2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分子の水和と構造転移のダイナミクスに関する基礎的研究
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25288099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
前田 寧 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60242484)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子分光 / 1分子計測 / 表面・界面物性 / ナノ材料 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
(1) 重水素化温度応答性高分子の水和の解析 疎水性水和の本質を明らかにするために、アルキル基を部分的に重水素置換した温度応答性高分子を合成して、そのC-D伸縮バンド(ν(C-D))の相転移に伴う変化を精密に解析した。具体的には、アラニンまたはプロリンの重水素化メチルエステルから温度応答性高分子であるpoly(acryloyl-L-proline methyl-d3 ester, PAProMd3)またはpoly(acryloyl-L-alanine methyl-d3 ester, PAAlaMd3)を誘導し、H2OまたはD2O中で温度を変化させながら赤外およびラマンスペクトルを測定した。2050~2200cm-1に対称ν(C-D)バンドが1本と逆対称ν(C-D)バンドが2本観察され、相転移温度でそれぞれ低波数シフトすることが確認された。さらに、密度汎関数理論(DFT)を用いる振動解析により、エステル基への水素結合とC-H…O 水素結合のこの低波数シフトへの寄与を検証した。 (2) 探針増強ラマン分光装置の試作 単一高分子鎖の水和の解析を行うために、単一分子レベルのスペクトルの測定が可能な感度とナノメートルサイズの空間分解能を併せ持つ探針増強ラマン分光装置を試作した。島津製作所製の走査プローブ顕微鏡(SPM-9700)をベースに、試料面に対して45°の角度で長作動距離対物レンズを配置して、光ファイバーを通してラマン散乱光を分光器に導入し、電子冷却型CCD検出器で検出する構成とした。Z方向およびXY方向に走査しながらスペクトルを測定および解析するためのソフトウェアは新たに作成した。探針先端に蒸着した金または銀に誘起される表面プラズモンによるラマン散乱の増強と近接場効果を利用して単一分子レベルのラマンスペクトルの測定が可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画に近い内容で研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)位置特異的同位体ラベルポリマーの水和の解析 同位体ラベルしたモノマーから末端までの距離をコントロールした位置特異的同位体ラベルポリマーを用いて鎖上の位置と水和の関係を明らかにする。さらに、位置特異的同位体ラベルブロック共重合体を合成し、鎖上の位置と水和との関係を解析する。特に、異なる温度で脱水和が起こる二重温度応答性ブロック共重合体のミセル化とそれに続くゲル化などの高次構造形成の過程において、高分子鎖上の位置により脱水和の過程がどのように異なるかを明らかにする。 (2)ST-IRの試作と相転移ダイナミクスの解析 ダイヤモンドプリズムを使う全反射吸収(ATR)測定装置とストップトフロー装置を組み合わせて中赤外の領域の測定が可能なセルを試作してmsオーダーのダイナミクスを解析する。中赤外領域の測定により、ν(C-H)、アミド、エステル、エーテルバンドの解析が可能になり、アルキル基と親水基の脱水和を同時に解析することで、詳細な反応過程を知ることができる。さらに、位置特異的同位体ラベルポリマーを用いて、鎖上の位置と水和、脱水和の動的過程の関係を明らかにする。 (3)探針増強ラマン分光装置による単一高分子の水和の解析 試作した装置を用いて単一高分子鎖の表面増強ラマンスペクトルの測定を試みる。水和水と水和高分子のスペクトルを測定して水和数とラマンバンドの波数の関係を直接調べる。さらに、位置特異的同位体ラベル高分子および位置特異的同位体ラベルブロック共重合体の単一高分子のラマンスペクトルを測定し、単一分子の位置特異的な水和を解析する。 (4)まとめ これらの結果を統合して、さまざまな構造の温度応答性高分子の相図や混合溶媒中での挙動を統一的に説明することができるモデルと理論式の構築を試みる。
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Research Products
(7 results)