2014 Fiscal Year Annual Research Report
交流アンペール式磁気浮上技術による管材・環材支持システムへの応用展開
Project/Area Number |
25289014
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非磁性金属 / 渦電流 / アンペール力 / 管材 / 環材 |
Outline of Annual Research Achievements |
非磁性金属薄板に対する浮上力発生方法として申請者らが提案してきた交流アンペール式磁気浮上技術を,管材(パイプ)・環材(リング)に適用することで新たな生産技術として応用展開することを目的としている。H26年度はアルミ管材に対する浮上力生成状態についてFEM解析と実機による浮上試験により調査した。浮上力・アンペール力発生用固定子レールを計5本使用し,45度おきに放射状に磁極を配すことで,直径100 mm,肉厚2 mmのアルミ管材(長さ243 mm)をギャップ5 mm以上での浮上に成功した。FEM解析では,主として誘導反発力に寄与する下方3本の固定子レールと,主としてアンペール力に寄与する左右2本の固定子レールへの励磁電流振幅の割合を変化させ,ギャップ5 mmで自重と釣り合う浮上力が生成されるときのアルミ管材で生じるジュール損を計算した。薄板と管材での構造上の大きな違いは,左右2本の固定子レールからも誘導反発力が生じる点であり,これに伴う発熱の増大が懸念された。しかし解析結果からは,励磁電流振幅値の割合を調整すれば,発熱の原因となるジュール損が極小値を得,アンペール力を良好に追加できることが分かった。 アルミ環材(リング材)に対する懸垂浮上の可能性調査として,DVDと同直径(120 mm)で厚さ2 mmのアルミ環材を固定子の下に配置した場合のFEM解析を行い,誘導反発力以上のアンペール力が浮上方向に発生することを確認した。また,実機として2種類の構造変化を許容した固定子およびコイル(平面コイルによる渦電流生成型,6極コイルによる渦電流生成型)を製作した。平面コイルによる渦電流生成を利用した装置に対しアンペール力の発生状態をテストしている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H26年度当初予定として,円筒アルミ管材に対する交流アンペール式磁気浮上では浮上力発生試験とともに浮上力低下の抑制(管材でのジュール熱抑制)があった。これに対し,固定子レールに印加する励磁電流の振幅値割合を調整することで,管材内のジュール損が極小となる条件があることを解析的に明らかにした。このことはアルミ管材の場合も薄板同様に交流アンペール力による磁気浮上方法が有効であることを示す重要な結果である。浮上実験も随時進行中であり解析結果同様の実験結果が徐々に得られている。さらに固定子磁極の極性を種々変更し,浮上に必要な注入電力の最適化を図る予定であり,今後も継続して管材用実験機による性能評価を行う。 アルミ環材に対する交流アンペール式磁気浮上については,環材の懸垂浮上を念頭に置いたFEM解析や装置設計・実機製作を実施したものの,現状では所望の浮上力結果が得られていない。現状において平面コイルによる渦電流生成を利用した装置構成でアンペール力生成実験を重ねており,引き続きアルミ環材の自重を支持できるアンペール力の生成を目指す。また実機は6極コイルによる渦電流生成を利用した装置構成にも変更可能であることから,同様にアンペール力生成実験を行い前者の構成との比較評価を行う必要がある。当初予定では所望のアンペール力が得られ,懸垂浮上に向けたパラメータ導出等が予定されていた。非接触での懸垂浮上に必要となる周辺装置(センサや制御用DSP等)を準備したが,所望のアンペール力が得られておらず,製作した装置に対し解析,実験の両面から磁気回路や励磁方法等を工夫している段階である。なお,センサ,DSPは,現在は計測用および信号発生用として使用している。以上より,現在までの達成度はやや遅れていると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目は大別して,①交流アンペール式浮上力発生方法を用いたパイプ状非磁性金属の磁気浮上技術の確立,②交流アンペール式の浮上力増補効果を最大限に利用したリング状非磁性金属の懸垂支持,③リング状非磁性金属の懸垂浮上と制御技術,④非磁性金属フレームに対する磁気力生成法の確立,の4つである。このうち項目②および項目③の進捗が鈍い状態にある。アルミ環材が上から引き上げられる状態が確立されれば,鉄板が電磁石の磁力によって吸引浮上されるのと同様に扱われることとなり産業利用価値が格段に高まる。H27年度前半に速やかに項目②を実現し,前年度に準備した浮上制御環境のもとで項目③の非接触浮上状態の確立を目指す。項目②の実現に向けた取り組みとして,実験機(2種類の構造:平面コイルによる渦電流生成を利用した装置構成,6極コイルによる渦電流生成を利用した装置構成)に対し,磁気回路や励磁方法を検討しながら浮上力生成実験を行う。また,項目③では,まず浮上制御に必要なパラメータ(浮上位置と励磁電流振幅,位相条件の関係等)を測定する。さらに,パラメータをもとに浮上制御環境を実験装置用に整備し,制御方向を上下方向のみに限定して能動的な制御実験を行う。 項目④については,H27年度前半で,非磁性金属フレーム用の電磁力生成装置を設計,製作を行い,後半で,縦置きかつ一部接触を有する状態で斜め方向に磁束を与える方法を試みる。項目④はこれまでの項目とは異なり,対象物の自重の全てを支持する必要はない。また,使用する電磁石は原理上,汎用U字コアで成り立つものと思われ,実現されれば生産工程に最も導入しやすい事例となる。非磁性金属フレームに交流アンペール力を作用させることで,立て掛けてあるフレームを起こすという観点で研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
4つの研究項目のうち,項目②および項目③の進捗が当初計画からやや遅れている状況にある。そのため研究成果が定常的に得られない期間があった。 円筒アルミ管材に対する交流アンペール式磁気浮上については研究が順調に推移しており成果報告を行えている。一方,アルミ環材に対する交流アンペール式磁気浮上はFEM解析と実機製作,アンペール力生成実験に基づく研究成果が徐々に出だした段階にある。これを受けて設備備品(センサ,制御用DSP)の購入を行い浮上実験に移行できるよう周辺装置を準備した。また,研究過程で得られたデータの整理等に人件費・謝金を支出計上した。研究成果が得られた時期に遅れを生じたことで,H26年度予算のうち,研究成果発表が同様に遅れ方向にスライドしている。以上より,研究成果発表に伴う旅費未使用分として次年度使用額(約20万円)が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表として,既に国際会議1件(ICEE),国内会議1件(SEAD)にエントリーしており,次年度使用額はこれらの国際・国内旅費で使用することが決まっている。最終の研究成果報告に向け,研究進捗を加速し予算執行に遅れを生じないよう,着実に本研究を遂行する。
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