2014 Fiscal Year Annual Research Report
不斉超分子結晶体によるキラル無機酸化物ナノ材料設計手法の開発と応用
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25288058
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
金 仁華 神奈川大学, 工学部, 教授 (60271136)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリエチレンイミン / キラル金属酸化物 / 酒石酸 / 超分子結晶体 / キラル転写 / シリカ / 酸化チタン / キラル発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ポリエチレンイミンの新規合成では、ポリスチレン主鎖にポリエチレンが側鎖として結合してなる一連の櫛構造ポリエチレンイミンを合成し、それらの単独の自己組織化挙動、キラル酸との結合による自己組織化挙動を系統的に調べた。特に、酒石酸と櫛構造ポリエチレンイミンからなる超分子結晶型錯体は、通常の直鎖状ポリエチレンイミン系にはない顕著なエキシトンキラリティを示した。 2)直鎖状ポリエチレンイミンまたは櫛構造ポリエチレンイミン/酒石酸からなるキラル結晶体を触媒型テンプレートとして用い、キラルシリカを合成し、その上に、ナノ銀を取り込ませたAg@SiO2ナノコンポジットに変換されたキラル複合体は、600nm波長以上においてナノ銀由来のプラズモン共鳴を示した。 3)キラルAg@SiO2複合体をシステインとの反応に用いたところ、複合体中の銀が酸化され、システインの硫黄とAg-S結合を有する環状錯体を形成することが見出された。比較に、アキラルのAg@SiO2はほとんど反応性を示さなかった。ラセミ体のDL-システインをところ、L体が優先的に反応することが判明された。キラルAg@SiO2の不斉識別機能として有意義な発見である。 4)キラルシリカを低温還元することで、金属シリコンへ構造変換させた。この反応は非晶性のシリカを結晶性のシリコンへの変換する過程であるが、キラリティがシリコンへ転写され、シリコンの吸収波長(500nm)範囲で強いCD活性が発現した。化学還元法でキラルシリコンを合成する新しい製造法を確立した。 5)発光性キラル酸化物(希土類@シリカ)の合成ルートを確立し、それで得る発光体の円偏光発光(CPL)を調べた。紫外線励起下、右円偏光発光と左円偏光発光の鏡像関係を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)キラリティを有する銀@シリカ複合体がシステインとの反応で示した不斉識別は予想外の新しい反応である。生成物は[Ag-S]n結合を有する環状錯体で、強いエキシトンキラリティを示した。今後、この反応系をさらに展開し、硫黄系不斉分子に特化した研究を行う予定である。
2)キラルシリカを直接還元しキラルシリコンへ変換できる合成法を見出した。化学還元法でキラルシリコンを合成できることは、大スケールでのキラルシリコンの製造が可能であることを示唆する。今後、キラルシリコンに金属複合し、それらの材料機能を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初期計画通りに進めると同時に、予想外に見出した新しい現象系にさらに突っ込んだ検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ポストドクターの採用が遅れ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在のポストドクターの8月までの給与に使用予定。
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