2013 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスを原料とする高機能性プラスチックの開発
Project/Area Number |
25288080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉江 尚子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20224678)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオベースポリマー / フランポリマー / 可逆架橋 / 自己修復 / 形状記憶 |
Research Abstract |
木質バイオマス由来フラン化合物を原料とする新規ポリエステルとして、2,5-ジヒドロキシメチルフランとコハク酸よりポリ(フランジメチレンサクシネート)、PFSを合成し、5種類のビスマレイミドで可逆架橋して物性を比較した。架橋体PFS/Mの機械特性は、マレイミド/フランの混合比(M/F比)、及び、ビスマレイミド分子の柔軟性に応じて変化することが確認された。これらの架橋体は加熱するとフランとマレイミドの付加体が部分的に解離し、再成形可能であった。また柔軟なビスマレイミドから得たエラストマーは、破断面を接触させると接合する自己修復性(室温自発修復性)を示した。 PFS/Mが特異的な多形状記憶性を有することも明らかにした。M/F比に依存してガラス転移温度Tgが40℃程度も変化する。このため、M/F比の小さな低架橋体フィルムを、一部分ずつ濃度の異なるビスマレイミド溶液に浸すことにより、Tgの異なる部分からなる試料を容易に得ることができる。この試料に対して熱処理により永久形状と一時形状を与えると、異Tg領域ごとに異なる温度で形状回復する。つまり、多数の一時形状を簡便な方法で自在に作り出すことが可能で、形状回復温度も制御できる。さらに、架橋の可逆性により永久形状も書き換え可能でもあり、PFS/Mは顕著な特徴を有する形状記憶ポリマーであるということができる。 PFSのモノマーに1,4-ブタンジオールを加えた共重合体P(FS-co-BS)も、ビスマレイミドで可逆架橋することにより、硬いプラスチックから柔軟なエラストマーまで、様々な機械特性を有する材料となる。この場合も、一部の架橋体は自己修復性を示した。修復性は溶媒及び熱を用いると向上することも確認した。 さらに、可逆架橋性を有する新たなフランポリマーを得るために、2,5-ジメチルヒドロキシフランのポリエーテル化も試みたが、現在までのところ目的とする重合体を得るには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、本年度は易解体性と修復性以外の機能性の検討は予備的段階に留める予定であったが、PFS/Mが特異的な多形状記憶性を有することが明らかとなったため、前倒しで詳細な検討まで行った。また、PFS/Mの修復性の傾向を踏まえて、柔軟なモノマーの添加効果を見るために、PFSに1,4-ブタンジオールを加えたP(FS-co-BS)の検討も前倒しで行った。このため、未検討のモノマーを残してしまったが、PFS、P(FS-co-BS)に関して多くの知見が得られており、これに基づいて来年度にはモノマーを厳選して検討を進めることができるため、全体的には研究は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、PFSやP(FS-co-BS)での詳細検討結果を踏まえて、未検討モノマーの中から重点的に検討すべきモノマーを厳選して、重合特性や機能性の検討を進める。修復性についても、多数の試料間で比較して得られた知見から、材料表面への官能基の遍在性が修復性と関連しているとの感触を得ているため、この点も検討する。また、本年度の研究を進める中で、フランポリマーを長期にわたって保管した場合、硬くてもろくなるという感触を得ている。材料性能として長期安定性は最優先事項の一つであるため、来年度は劣化の詳細を明らかにし、長期安定性付与のための方策を検討することを追加の検討課題とする。
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Research Products
(13 results)