2013 Fiscal Year Annual Research Report
交流アンペール式磁気浮上技術による管材・環材支持システムへの応用展開
Project/Area Number |
25289014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非磁性金属 / 渦電流 / アンペール力 / 管材 / 環材 |
Research Abstract |
非磁性金属薄板に対する浮上力発生方法として申請者らが提案してきた交流アンペール式磁気浮上技術を,これまでの円形薄板や方形薄板のみならず,管材(パイプ)・環材(リング)に適用することで新たな生産技術として応用展開することを目的としており,今年度はアルミ管材に対する浮上力生成状態について調査した。具体的には,アルミ管材用に特化した浮上力・アンペール力発生用固定子レールの設計と製作,有限要素法を用いた交流磁場解析による管内渦電流分布の可視化,交流誘導反発力および交流アンペール力の発生状態を確認し,交流アンペール力の重畳により誘導反発力のみの場合の約1.26倍の浮上力が得られた。 また,継続実施してきた方形薄板に対する交流アンペール力重畳実験では,新規知見として,アンペール力発生用電磁石からの磁束位相を調整することにより,本方式や従来方式(交流誘導浮上)において不可避なジュール熱に伴う浮上高低下を抑制・調整できる可能性を見出した。本来,アンペール力発生用電磁石の励磁位相は,薄板内部の渦電流位相に同期するよう電源側で初期設定され,浮上力の重畳と浮上高の維持・位置決めには,励磁電流振幅が利用できると考えていた。しかしながら浮上高低下時には,アンペール力発生用電磁石の励磁電流の増加に伴う銅損増加が避けられない。新知見では,アンペール力発生用電磁石の励磁電流と磁束位相はある関係性を持って変化しており,励磁電流の減少に伴う磁束位相遅れの進展と,薄板内部渦電流との外積によるアンペール力(すなわち浮上高)の増加という連動性を確認した。この結果は,対象物が管材,環材のときにも有用であり,特に非磁性金属環材の懸垂浮上力制御に向けた重要な知見であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的における前年度の予定は,交流アンペール式を用いたパイプ状非磁性金属の磁気浮上技術の確立と,交流アンペール式を最大限に利用したリング状非磁性金属の浮上安定化の2件であった。このうち前者のパイプ材に対する交流アンペール式磁気浮上装置の設計・製作,有限要素法解析による渦電流路の可視化と効果的なアンペール力生成法の解明についてはほぼ終了している。 これとは別に,研究実績で記載した新たな知見(磁束位相調整による浮上高低下の抑制)は,パイプ材に対してさらに効果的なアンペール力生成法として期待される。パイプ材(曲面)では,パイプの中心軸に対し放射状に固定子磁極が分布配置されるため,電磁石の励磁電流は,磁極位置(設置角度)に基づいて適切な励磁位相に調整することで,誘導反発力とアンペール力をともに最大限利用できることになる。このような観点を含め,パイプ材に対する浮上力発生実験,アンペール力付与実験,浮上高低下抑制について早急に実施する必要がある。 リング状非磁性金属の浮上安定化については着手できていない。当初の実施内容として,リング材に対する渦電流発生用およびアンペール力発生用の各電磁石の設計と装置製作,浮上実験,励磁方法の検討が挙げられていた。交流アンペール式を最大限に利用するための一手法として前述の知見は,渦電流路が限定されるリング材にも対応可能であると考えられる。予定の遅れは生じているものの,新たな知見を踏まえた上での装置設計・製作が可能となったと前向きに捉えたい。以上より,前年度達成度はやや遅れていると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度前期では,リング状非磁性金属の浮上安定化を実現するために,浮上力,アンペール力を金属体に最大限付与できる電磁石固定子の構成を導き出す。この段階では,浮上力発生用電磁石は浮上体下部に設置し,アンペール力生成用電磁石はリング材の側部に配置し,浮上体上部には何も配置しない。交流アンペール式磁気浮上に関する過去の研究成果から,浮上体下部からの励磁による誘導反発力がアンペール力より支配的となることが十分に予想される。そこで浮上力発生用電磁石を出来るだけリング材の内部渦電流発生用に特化させることを目指しつつ,アンペール力のみによる懸垂支持の可能性調査へと展開する。また,十分なアンペール力を得るための励磁条件や励磁方法(波形成形)についても比較検討し最適条件を導き出す。前年度予定のパイプ状非磁性金属に対する浮上力発生実験,アンペール力付与実験,浮上高低下抑制についても本年度前期で並行実施する。 本年度後期では,浮上体となるリング材の非接触懸垂支持(懸垂浮上)の可能性を検討する。非接触安定化には浮上体の位置センシングと制御用周辺装置が必要となる。また,アンペール力の能動制御には,励磁電流振幅だけでなく前年度の知見に基づいた励磁位相調整法が期待できる。電磁石固定子への電気的な入力方法を検討しながら浮上方向の安定化を図る。一方,リング材の水平方向安定性については,新たな制御電磁石は設置せず,誘導反発特有の受動安定状態を確立すべく電磁界解析,装置設計を行う。
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