2013 Fiscal Year Annual Research Report
中温アルカリ形燃料電池用超水酸化物イオン導電体の開発
Project/Area Number |
25288106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水酸化物イオン導電体 / ピロリン酸スズ / 伝導機構 / キャラクタリゼーション / 電気化学デバイス |
Research Abstract |
Sn1-xSbxP2O7へのSb固溶限界は8mol%であり、導電率もそれに応じてこの濃度で最高値を示した。50℃加湿空気での導電率は100℃で0.08S cm-1、200℃で0.05S cm-1であったが、これらの値はさらなる加湿により増加した。同様な導電率のドーピング効果はその他の五価カチオンでも観察され、この際の導電率は(Sn0.92Sb0.08P2O7) > Sn0.92Nb0.08P2O7 > Sn0.92V0.08P2O7 > Sn0.92Ta0.08P2O7 > (SnP2O7)の順であった。ちなみに、SnP2O7へのCe4+やSi4+ドーピングは、導電率に影響しないか、もしくは低下をもたらした。その後の実験は、Sn0.92Sb0.08P2O7を用いて行われた。種々のキャラクタリゼーションの結果、固体内のSbが全て五価として存在しており、またOH基に帰属されるIR吸収帯強度がSbドーピング量とともに増加した。Sn0.92Sb0.08P2O7のより詳細な性質を調べるため、プロトン伝導性Sn0.9In0.1P2O7を対象物質とし、これらの特性を比較した。TPDからSn0.92Sb0.08P2O7の方が弱酸性で、強塩基性であることが判明した。水蒸気濃淡電池ではSn0.92Sb0.08P2O7とSn0.9In0.1P2O7で逆の極性が現れた。H/D同位体効果についてはSn0.9In0.1P2O7では全温度領域で確認されたが、Sn0.92Sb0.08P2O7ではほとんど観察されなかった。さらに、燃料電池の燃料極出口ガス分析から、Sn0.9In0.1P2O7では水蒸気分圧に変化がなかったが、Sn0.92Sb0.08P2O7では水蒸気分圧が電流とともに増加した。以上のことより、Sn0.92Sb0.08P2O7は水酸化物イオン導電体であると結論された。最後に、Sn0.92Sb0.08P2O7を電解質に使用した燃料電池特性を評価した。開回路電圧はどの温度でも900mV前後であったが、電圧降下は温度の上昇とともに小さくなった。その結果、最大出力密度は200℃で147mW cm-2に達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に見出したSn0.92Sb0.08P2O7は、水酸化物イオン伝導性を示し、燃料電池の電解質として中温領域まで機能することが判明した。また、イオン導電率も作動条件下で10-2 S cm-1以上の値であった。これらの結果は当初の目標をおおむね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
Sb5+ドープSnP2O7 を凌駕する新たな化合物を開発するため、さらに大きな六価のMo6+, W6+カチオンをSnP2O7 にドーピングする。各カチオンに対して、固溶限界までドーピングし、ドーパント量と電気導電率の関係を明確にする。六価カチオンでは、五価カチオンに比べ、同じドーパント量でも二倍量相当の水酸化物イオンがSnP2O7 に導入されが、逆に水酸化物イオンに対するクーロン力も強まる。従って、六価カチオンでは、固溶限界前に導電率が極大を示すと予想される。もしこれらの化合物がSb5+ドープSnP2O7 よりも高導電率を示さなかった場合、母体となるSnP2O7 をSiP2O7, TiP2O7, ZrP2O7 またはCeP2O7 に代用し、同様な高原子価カチオンによるドーピング操作を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の研究をH26年度に行う必要が生じたため、その必要分をH26年度に繰り越した。 H26年度は研究を遂行するにあたって消耗品が当初の計画よりも多く必要であるので、H25年度に繰り越した予算をその分に充てる。
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Research Products
(10 results)