2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロスピン系による外部刺激応答型ゲル磁性体の構築
Project/Area Number |
25288038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
唐澤 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80315100)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子磁性体 / 有機スピン / ゲル / ヘテロスピン系 / 超分子 / 遷移金属 / ランタノイド / 外部刺激応答性 |
Research Abstract |
当研究室では、有機のスピンと遷移金属のスピンを持つヘテロスピン系による分子磁性の研究を行っている。この系の特徴は、有機スピン源と金属の組み合わせを変えることによって様々な性質の分子磁性体を構築できる点にある。今回このヘテロスピン系の特徴を活かして、柔らかい構造を有するゲル磁石構築と外部刺激に応答する系を構築することを目的に研究を行っている。 25年度は、当研究室で開発した2種類のジピリジル型有機配位子1と2を有機スピン源(または有機スピン源前駆体)として用いた。また遷移金属錯体においては、長鎖アルキル基を有するニッケルとコバルト錯体を準備し、有機スピン源と金属錯体とを混合し、ゲル磁性体構築を目指した。その結果、ジアゾ基を有する1とニッケル配位子においてエタノール中20mMを臨界ゲル濃度(CGC)とした柔らかいゲルを構築することが出来た。しかしながらその他の溶媒やコバルト錯体においてはゲル構造を得ることが出来なかった。ニッケル錯体で得られた柔らかいゲルは、ゲル構造に特徴的な三次元ネットワークが不完全であるため、柔らかくなったと考えている。またコバルト錯体でゲルが得られなかったのは、1のピリジル基がシスとトランスに配位したため、オーダーした構造を有することが出来なかったことが原因であると考える。また有機配位子2を用いた系においては、金属との錯形成能が弱いため、目的とする三次元ネットワーク構造を有するゲルを得るに至っていない。 そこで三次元ネットワーク可能な分子設計として、新しい有機配位子3の合成と遷移金属よりも結合数が多く磁気異方性の大きなランタノイドを用いたアプローチを開始した。予備的合成ルートの段階であるが3の合成に成功し、またランタノイドを用いた有機無機ヘテロスピン単分子磁石の構築に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年間の研究期間の1年目であり、狙い通りヘテロスピンゲル磁性体を構築することが達成目標であった。しかし当初予定していた進捗状況よりもやや遅れている。予定に従ってジピリジル型有機配位子1と2を用いて、ニッケルとコバルト錯体とのゲル化を試みた結果、目的とするヘテロスピンゲルは、1とニッケル錯体をエタノールに溶解させた場合にのみ得られたに過ぎなかった。コバルトイオンは磁気異方性が大きく、最終目的である外部刺激応答性ヘテロスピンゲルになると期待され重点的に実験しているが、顕著な進展はなくゲル化が達成できなかった。その理由は、溶液中の金属錯体の構造に由来すると考えられ、コバルトイオンに結合する1のピリジル基が、八面体構造のシス型とトランス型錯体の混合物となるからと考えている。その場合、ゲル構造の基本である一次元鎖構造体が作り出す三次元ネットワークが不完全となり(ディスオーダー)、ゲル化しなかったと考えている。一方ニッケル錯体では、トランス型が優先的に生成するため三次元ネットワークが容易に形成し(オーダー)、ゲル化が生じたと考えている。これらの考察は、モデル化合物を用いての単結晶X線結晶構造解析の結果に基づいている。ニッケル錯体ではトランス型錯体のみが得られるのに対して、コバルト錯体ではシス型とトランス型錯体の結晶多形の生成が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの問題点として、ゲルの基本構造である一次元鎖がディスオーダーしたため、三次元ネットワーク構造構築が不完全であることが考えられた。そこで目的達成のための方策として以下の2点について重点的に行うことを予定している。 1.新たな有機配位子3を分子設計した。3は1と2と比べると平面性が高いため構造の異方性が大きくなり、コバルト錯体においてもトランス構造を優先的に生じ、その結果ゲル化に適していることが期待される。さらに高い平面性は磁気的相互作用に関与することが期待される。コバルトイオンと3が結合した際にスピンを有するコバルトと3との磁気的相互作用が大きくなり、最終的には外部刺激応答性に有利に働くことが期待される。現在のところ3の合成については、低収率ながらESRで生成を観測することができたが、合成ルートの見直しが必要であると考えている。 2.三次元ネットワーク構築のために、ランタノイドイオンを用いることを計画した。遷移金属と比べて結合数が多いことが知られており、三次元化に適した素材であると考えられる。また磁気異方性に関しても遷移金属で最も大きいとされているコバルト二価よりも大きいと報告されている。近年、分子磁性体の分野においてもランタノイドの研究が盛んであり、多くの情報が得られ易いことも利点である。有機スピンとのヘテロスピン系についても他の研究室からの報告があり、磁気的解釈を学ぶことが出来る。予備実験において、我々オリジナルの三重項カルベンを用いての有機ランタノイドヘテロスピンモデル化合物が、光応答型単分子磁石となる系を見出した。このことは、磁気異方性が大きいヘテロスピン化合物が得られることを示唆しており、ゲル化によって外部刺激応答性が得られることが充分に期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額5,880円が生じた理由は、26年度4月初旬に納品可能な物品があったためである。 予定どおりにこの物品を購入し、目的物質の合成を行った。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Magnetic Properties of 1:2 Mixed Cobalt(II) Salicylaldehyde Schiff-Base Complexes with Pyridine Ligands Carrying High-Spin Carbenes (Scar = 2/2, 4/2, 6/2, and 8/2) in Dilute Frozen Solutions: Role of Organic Spin in Heterospin Single-Molecule Magnets2014
Author(s)
Satoru Karasawa, Kimihiro Nakano, Daisuke Yoshihara, Noriko Yamamoto, Jun-ichi Tanokashira, Takahito Yoshizaki, Yuji Inagaki, Noboru Koga
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Journal Title
Inorg Chem.
Volume: 53
Pages: 5447-5457
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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