2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ元素含有電子求引性ユニットの開発と機能性高分子材料への応用
Project/Area Number |
25288053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 善樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70144128)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 共役系高分子 |
Research Abstract |
電子求引性の無機元素錯体と電子供与性のコモノマーとの交互共重合体を作成することで、分子内電荷移動(CT)に基づいた強発光・狭バンドギャップを有する高分子材料の作成を狙う。また、電荷輸送材料としての評価も行う。具体的には、ジケトネート、メタロフルオレン、ベンゾキノリン骨格を配位子として、重金属元素や電子求引性を示す3価の13族元素、高配位ケイ素を含む錯体等、特にホウ素以外のモノマーを用い、それらを含む共役系高分子の合成を目指す。 電子求引・供与性モノマーによる交互共重合体は、CTに由来した高輝度発光や狭バンドギャップによる赤色・近赤外発光、ならびに高い電荷輸送性を持つ材料としてその有用性が注目されている。申請者は現在まで、無機元素含有錯体を利用することで、電子供与性モノマーの開発を目指し研究を進めてきた。その結果、可視光領域に及ぶ強い光吸収を示し、ホウ素の空のp軌道を介して共役系が主鎖に沿って拡張していることが明らかとなった。次に、高い電子輸送性と発光性を示すトリス(キノラート)アルミニウム(Alq3)の構造を基に、BPh2qというホウ素錯体を設計し、高分子を合成した。得られた物質はAlq3と同程度の電子輸送能を有しつつ、成膜性や安定性に優れていることが明らかとなった。これらの研究を進める中で、有機ホウ素化学における高分子合成論、反応論、電子構造論という学問領域を発展させることや、特にホウ素錯体が電子求引性ユニットとして働きCTによる高輝度発光や高効率で電子輸送が可能な実用的にも有用性の高い物質を生み出すことができた。本研究では、さらに高機能性材料を得るとともに、ヘテロ元素含有共役系高分子の可能性を拡げることを指向して、特にホウ素以外の元素に着目し、共役系の構築を基盤として新規物質探索を行うものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A. ジケトネート骨格含有高分子を用いた異種金属含有共役系高分子の開拓 アセチルアセトン骨格などに含まれるジケトン構造は様々な金属イオンと錯体形成が可能である。また、フルオレンはそれ自体が発光・電荷輸送材料として有用なユニットであるが、機能性ユニットを共役させることで、高感度イオンセンサーや高輝度発光性高分子などフルオレンの分光学的性質や電気的特性を利用した材料開発が進められている。以上の背景より、ジケトン構造の錯体形成能とフルオレンの光学・電子的性質を融合させることを目的として、高分子を設計した。特に、異種の金属を同時に任意の比率で共役系に参加させることで、特異な機能性発光材料の創出と、発光特性の調節を目指した。この目的を実現するための足場材料の構築を行った。 モノマー合成は、重合性官能基を有するフルオレンとジケトン分子により行った。これらの共重合モノマーを用いて、交互共重合体を作成した。一つの高分子から様々な金属種を含む物質を得るために、ジケトン部位に保護基を導入しておき、重合反応後に脱保護、金属錯体化を行った。高分子反応における金属錯体添加量を調節することで、錯体化比率を調節した。現在までにホウ素と白金の導入は完了しており、実際、導入量を変化させることで黄色から赤色までの発光色制御が容易に可能であった。段階的に異なる種類の金属種と反応させることで、異種の中心金属から成る錯体を同時に一つの鎖中に存在させることに成功した。これらの錯体間でのエネルギー・電子移動、スピン多重度の変化、励起子の長寿命化など様々な物性の発現を観測した。金属錯体の形成や電子状態制御の手法に多様性を持たせるために、スクリーニング的手法により様々な中心金属の導入や錯体上の配位子の変換について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
高配位ケイ素錯体を主鎖に含む高分子を作り出すことを目指す。実験手順としては、まず強固な配位結合の実現のために、ベンゾキノリン配位子を導入し安定な高配位状態の形成を目指す。高分子主鎖にはシラフルオレンやジベンゾシレピンによる共役系を構築し、ケイ素原子との相互作用の実現を図る。錯体上に電子供与性と受容性の置換基を導入し、錯体の電子状態やケイ素の配位構造に及ぼす影響をNMRおよび単結晶X線構造解析により調べる。特に、29Si NMRの化学シフト値と結晶構造解析によるSi-N間の結合距離により、高配位状態の確認とその強さの評価基準とする。また、得られた錯体の分光学的性質を調査する。特に、ケイ素上に重合性官能基を導入し、ケイ素ベンゾキノリン部位を主鎖に有する共役系高分子の合成を行い、低分子の吸収および発光スペクトルの比較から、ケイ素を介した共役の拡張による分光学的性質への影響について検討を行う。高配位ケイ素は直接結合している置換基の種類により構造が変化する。そのため、CT性発現に不利なねじれ構造をとる可能性がある。したがって、錯体部位にフッ素やエチニルベンゼン基を導入することで、錯体を固定化し、共役系伸長を試みる。また、ケイ素の電子求引性の効果が低い場合、ケイ素と重合位置をパラ位とすることで、ケイ素を介した共役系構築を行う。 また、申請者は現在までに、まずガラフルオレンの合成を行い、共役系主鎖におけるエネルギー輸送や電子移動反応について基礎的知見を収集した。その結果、9位に立体的に大きな置換基を導入することで、電荷発生時や加熱による安定性が著しく向上することを見出した。同様に、他の13族メタロフルオレンについても高分子の安定性や機械的特性についても調べる。
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