2013 Fiscal Year Annual Research Report
不完全界面の高効率・高感度な超音波非破壊評価のためのガイド波非線形挙動の解明
Project/Area Number |
25289005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
琵琶 志朗 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 高弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324479)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 超音波 / 非破壊評価 / ガイド波 / 不完全界面 |
Research Abstract |
本研究では不完全界面の高効率・高感度な非破壊評価原理の確立のためのガイド波非線形挙動の解明を目的としている。25年度の取り組みでは主に以下の成果が得られた。 (1)応力-ひずみ非線形性を有する弾性板を伝わるガイド波(ラム波)による高調波発生挙動に関して、摂動法による理論解析および時間領域有限差分法による数値解析を行った。その結果、ガイド波の基本波周波数が位相整合条件を近似的に満たせば、有限な伝搬距離の範囲で高調波振幅が累積的に増大することを示した。また、有限体積法に基づく超音波伝搬解析コードを作成し、界面非線形性を考慮に入れた積層板におけるガイド波伝搬挙動の解析を行って、伝搬挙動に及ぼす界面特性の影響を明らかにした。 (2)レーザドップラー振動計のセンサ部を空間走査してガイド波伝搬波形を多点で計測するための測定システムを構築した。アルミニウム合金ブロックに対して表面波(レイリー波)の伝搬波形を収録し、スペクトル解析を行った結果、伝搬波形に含まれる基本波成分振幅は定量評価可能であり、ハイパスフィルタを用いることにより高調波振幅も十分なSN比で評価可能であることが確認できた。 (3)不完全界面を有する積層構造に斜角入射された超音波の反射・透過挙動の理論解析を行い、複合材料積層板を例として周波数、入射角および界面剛性の影響を明らかにした。また、水中で試験片に超音波を斜角入射し、二回透過波(試験片背後のミラーからの反射波)を計測する測定システムの構築を行い、複合材料積層板に適用して有効性を確認した。本システムを用いて不完全界面の界面剛性評価を今後検討する予定であり、その成果は不完全界面のモデル化に有用な情報を与えると期待される。また、積層構造における垂直入射超音波の非線形挙動を摂動法により解析し、位相整合条件の重要性など、ガイド波非線形挙動との類似性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究実施計画」に記載したように、当初の計画は(1)応力-ひずみ非線形性や界面非線形性を考慮した非線形超音波伝搬解析コードの開発とガイド波伝搬解析、(2)レーザドップラー振動計によるガイド波測定システムの構築と接着平板に対する適用、であった。このうち(1)に関しては、「研究実績の概要」で述べたように計画通り進展しており、(2)については、計画した測定システムの構築が基本的に完了した。また、当初計画した接着平板のガイド波に対する適用の代わりに、レイリー波伝搬に伴う高調波の振幅評価によりその有効性が確認できたため、所期の目標は達成しており、今後接着平板の評価を進める準備が整っている。このほか、積層構造における不完全界面の界面剛性評価のための検討として、斜角入射超音波の反射・透過挙動の理論解析と測定システムの構築、および垂直入射超音波の非線形挙動の理論解析を行った。また、次年度以降に計画している、平板における閉口き裂を模擬した不完全接合部における線形・非線形ラム波挙動に関しても予備的な理論解析を進めることができた。以上により、「研究の目的」に掲げた、不完全界面の高効率・高感度な非破壊評価原理確立のためのガイド波非線形挙動の解明に向け、研究は順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画では、構築した測定システムにより接着平板を伝わるガイド波伝搬挙動の実験的研究を進めて、接着状態による線形・非線形特性の違いを明らかにすることを試みる。また、数値解析を援用しながら測定条件を選定し、実験結果を定性的、定量的に検討する。なお、レーザドップラー振動計による測定法は、ガイド波の振動振幅やビームの拡がりの定量評価に有効であるが、圧電探触子とウェッジを用いる測定法の方が測定波形信号のSN比に優れることから、今後の研究では両方法を相補的に用いながらガイド波非線形挙動の評価を行う。また、疲労き裂を導入した平板試験片に負荷を与え、き裂の開閉口状態を変化させながら、き裂部におけるガイド波散乱(反射・透過)における線形・非線形挙動を実験的に調べることを試みる。このため、試験片に荷重をかけた状態でガイド波測定を行う方法を検討する。さらに、閉口き裂をスプリング界面としてモデル化し、き裂部における大振幅ガイド波の散乱挙動を解析し、実験結果の考察に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に、平板試験片を負荷した状態でのガイド波計測を行うことを計画しており、比較的多めの研究費を測定系構築のための物品費として残したことが次年度使用額発生の主な理由である。 次年度使用額および翌年度研究費を合わせた使用計画として、主として以下の内容を想定している。まず、25年度に構築したレーザドップラー振動計によるガイド波計測方法を、圧電探触子による測定方法と相補的に用いながら、接着平板の線形・非線形ガイド波伝搬挙動に及ぼす接着状態の影響を調べるため、種々の接着平板試験片の製作、圧電探触子センサなどの実験消耗品の購入に研究費を使用する。また、平板試験片を負荷した状態でガイド波計測を行うための測定系(負荷制御装置を含む)の構築、ならびに疲労き裂導入試験片製作に研究費を使用する。さらに、26年度にはいくつかの研究成果が対外発表できる状態になっているため、成果発表のための旅費、会議参加費(国際会議、国内講演会)の支出を計画している。
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Research Products
(6 results)