2013 Fiscal Year Annual Research Report
光増感色素の凝集/吸着制御による色素増感太陽電池の高効率化
Project/Area Number |
25288085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
播磨 裕 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20156524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今榮 一郎 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293399)
駒口 健治 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291483)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高効率色素増感太陽電池 |
Research Abstract |
チタニア上での色素分子の凝集挙動を調査する初年度の研究では,市販の,あるいは既に合成済みの試料(TEMPO-Dye)を使用したが,スピンプローブとして設計・合成したTEMPO-Dye分子は可視領域での光吸収が弱く,光増感色素としてあまり優れていないものであった。そこで,π電子系を拡張して可視光領域での光吸収を可能とし,アクセプター兼アンカー部にシアノアクリル基を有する新規スピンプローブ分子を合成し,スピンプローブESR法による最隣接分子間距離の測定を基にしてチタニア上での凝集挙動を調査した。さらに,新規スピンプローブ分子を用いて色素増感太陽電池を作製し,最隣接分子間距離と電子注入効率との関係を計測することによって色素凝集が太陽電池特性に与える影響を調査した。 ピリジン色素が配位結合でルイス酸サイトに,カルボキシル基をアンカー部とすると色素がブレンステッド酸サイトに結合するならば,これらアンカー部の異なる2種類の色素をチタニア表面に同時に吸着させることが可能となる。互いに光吸収帯の異なる色素を共吸着させることによって色素増感太陽電池の太陽光捕集能は加算的に増加し,短絡光電流の増加によるエネルギー変換効率の向上が期待できる。このような発想のもとで,従来型の色素分子(アンカー部はカルボキシル基あるいはシアノアクリル基)の光吸収帯を補足する吸収領域のピリジン色素を設計・合成し,チタニア表面への2種類の色素の共吸着による高効率化の可能性を検討した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
π電子系を拡張して可視光領域での光吸収を可能とし,アクセプター兼アンカー部にシアノアクリル基を有する新規スピンプローブ分子(FBT)の合成に成功した。スピンプローブESR法による最隣接分子間距離の測定を基にしてチタニア上でのFBT分子の凝集挙動を調査した。その結果,単独吸着では凝集挙動が見られたが,コール酸との共吸着では凝集が緩和されることを見出した。さらに,新規スピンプローブ分子FBTを用いて色素増感太陽電池を作製し,単独吸着および共吸着時での電子注入効率を計測し,凝集と電子注入効率との関係を調査した。当初の予想通り,同じ吸着量でも共吸着の場合には単独吸着の場合に比べて電子注入効率が大きいことを見出した。さらに,電子注入効率とFBT分子の最隣接分子間距離との関係を調査し,色素凝集が太陽電池特性に与える影響を明らかにした。 ピリジル基をアンカー部とする有機色素NI4の吸着等温線を測定した。得られた吸着等温線はLangmuir型であり,等温線の解析からチタニア上でのNI4分子の最大吸着数や吸着エネルギーを評価した。チタニアに吸着した有機色素NI4のFT-IR測定より,NI4はチタニア上のLewis酸点に吸着していることを明らかにした。この結果は,カルボキシル基をアンカーとする類似色素分子NI2がBrønsted酸点に吸着するのとは対照的であった。チタニアに対してTPD(昇温脱離法)を適用することにより,吸着サイトの種類(Brønsted酸点とLewis酸点)と数を計測し,吸着等温線から得られた結果の合理性を確認しつことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
スピンプローブESR法を用いることによって,チタニア表面に吸着した色素分子の凝集挙動を明らかにすることに成功した。コール酸の添加によって色素分子の凝集が緩和されることは従来の予測を裏付けるものであり重要な知見である。コール酸を用いることなく,色素分子そのものを修飾することによって凝集緩和を達成し,高い電子注入効率を得るために,FBT分子を嵩高い置換基で修飾することが考えられる。置換基の効果を最隣接分子間距離の測定から可視化すると同時に,最適置換基の分子設計に役立てることを目途に,嵩高い置換基で修飾された光増感色素分子にTEMPOを導入・合成する。 ピリジン色素が配位結合でルイス酸サイトに,カルボキシル基をアンカー部とすると色素がブレンステッド酸サイトに結合するならば,これらアンカー部の異なる2種類の色素をチタニア表面に同時に吸着させることが可能となる。互いに光吸収帯の異なる色素を共吸着させることによって色素増感太陽電池の太陽光捕集能は加算的に増加し,短絡光電流の増加によるエネルギー変換効率の向上が期待できる。このような発想のもとで,従来型の色素分子(アンカー部はカルボキシル基あるいはシアノアクリル基)の光吸収帯を補足する吸収領域のピリジン色素を設計・合成し,チタニア表面への2種類の色素の共吸着による高効率化の可能性を検討する。
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