2013 Fiscal Year Annual Research Report
水中バイオインスパイアード反応を駆使した生物活性アルカロイドの化学的研究
Project/Area Number |
25288050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石川 勇人 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80453827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 廣光 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90171561)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水中反応 / 一電子酸化 / バイオインスパイアード反応 / 二量化反応 / アルカロイド / ワンポット反応 |
Research Abstract |
天然に存在する塩基性化合物(アルカロイド)には顕著な生物活性を有するものも多く、効率的な人工合成法(全合成法)の開発は、現代科学において非常に重要な課題である。本研究ではアルカロイドの塩基性に着目し、酸性水溶液中で反応を行う手法による、短段階での生物活性アルカロイド類の全合成を目指した。細菌が生産するトリプトファン由来二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類には様々な骨格および顕著な生物活性が知られている。これらアルカロイド類を網羅的に合成するため、生体内で起きている合成経路(生合成)を新たに創造し、フラスコ内で再現する事を試みた。その結果、1級アミン無保護のトリプトファン誘導体をメタンスルホン酸水溶液に溶解させ、一電子酸化剤として酢酸マンガン、三フッ化酸化バナジウム、五酸化バナジウムを用ることで、鍵となる二量化反応が進行する事を見出した。本合成は数多く存在する天然物の数種骨格を市販品から1段階で構築できる革新的な方法となっている。また、本反応中では酸性水溶液による窒素の保護および酸化剤の活性化が起きており、有機合成にそのような現象を利用した初めての例である。一段階で、基本骨格構築に成功したので、続いて、これまでに天然より見出されている本基本骨格をもつ全てのアルカロイドの全合成を行なった。具体的にはジケトピペラジンを形成するアミノ酸との脱水縮合反応と分子内アミド化反応を独自に開発し、更にワンポット反応へと展開する事で天然物へと導いた。この手法の開発により、多くの天然物が市販品からわずか2工程で合成できる。したがって、迅速な天然物ライブラリー構築に繋がり、これまでに天然物11種を含む20種の化合物を合成した。合成した化合物は生物活性試験に付し、これまでに報告されていない新たな生物活性を見出している。現在、構造活性相関研究に展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、アルカロイドを酸性水溶液中で合成反応に付すこと自体挑戦的であったため、最適な酸化剤を見出し、条件を最適化するまでに時間を要する事が考えられた。しかしながら、本反応に適応する酸化剤が数多く見出され、得られる生成物の骨格様式もそれぞれの酸化剤で異なるという興味深い知見が得られた。これにより研究は一気に進展し、これまでに11種もの天然物を合成するに至った。また、当初予定していなかった生物活性試験を行う共同研究が進展し、これまでに報告例のない新たな生物活性が見つかった。詳細は論文投稿前であるため、記述する事は出来ないが、新たな抗がん剤および動脈硬化治療薬の開発に繋がる結果である。なお、今回、開発した合成経路がわずか2工程もしくは3段階で目的物が合成できるため、誘導体合成が簡便にできる。また、この知見から酸性水溶液中でのアルカロイド合成の可能性が広がり、天然に存在する様々なアルカロイド合成に応用できる事が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、現在の結果から進展させ多量体型ピロリジノインドリンアルカロイド類の全合成研究へ展開する。すでに、これまでに得られた結果が先駆的知見となっているため、同様の手法を駆使すれば3量体から10量体までの合成が可能であると考えている。その後、生合成から存在が予想される合成した推定天然物を票品とし、協力研究者により採集された植物サンプル中からの採取を目指す。(合成先行型の天然物探索)また、これまでに合成した天然物よりも更に複雑な構造を有する硫黄架橋を有する二量体型アルカロイド類の短工程合成を目指す。本反応も同様にこれまでに例のない水溶液中での反応にこだわる事で、革新的な合成になると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回提案する合成で得られる化合物群が、非常に不安定であり、現在所有している質量分析装置では解析困難である事が明らかとなった。従って、25年度に購入予定であった備品の購入を見合わせ、また、消耗品も別予算で賄い、次年度の予算と合算して低温条件で質量分析が可能なLC-MSの購入に使用する。 25年度に使用しなかった基金分は低温質量分析装置の購入費に使用する。
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Research Products
(18 results)