2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロスピン系による外部刺激応答型ゲル磁性体の構築
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25288038
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
唐澤 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80315100)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子磁性体 / ゲル / 超分子 / 有機スピン / 金属錯体 / ランタノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶を基盤に発展してきた分子磁性研究を応用展開するために、「柔らかい構造」を有するゲル状態に着目し、世界でほとんど例のない分子磁性ゲルの構築とその外部刺激応答性に関しての研究内容である。最終的な目標として、外部刺激に応答して磁性がスイチィングできるシステムの構築を我々のオリジナルである有機と金属のスピンを用いたヘテロスピン系で達成することである。 平成25-26年までに、構造異性化が比較的少ないニッケルを用いた分子磁性ゲルの構築と光照射後の磁気的性質を明らかとした。また磁気異方性の大きな遷移金属であるコバルトを用いた有機と金属のスピンによるヘテロスピン一次元鎖を基本骨格として、磁性ゲルの構築を果たした。しかしながら分子構造とスピン状態の観点から、1)より硬いゲル、2)より大きな磁気異方性、を有する分子構築の必要性が生じたため、平成26年度からはランタノイドを用いる方針で研究を進めて来た。今年度も同様な方針で継続する。 平成26年度は論文発表4件と学会発表14件を達成した。特にInorganic Chemistry (Karasawa S. et al. 2014, 53, 5447-5457.)に掲載された論文では、固体状態ではなく溶液状態におけるヘテロスピン単分子磁石に関する内容であり、ゲル磁性体との関連性が深い論文となった。またランタノイドを用いた有機無機ヘテロスピン磁性体に関する内容も学会発表とはなるが、2件行うことが出来た。最終年度はこれらの内容を論文として発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的を達成するためには、1)ヘテロスピン系で「ゲル」を構築すること、2)得られたゲルの磁性を明らかにすること、3)大きな磁気異方性を有すること、これらが必要条件となっている。現在までの達成度がやや遅れている理由は、1)に関する進捗が遅れているからである。即ち我々が開発した有機配位子と金属錯体を混合することによって得られる「ヘテロスピンゲル」の合成方法に二点の問題点が見出された。一点目はゲル化のための最適な溶媒条件が限られている点、二点目は得られたゲルが柔らかすぎる点である。前者については、単一の溶媒系ではゲル化の達成が得られておらず、全て混合溶媒系で得られている。例えばニッケル錯体を用いて得られたヘテロスピンゲルでは、20%塩化メチレンを加えたエタノール溶媒によってゲルは得られるが、10%や30%の塩化メチレンではゾル若しくは沈殿が生じる。単一溶媒でないため、条件検討に非常に時間がかかるのが現状である。従って、分子系を変えることで改善を試みている。また二点目の柔らかいゲルに関しては、得られている一次元鎖構造に起因するのではないかと考えている。即ちゲルの本質は一次元鎖のネットワークが絡み合うことであるが、得られている一次元鎖が「硬い」ため、ネットワークを作ることが困難である可能性が考えられる。そこでランタノイドを用いて次元性を拡張する方向で研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度であり、以下1-3の実験と成果発表を積極的に行っていく。 1)ランタノイドを用いることでの利点は、結合サイトが多くなる点と磁気異方性が大きい点にある。実際我々が昨年度構築したdiscrete誘導体1と一次元鎖誘導体2では、それぞれ結合数が8と9配位であった。またランタノイドとしてTb(III)を用いた誘導体1と2では、有機スピンと磁気的相互作用することによって遅い磁気緩和現象が初めて確認された。これはTbが大きな磁気異方性を有しているためであり、ランタノイドの特徴を我々が開発した本ヘテロスピン系で実現することが出来た。 今年度は、新たに1と2に長鎖アルキル鎖を導入した1‐LACと2‐LACを合成する。そしてこれら長鎖アルキルを付加したヘテロスピンランタノイド化合物を有機溶媒中でゲル化を実現し「オルガノヘテロスピンゲル」を構築する。そして定法に従ってその磁気的性質について明らかにする。 2)前年度までに得られたコバルト(II)用いたゲルに関して、興味深い磁気的性質が確認された。それは外部磁場存在下(1テスラー)での磁性と非存在下での磁性が異なっていた点である。そこで、連携研究者が保有している大きな外部磁場の7テスラー装置を用いてこの現象を確認する。現在のところ外部磁場によって磁気異方性の大きなコバルト原子が応答し、外部磁場と同じ方向にそろう磁気異方性の力が分子全体に伝播した結果、差が生じたと推測している。従って、ランタノイドを用いた系で同様のことを行うことが出来れば、外部磁場存在有無で大きな差が生じることが期待される。 3)磁気異方性は大きくないが、構造異性体の少ないニッケル(II)を用いた系では、ゲル磁性体が得られ、固体と同様な磁気的性質が確認された。そこで、高磁場装置を用いた磁場依存性の測定から、得られたゲルの磁気的ユニット数を決めることを目的に検討を行っていく。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Stable π-Radical from a Contracted Doubly N-Confused Hexaphyrin by Bis-Palladium Metallation2015
Author(s)
Y. Hisamune, K. Nishimura, K. Isakari, M. Ishida, S. Mori, Satoru. Karasawa, T. Kato, Sangsu L., D.Kim, and H. Furuta,
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Journal Title
Angew. Chem., Int. Ed. Engl.
Volume: 54
Pages: 掲載予定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Magnetic Properties of 1:2 Mixed Cobalt(II) Salicylaldehyde Schiff-Base Complexes with Pyridine Ligands Carrying High-Spin Carbenes (Scar = 2/2, 4/2, 6/2, and 8/2) in Dilute Frozen Solutions: Role of Organic Spin in Heterospin Single-Molecule Magnets2014
Author(s)
Satoru Karasawa, Kimihiro Nakano, Daisuke Yoshihara, Noriko Yamamoto, Jun-ichi Tanokashira, Takahito Yoshizaki, Yuji Inagaki, Noboru Koga
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Journal Title
Inorg Chem.
Volume: 53
Pages: 5447-5457
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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