2013 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化制御に基づいたユビキタス元素による外部刺激応答性発光変換素子の創製
Project/Area Number |
25288036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤内 謙光 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30346184)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶工学 / 多孔性構造 / 超分子 / 発光変換 / 有機塩 |
Research Abstract |
本研究ではレアメタルに頼ることなく、入手しやすい軽元素(C, N, O, Si, S)のみによって構成され、様々な物理刺激(熱、光、力)および化学刺激(ガス、有機溶剤、イオン等)によって光電特性を劇的に変換する、ダイナミック発光素子の創製とその変換機序の解明を目的としている。本研究では、様々な刺激によって分子配列を組み替えることを主な動作原理としているところに独創性がある。したがって、全く違う種類の刺激を分子の凝集変換という同種の入力コマンドに一元化することができ、どんな刺激にも単一物質で対応できることが優位な点である。すなわち異種の刺激を同時に入力することが可能で、本研究ではダイナミック発光素子を嗅覚や味覚のような多元的複合センシングデバイスへと応用することを究極の目標とする。 1.多環式芳香族化合物に酸性基を導入した機能団分子を合成した。本年度はこれまで結果の得られているアントラセンジスルホン酸で置換基の導入位置の違う構造異性体と、ピレン、ペリレンにスルホン酸基を導入した多環式芳香族ジスルホン酸を合成した。 2.得られた機能団分子と種々のアミンと組み合わせ複合体物質を作成した。 3.多量に作成した有機塩を様々な有機溶媒から結晶化させ、得られた結晶中における超分子構造の化学的性質を紫外可視分光法、赤外分光法、NMR、マススペクトルによって明らかにした。 4.良好な結晶を作成し、単結晶X線構造解析により多孔性の超分子集合を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から多環式芳香族にスルホン酸基を導入した分子を多数合成し、それとアミンを組み合わせることによって目的としていた多孔質構造を構築することができたことから、概ね研究は順調に進展していると考えている。本手法では組み合わせは無限にあり、様々な物質へと発展が可能であることから、今後の展開に期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.初年度の研究結果を基に、新規の機能団分子を合成する。引き続き、得られた機能団分子と構造制御部位である種々のアミンとを組み合わせ複合体物質を作成し、発光特性・発光挙動について測定する。 2.引き続き本研究の目的である、発光特性・発光挙動について測定する。蛍光分光法により、発光スペクトル、発光量子効率、発光寿命を明らかにする。同様に包接結晶についての研究を進める。モジュレーターの吸着・脱離、さらには交換に伴う発光挙動変化を観察・測定する。 3.さらに包接結晶の形態・構造変化に関しては時間分解X線構造解析を用いて、微小時間における経時差分析を行い、数ミリ秒での構造変化の相関を明らかとする。さらにフェムト秒レーザー分光を用いることによって、フェムト~ピコ秒オーダーでの紫外可視分光分析、および蛍光分光分析を行い、この手法により刺激による微小時間の発光特性変化をとらえる。 4.分子構造・分子集合データと発光特性・発光挙動のデータをコンピュータケミストリーの観点から解析し、発光化学的論理性の確立に努める。また、これらの結果を分子設計および超分子設計にフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね研究は順調に進んでいるが、より複雑な分子の設計にチャレンジしたため化合物の合成が間に合わない部分が出てきた。 設計した分子の合成ルートがおおよそ確立できたため、次年度はそれをもとに複雑な分子を合成し、それらを用いた多孔性物質の作成と物性の評価を行う。
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