2013 Fiscal Year Annual Research Report
硝子体手術下の眼球内水流動による網膜変性機序の解明と新手術法の提案
Project/Area Number |
25289026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
榊原 潤 明治大学, 理工学部, 准教授 (10292533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加治 優一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50361332)
大鹿 哲郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90194133)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 眼科学 / 硝子体手術 / PIV / 乱流 / 球殻内流れ / 噴流 / 自励振動 / せん断応力 |
Research Abstract |
当該年度は、硝子体腔を模したアクリル製球殻(以降、眼球モデルと称する)内に、灌流ポートおよび吸引ポートを模した金属製円管を挿入し、作動流体の水を環流ポートから注入すると共に吸引ポートから排出することで、硝子体手術における硝子体腔内流動を模擬した。眼球モデルはヒトの眼球の約4倍の直径(100mm)を有するものとした。潅流ポートおよび吸引ポートの内径はともに2mmとした。潅流ポートおよび吸引ポートの端部はモデル内壁に一致させ、それぞれの中心軸は内面に垂直で、互いに90°の角度をなすように設置した。蛍光粒子をトレーサ粒子として懸濁し、新規購入のPIV用Nd-YAGレーザおよびシリンドリカルレンズ光学系により形成したレーザシートを眼球モデル下部より照射した。レーザシートは灌流ポート、吸引ポートおよび眼球モデル中心を通るように設置した。これにより可視化されたトレーサ粒子を現有の高速カメラで撮影した。得られた粒子画像をPIV法により解析することで、レーザシート面における速度ベクトル分布を算出した。灌流ポートにおける管断面平均流速、管内径および動粘性係数に基づくレイノルズ数は69~243の範囲における6条件とした。 測定された平均速度分布に基づき、以下のことが明らかとなった。Re=69~112では噴流が吸入ポートに向かって曲がるが、Re=157~243において噴流は曲がることなく壁面に垂直に衝突した。また、Re=96において噴流の流動が時間的に変化することが確認されたことから、球殻内における自励振動の可能性が示唆された。眼球モデル内壁近傍における速度勾配から壁面に働くせん断応力を算出し、相似則に基づいて実際の手術において網膜に作用するせん断応力を推定した。推定されたせん断応力の最大値は、網膜剥離を起こすせん断応力として報告されている値と比較して1ケタ小さい値である一方、角膜内皮細胞のせん断応力に対する耐性と同程度であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、トモグラフィックPIVによる三次元速度計測システムの構築を目的としていたが、構築したトモグラフィックPIVの空間解像度が不十分であり、当初の予定通りには進まなかった。一方で、同時に開発した二次元速度計測システムは十分な空間解像度を有していたため、次年度に実施する予定としていた模型眼内部の速度分布測定とせん断応力測定を前倒しで実施することができた。そのため、全体としては研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初予定通り眼球モデル硝子体腔内の速度分布計測を継続すると共に、加速度付加実験の装置開発を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の価格が当初予定価格を下回ったため。 次年度の消耗品費に充当する。
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