2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様な流動・変形履歴による二軸配向非晶フィルムの配向結晶化挙動に関する基礎解析
Project/Area Number |
25288097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鞠谷 雄士 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70153046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅本 晋 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90168758)
宝田 亘 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (50467031)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶化速度 / 分子配向 / 配向結晶化 / 収縮 / 配向緩和 |
Research Abstract |
超高速DSC装置を導入し、配向度の異なるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維について超高速昇温下での結晶化挙動について測定を行った。 その結果、配向したPET試料をガラス転移温度(約70℃)に加熱すると長さが短くなる収縮現象が観測された。配向したポリマー試料をガラス転移以上に加熱すると収縮が怒ることは非常によく知られた現象ではあるが、この収縮現象について超高速昇温下で観測された例はこれまでになく、その速度についても殆ど検討されたことはなかった。今回の実験結果は昇温に伴う収縮現象が極めて速い速度で進行することを示している。このような収縮は分子鎖の配向緩和がその主要因と考えられているが、ガラス転移付近における分子の緩和時間はそれほど早いとは考えられておらず、分子運動論的にも非常に興味深い発見と考えられる。 その一方で、サンプルが加熱に伴い変形してしまうことは、変形に伴いサンプルが動いてしまうなど、結晶化挙動を正確に測定する上で障害となることも明らかとなった。このため、PETを他のポリマーと組み合わせ、複合繊維とすることで加熱時の変形を抑制することを試みた。その結果、PETとポリプロピレンを複合化することにより、加熱時の変形を大幅に抑制できることを見いだした。 超高速昇温時でも変形が生じるとことは、超高速昇温過程において分子配向の変化が生じていることを示唆するものであり、形態の固定無くしては配向度と結晶化速度の関係を正確に把握することは不可能だと考えられる。今回、変形を抑制する方向性を見いだせた事は今後の研究推進にあたり非常に有意義であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超高速DSC装置の導入と立ち上げに関しては計画通り実施することができたが、その過程において、超高速昇温下においても配向試料については変形の影響が無視できないことが明らかとなった。この変形については研究開始前には想定しておらず、その変形を抑制する方法の探索に時間を要していることから、当初交付申請書に記載した目的に対する進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討において、昇温時の変形を抑制する手段として他の素材との複合化が有効であることが示されているので、さらに多種類の素材との複合化を検討し、超高速昇温下において変形を抑制しつつ、結晶化挙動が正確に測定出来る系を探索する。 その一方で、変形(収縮)現象に関する速度論的な検証もこれまでに行われたことの無い新しいテーマであり、サンプルの配向度と収縮の速度の関係などを測定し、収縮現象の速度論について、既存の分子運動論における各種緩和時間との関係を含め、理論的な考察を進める。
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