2014 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスを原料とする高機能性プラスチックの開発
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25288080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉江 尚子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20224678)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオベースポリマー / フランポリマー / 可逆架橋 / 自己修復 / 形状記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、可逆架橋を利用して、木質バイオマスの化学変換により得られるジヒドロキシメチルフランを主原料とする実用的な材料を開発することを目指している。本年は、まず、対象とするポリマーの経年劣化について検討した。長期保管したポリ(フランジメチレンサクシネート)[PFS]とそのビスマレイミド架橋体[PFS/M]について分析した結果、高温熱処理を施した試料において、材料としての硬化と、フラン部位の一部に化学変化(フランの開環と架橋)が認められた。しかし、詳細な検討から調製段階で高温熱処理を避けること、及び、F/M比を1に近づけることにより、劣化は防げることが明らかとなった。 次に、PFS/Mの修復メカニズムの解明を目指して、赤外分光分析、接触角測定などを行いて表面分子構造解析を行ったが、高修復性を示す表面と非修復性表面間に差異を観測することはできなかった。破壊による化学変化は、破断表面のごく表層に存在する微量の分子にしか及ばないため、観測できなかったものと考えられる。 さらに、木質バイオマス由来フラン化合物を原料とする新規ポリエステルとして、FSとプロパンサクシネートの共重合体(P(FS-co-PS))を合成した。前年度に実施したFSとブチレンサクシネートの共重合体(P(FS-co-BS))と比較したところ、FS含率50 mol%の共重合体において強度とタフネスの向上が認められた。また、修復性に関しては、室温自発修復、または、40℃以下の生物的に有用な温度域での修復において、これまでの修復性ポリマー材料の報告例と比較して、良好な特性回復が達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
修復性に対する可逆反応の寄与の直接観測にチャレンジしたが、有用な結果を得るには至らなかった。一方で、PFS系の劣化機構とその防止策を明らかにすることができた。また、新規ポリエステルとして合成したP(FS-co-PS)の架橋体が機械特性と修復性に優れることを明らかにすることもできた。今後、共重合組成やビスマレイミド構造などの最適化を進めることにより、従来報告されたポリマーを凌駕する高修復性ポリマーへ発展させることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
P(FS-co-PS)については、ガラス転移温度を一つの基準温度として、修復性の温度依存性の検討を進め、修復性と機械特性の両立した材料開発へとつなげる。この際、試料の調製法については、本年度、明らかにした劣化防止策に基づいて行う。また、修復性に対する可逆反応の寄与を直接観測することは、修復機構を考える上で重要であるが、PFS系に限らず、いずれの修復性ポリマーでも報告されていないため、今後もあきらめずに方法の模索を続けたい。
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Research Products
(14 results)