2013 Fiscal Year Annual Research Report
C-H結合活性化を用いた新規フラーレン及びその部分骨格を有するn型半導体の開発
Project/Area Number |
25288043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 鉄男 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (80431493)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | C-H結合活性化 / n型半導体 / フラーレン部分骨格 |
Research Abstract |
本研究は、触媒的C-H結合活性化を鍵とする新しい分子変換反応及び触媒系の開発により、明確に設定した標的化合物、すなわち、n型有機半導体材料として官能基化フラーレン及びその部分骨格を効率的合成し、優れたn型半導体の新機能を創出することを目的としている。平成25年度では、触媒的フラーレンの環化付加反応および非対称1,4-二置換フラーレン官能基化反応の開発を計画した。研究計画とおり、コバルト触媒とマンガン還元剤の存在下、フラーレン(C60)と種々の活性アルキルジブロマイドを用いると、様々な3員環および5員環から7員環までのフラーレンモノ環化誘導体が室温で効率的かつ高選択的に得られることを見出した。また、2価の銅触媒の存在下、モノ置換フラーレンのC-H結合と様々な1級および2級アミンが効率的に反応し、モノアミノ化1,4―二置換フラーレン誘導体が高収率かつ高選択的に得られることを見出した。様々な検討を行ったところ、本反応はアミンによるフラーレンモノラジカル形成と銅触媒によるアミンラジカル形成が同じ反応場で進行し、それに続くラジカルのカップリングにより進行することを明らかにした。さらに、パラジウム触媒存在下、オルトアルキニルアリールハライドとジアリールアルキンの分子間のクロースオバー環化反応がC-H結合活性化を経て進行し、二つの5員環骨格を有するπ共役系ジベンゾペンタレン化合物が高収率で得られることを初めて見出した。本反応において種々の反応条件を検討した結果、DBUとCsOPivの二つ塩基を同時に用いることが鍵である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、当初研究計画とおり、2価の銅触媒の存在下、モノ置換フラーレンのC-H結合と様々な1級および2級アミンが効率的に反応し、モノアミノ化1,4―二置換フラーレン誘導体が高収率かつ高選択的に得られることを見出した。本合成は選択的モノアミン置換をC60骨格に導入する初めての例であり、それにより様々な新規アミノ化フラーレンを簡便迅速に合成できる。この方法は米国化学雑誌Organic Letters(2014, 16, 620)に発表された。また、コバルト触媒とマンガン還元剤の存在下、フラーレン(C60)と種々の活性アルキルジブロマイドを用いると、様々な3員環および5-7員環フラーレンモノ環化誘導体が室温で効率的かつ高選択的に得られることを見出した。本方法は、米国化学雑誌Organic Letters(2013, 15, 4030)に発表された。さらに、フラーレン部分骨格構築方法の過程において、パラジウム触媒を用いた新規C-H結合活性化により二つの5員環骨格を有するπ共役系ジベンゾペンタレン骨格が容易に構築できることを見出した。この結果は当初の計画よりさらに進化した合成法であり、米国化学雑誌J. Am. Chem. Soc.(2013, 135, 10222)に発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、当初の研究計画以上研究が進展しており、特にパラジウムなど遷移金属触媒を用いたC-H結合活性化反応がπ共役縮環系有機材料の合成において非常に有効であることを実証した。これらの結果をもとに、今後の研究の推進方策として、設計した有用な有機半導体材料を「C-H結合活性化」という方法に絞り、さらに進化した変換反応の開発により実用性を有する有機電子材料を創出する。また、フラーレンの官能基化反応の開発おいて、実用性を有する官能基化フラーレンをさらに穏和な反応条件で効率的に合成し、その有用な材料としての新機能を創出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、主に研究計画が新規n型半導体の合成法の開発である。本年度では引き続き合成法の開発に加えてOFETや太陽電池へのデバイス化による材料の機能評価を行うため経費が必要である。 本年度では引き続き研究計画とおり、官能基化フラーレンやフラーレン部分骨格の合成法を開発し、さらに前年度と本年度の研究により得られた新規材料をOFETや有機博膜太陽電池のアクセプター材料として新機能の開発を行う。
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