購入が次年度にずれ込んだ。 アラインを用いたビラジカルユニットの直接芳香族導入に用いる合成試薬の購入に使用する。
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Research Products
(11 results)