2014 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ・ナノ科学による金属級シリコン原料から高品質ナノワイヤシリコンの直接創成
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25289016
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大参 宏昌 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00335382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安武 潔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80166503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シリコン / ナノワイヤ / プラズマ / 精製プロセス / ナノマイクロ加工 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで代表者が開発してきた高密度・高圧水素プラズマによる独自の薄膜形成法(APECT法)を発展させ、エネルギー・資源を多消費する従来の精製法や成膜プロセス(例:CVD法)を経ず、廉価な金属級Si(MG-Si)原料から高品質NW-Siを形成する技術の確立を目的としている。 昨年度の結果を踏まえ、本年度は、 APECT法によるプラズマ内部でのNW-Siの成長条件の確立、新たに作製したリモート型電極の採用によるNW-Si形成の高速化の検討、さらにはウェット法を用いたNW-Si形成条件の検討を行った。プラズマ内部でのNW-Siの成長を実現するため、金属触媒の元素の違いによりNW-Siが呈する成長様式の違いに着眼し、これまで用いてきたAuに代えて、Al触媒を用いたNW-Siの成長を試みた。前者は、成長時に気(Vapour)-液(Liquid)-固相(Solid)を経るVLS成長を呈し、後者は成長温度を適宜選択することにより液相を経ない気相-固相-固相(VSS)成長を実現できる。その結果、Alを用いてVSS成長を誘起した場合、Au触媒では確認できなかったプラズマ内でのNW-Si成長が実現され、APECT法によるNW-Si成長では用いる触媒の種類が重要であることが明らかとなった。これは、VLSモードを呈する触媒を用いた場合、先端に存在する液相触媒中へ原子状水素が過剰溶解し、触媒粒子が蒸発・破壊されるためと推察される。また新たに作製したリモート型電極および加熱機構を用いて、NW-Si成長に成功した。本手法によれば、SiH4+H2を用いた熱CVD、H2+SiH4を用いたリモートプラズマCVDに比較してNW-Siの成長が大幅に促進されており、本手法の有効性が実証できた。またウェットプロセスを用いたNW-Siの成長条件を確立し、成長条件と形成NW-Siの形状の相関を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、廉価な金属級Siを原料に用い、高純度・高品質なナノワイヤSi薄膜(NW-Si)の形成を可能にするプロセスの開発を目指している。本年度の目標として、APECT法によるNW-Siのプラズマ内での成長条件の確立と、その成長速度の高速化を実現すること、さらにはNW-Siによる金属除去機能の探索のため、ウェットプロセスによるナノ構造Siの作製条件の確立を開始することを設定していた。前者に関しては新たに開発したリモート電極を用いて昨年度に比較して高速化が実現され、また非常に反応性の高いプラズマ中でも金属触媒を適切に選択することでNW-Siの成長が可能であり、その理由についても解明できている。さらには、研究の過程で当初予期せぬ成長手法が明らかとなっている。一方、後者に関しては、ウェットプロセスによるNW-Siの形成条件は、概ね明らかとなっているが、形成されたNW-Siからの不純物除去プロセスの検討が残されているため、若干の遅れがあると言えるが、全体として俯瞰した場合、ほぼ予定どおりに遂行できていると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、高密度・高圧水素プラズマによる独自の薄膜形成法により、エネルギー・資源的な無駄の多い従来の精製法や成膜プロセスを経ずに、廉価な金属級Si(MG-Si)原料から高品質NW-Siを廉価に形成する技術を確立するため、今後は、① NW-Siを利用したMG-Si精製技術の原理実証、さらには②APECT法で得られるNW-Siの配向制御法の検討と物性評価を主眼においた研究を推進する。 具体的には、項目①に関し、本年度確立したウェットプロセスによるNW-Siを利用し、そのナノサイズ物質からのBやPなどの水素化揮発性不純物の除去プロセスの確立を目指す。例えば、真空中、ならびに水素雰囲気中での熱脱離、水素プラズマ処理による方法、プラズマ酸化を利用した手法、さらにはウェットプロセスによる手法などを試み、BおよびP濃度の変化を調査する。これによりNW-Siの直径と除去処理後のSi中不純物濃度をバルクSi中のものと比較し、ナノサイズ化の効果が出現する領域を検証する。またAPECT法を用いてプラズマ中、およびリモート型電極を用いてMG-Si原料からNW-Si膜を作製し、NW-Si膜への不純物輸送特性を評価する。何れの場合も、水素化法にて除去しにくいB、およびP不純物の輸送特性の把握に力点を置く。この目的のため、B、P濃度が既知のSiウエハを原料に用い、その輸送挙動を定量的に明らかにする。 項目②に関しては、NW-Si形成における形成プロセスが配向に与える影響を詳細に調べるともに、リモート型においては外部電場などの付加的な場を印加する手法についても試み、その影響を明らかにする。また得られたNW-Siの物性は、MG-Si原料からAPECT法で得られるNW-Siに限らず、その物性が未知な状態のため、透過電子顕微鏡、未結合手密度、光吸収、分光感度などの手法により、その特性を調査し明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新たに導入したサンプル加熱機構の製作が当初予算を下回ったこと、さらに本年度はNW-Siの高速成長・プラズマ内成長条件の解明、さらには新たに発見されたNW-Si成長手法などの確立に力点を置き、ナノ構造Siからの不純物除去プロセスの検討において、その昇温除去プロセスの最適設計を後回しにした結果、これと連動させて行う予定であった不純物分析を平成27年度に実施時期を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の研究方策に記載した通り、① APECT法によるNW-Siの垂直配向成長条件の検討、および②NW-Siを利用したMG-Si精製技術の原理実証を主眼においた研究を推進する。そのなかで上記の次年度使用額は、先送りした計画であるSiナノ構造体における不純物の除去挙動を把握するため、除去プロセス実施後のSiサンプル中の不純物濃度測定の評価に使用する。また、実験データの確度を高めるため測定サンプル数を可能な限り増やし、輸送特性の詳細解明に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)