2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド構造創成技術による極低濃度ガス分子検出ナノメカニカルセンサの開発
Project/Area Number |
25289011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
割澤 伸一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20262321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70345081)
米谷 玲皇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90466780)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 連結ナノ機械振動子 / ハイブリッド構造 / 極低濃度ガスセンシング / 非線形振動特性 / グラフェン / 酸化スズ / 呼気ガス分析 / アセトン |
Research Abstract |
作製するナノ機械素子の特性を極低濃度ガス環境下で評価できる装置を設計・製作した. ナノ機械素子として両持梁振動子構造を採用し,これをシリコンあるいは酸化シリコンで構成し,その表面に酸化物半導体膜を塗布したハイブリッド構造の振動子を設計・試作した.初年度はppmオーダのガス検出が可能な寸法(長さ10~50um,幅2~5um,厚さ100~300nm)を設定した.酸化物半導体として酸化スズを採用し,これをMetal Organic Decomposition(MOD)法或いはスパッタ法で薄膜形成した.計測した一次の共振周波数は1~18MHzの範囲であった.このうち一次の共振周波数2.58MHzのサンプルについて真空度を0.025Paまで上げて1.93%の共振周波数増加を確認した.一方,MOD法で酸化スズ薄膜のI-V特性は確認されたものの,数百ppmのアセトンガスあるいはエタノールガスに暴露した際の電気特性変化は確認できなかった. 連結ナノ機械振動子として,2本の片持梁(幅0.27um,長さ3.86um)をもう1本の別の梁で結合する構造を集束イオンビームでSOI基板上にパターンニングして作製した.質量検出のために静電引力で2本の梁それぞれの共振周波数を調整できる機構を設け,その機能を実験により確認した.その実験結果から検出可能な質量は9.7agであると推定した. 剥離法で酸化シリコン基板に貼り付けたグラフェンに電極をパターニングしてセンシングエリアを2umとしたデバイスを作製しそのガス特性評価を実施した.アセトンガスの濃度変化に対するグラフェンの電流変化を評価した.10~200ppmの濃度範囲に対して0.1~0.8%の電流変化を検出した.また, FIB-CVD装置内でフェナントレンガスをグラフェンデバイスに対して暴露した結果,20~45ppmの範囲で0.2%の電流変化を検出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デバイス評価用チャンバの仕様を策定し,設計・製作を行い,極低濃度ガス環境下でナノ機械要素を駆動し,ガス濃度変化によってセンサの機械特性及び電気特性が計測できることを確認したため,この点において目標は達成できたと考えている. ナノ機械振動子の仕様策定を実施した.単一のナノ機械振動子両持梁構造に酸化スズを被膜させたハイブリッド構造の振動子の作製プロセスを検討し,試作・評価を実施した.ナノ機械振動子の機械的特性は所望の性能を満たしていることを確認したため,この目標においては達成できたと考えている.その一方で,このプロセスで被膜させた酸化スズ薄膜の電気特性,特にガス暴露時の電気特性が確認できなかった点は当初の目標を達成できなかった. 連結ナノ機械振動子として2本の片持梁を連結させた構造を設計し,試作・評価を実施した.連結振動子に特有の同位相モード,逆位相モードの共振特性を確認した.また,連結ナノ機械振動子をガス検出に適用するための重要な機能である共振特性調整機構を静電引力で実現できることを実験により確認した.そのため,この点において目標は達成できたと考えている. グラフェンを用いたガス検出デバイスに関しては,センシングエリアを2umで規定したデバイスを設計・試作した.このデバイスをアセトンあるいはフェナントレンのガスをppmオーダで暴露することによって電流値変化が得られることを確認した.そのため,当初の目標を達成できたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
両持梁ナノ機械振動子については,作製プロセス及び作製条件とその基本特性が確認できたため,本研究の最終目標であるppt~ppbレベルのガス検出に最適な寸法に微小化を図り実証した作製プロセスで試作と評価を加速させる.連結ナノ機械振動子を片持梁構造で試作しその機能検証で実績を得たため,両持梁構造について作製プロセスで形成されるアンダーカット現象を積極的に用いた両持梁のナノ機械振動子の試作も実施し,両者の間で相互評価を行う. 酸化スズ薄膜に関しては,その電気特性に機械振動子の作製プロセスで使用したRIEが影響を与えている可能性が実験で示唆されていること,MOD法で得た薄膜表面のナノ構造が実績のある他の方法と異なることがガス感度特性に影響を与えている可能性があること,ナノ機械振動子の微小化に伴い酸化スズ薄膜の検出面積がさらに制限されることなどを考慮して,振動子梁表面とハイブリッド構造とするのではなく個別に配置した構造を検討する.その場合であっても検出原理は当初予定とは変わらない. グラフェンガスセンシングデバイスにおいては,ppt~ppbレベルのガス検出に最適な構造を新たに検討し導入する予定である.また,ガスセンシングにおいてはガス分子の脱着速度が重要な評価項目となることから,この点も考慮した構造を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたより消耗品の使用量が少なかったため. 研究を加速し十分な実験結果を得るために必要となる消耗品に使用する.
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