2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗体の分子認識能を活用した新規協奏機能超分子触媒の創製
Project/Area Number |
25288082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / 遷移金属錯体 / 触媒 / カップリング反応 / 立体選択的 / 不斉触媒 / パラジウム触媒 / ビナフチル基 |
Research Abstract |
優れた分子認識能を有するテーラーメイドの生体ホスト分子「抗体」の結合部位に有機金属錯体を導入することによる機能制御触媒の開発を目的に、生体分子と人工分子との融合を試みた。平成25年度は下記の2つの実験系を実施した。 (i) ビナフトール誘導体は軸不斉有機化合物であり、S体とR体が存在する。本研究ではそれぞれの光学異性体に結合するモノクローナル抗体の作製を検討した。S体またはR体をキャリアタンパク質に導入した光学活性抗原、またはS体とR体の混合物(ラセミ体)を用いた抗原を合成し、それぞれマウスに免疫した。マウス血中のビナフトール誘導体に結合する抗体産生量を酵素標識抗体測定法(ELISA)により評価した。その結果、S体免疫マウスからはS体結合抗体が、R体免疫マウスからはR体に強く結合する抗体がそれぞれマウス体内で生産されていることが確かめられた。一方、ラセミ体を免疫したマウスではS体とR体に同程度結合する抗体が得られた。これらの結果は免疫プロセスにおいて抗原決定基の純度が抗体の特異性を決定する因子になることを示していると考えられる。今後の機能性不斉触媒創製における材料調整法として有益な知見が得られた。 (ii) 炭素-炭素結合形成反応の触媒となるパラジウム錯体を特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するために、パラジウム錯体を免疫用抗原決定基として合成し、これをキャリアタンパク質に固定した抗原をマウスに免疫した。しかし免疫マウスの血液中には目的の抗体がさんせいされていないことがELISAの結果、判明した。そこでパラジウム錯体からロジウム錯体に変更し、免疫を行ったところ、確実にマウス体内で目的の金属錯体に結合する抗体が産生されていることが確認できた。今後、得られた抗体にパラジウム錯体を添加し、その結合力を評価できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パラジウム錯体を抗原決定基としてマウスに免疫する当初の実験法では目的の抗体が得られなかったが、水中でも安定なロジウム錯体を代用することで、免疫したマウスの体内で目的の抗体が産生されていることを確認できた。また、不斉触媒となる抗体を作製するための抗原としてビナフチル基含有化合物を誘導体を用い、免疫した結果、ビナフチル基の光学活性を識別する抗体を得ることができた。さらに、このビナフチル基がそれぞれS体のみ、R体のみの抗原分子を用いると、それぞれの光学異性体を見分ける特異的な抗体を効率良く得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したモノクローナル抗体と種々の有機金属錯体との親和性をELISAやバイオセンサー(表面プラズモン共鳴を検出原理とするセンサー)により評価する。続いて各抗体と遷移金属錯体の複合体の触媒能を評価する。抗体と有機金属錯体の複合体存在下、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを基質として、水中での開環メタセシス重合を行う。ノルボルネン誘導体をモノマー(基質)として用いる。反応追跡をMALDI-TOF質量分析、NMRおよびGPC測定により行い、生成したポリマーの分子量、重合度、分子量分布に関する情報とともに立体規則性に関する知見を得る。金属錯体の配位子に水溶性を高める必要が生じた場合、ホスフィン配位子の一部に解離基を導入して本触媒の水への溶解度を高める。BINAPを配位子とするRuやRh錯体と抗体との複合体を形成させた後、基質を水素あるいは一酸化炭素と水素を加圧条件下で添加することにより基質の水素化反応やヒドロホルミル化反応を行い、抗体の結合効果を比較・検討する。抗体の非存在下と存在下においてそれぞれ得られる生成物の収率、立体選択性、光学活性をGC、HPLCによりモニターする。さらに同一の配位子を有するPd錯体を添加して複合体を形成させ、上記触媒反応の他、炭素-炭素結合形成反応(Heck反応)における触媒能、立体選択性を調査する。これらの結果を総合して、金属錯体に抗体が結合することによる第二配位圏の効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、パラジウム錯体に結合するモノクローナル抗体の作製において、本年度は抗原決定基合成からマウスへの免疫、細胞融合を経てモノクローン化を行い、量産体制に移行するまでを計画していた。しかし、マウスの血中抗体価が予想と異なる挙動を示したために、抗原分子を工夫し、金属種、錯体を変更しながらの実験となった。そのため、抗体の量産は平成26年度に実施することになった。さらにその抗体の量産後に、種々のキャラクタリゼーションを行う必要があるため。 モノクローン化した抗体産生細胞を中空糸膜型細胞培養液循環装置に注入し、モノクローナル抗体を量産する。抗体と種々の有機金属錯体との親和性をELISAやバイオセンサー(表面プラズモン共鳴を検出原理とするセンサー)により評価する。続いて各抗体と遷移金属錯体の複合体の触媒能を評価する。
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Research Products
(6 results)