2013 Fiscal Year Annual Research Report
多波長偏光を用いた非接触2次元サブミクロン粒径・数密度計測
Project/Area Number |
25289036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
荒木 幹也 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (70344926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 聖一 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (00154188)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粒径計測 / 偏光 / 非接触計測 / 微粒子 / サブミクロン |
Research Abstract |
本研究では,「非接触」かつ「2次元」の「サブミクロン」粒径計測法開発を目論む.電子顕微鏡のような採取計測では,「採取すること」によって微粒子の「粒径・組成」が変わり,さらに「時間履歴・空間分布」の貴重な情報が失われる.そこで,非接触計測法である「偏光比法」に着目する.その決定的な弱点であった「計測範囲の狭さ」を,多波長光源を用いることで解消した.これにより,「非接触」かつ「2次元」でサブミクロン粒子の「粒径」「数密度」を同時計測できる手法となると期待される. 平成25年度は,ポリスチレン標準粒子を用いた計測精度検証から着手した.さらにこの技術を実用場に適用するため,「層流拡散火炎中で生成するすす粒子」に着目し,その粒径計測セットアップを構築した.光源に,数種類の直線偏光レーザ光源を用いる.レーザ光偏波面を45 度傾けた状態でシート光を形成し,計測対象に入射する.散乱光撮影に,デジタルCCDカメラ2台を用いる.それぞれ,偏波面に垂直・平行成分の散乱光を取得する.光源波長を変化させながら計測を行い,多波長データを取得する.この1セットのデータから,各波長での偏光比空間分布を求め,各点での粒径・数密度を算出する.燃料にはブタンを用いた.燃料は,円形ノズルから上向きに噴出し,層流拡散火炎を形成する.この層流拡散火炎にレーザシートを入射し,すす粒子からの散乱光をカメラで取得する.すすの赤熱発光(輝炎)による広帯域波長のノイズが重畳するため,狭帯域バンドパスフィルタを設置した.得られた輝度情報から偏光比の空間分布を求め,すす粒子の粒径ならびに数密度の空間分布を算出した.予備実験の結果では,すす粒径は約30 nmであった.従来の報告よりも粒径が過小評価されている可能性があり,次年度,問題点の洗い出しならびに計測法改善を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では,平成25年度~平成26年度の研究実施計画に,以下の3点を掲げた.【計画1】石英セル中の標準粒子を用いた「計測精度検証」,【計画2】微粒子発生装置を用いた「実噴霧計測」,【計画3】拡散火炎から生成する「すす粒子の粒径計測」,の3点である.本研究では,実用場への応用として「すす粒子の粒径計測」が最終目標にある.交付申請書にも記載したように,火炎中のすす粒子は極めて困難な計測対象ではあるが,最終的に達成したい目標と考えている.交付申請書に掲げた【計画1】~【計画3】は,そこに至るステップである. 平成25年度の研究終了時点で,それぞれ以下の状況にある.【計画1】「計測精度検証」は完了,【計画2】「すす粒子計測」のメドが立ったため次ステップに移行,【計画3】「すす粒径計測」のためのセットアップ構築ならびに予備実験開始. 最終目標に到達するため,計画2の手順をスキップし,すす粒子の粒径計測を前倒しして開始した.予備実験の結果は「研究実績の概要」に示したように,従来の計測結果と比較し,粒径を過小評価している可能性がある.標準粒子では問題なく計測ができることから,「火炎」の存在による様々な問題が原因と考えられる.平成26年度は,問題点の洗い出しならびに計測法改善を行い,火炎中のすす粒子の粒径計測にメドをつけたいと考えている. 平成25年度終了時点で,【計画3】のステップに着手しており,データ取得も開始されている.平成26年度中に【計画3】のステップを完了することは十分に可能であると考えており,研究計画はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,その最終目標である「火炎中のすす粒子の粒径計測」に着手する段階まで進展しているものの,得られた初期データは,現実の粒子径とかい離している可能性がある.問題点として,【問題1】火炎によるすすの赤熱発光(輝炎),【問題2】カメラの感度直線性,【問題3】データ処理アルゴリズム,の3点があげられる. 【問題1】最大の問題は「火炎」の存在そのものである.火炎によりすす粒子は加熱され,放射による発光(輝炎)を呈する.広帯域波長におよぶ輝炎は,レーザによる散乱光に重畳し,計測にとってやっかいなノイズとなる.狭帯域バンドパスフィルターを用いて除去を試みたが,十分とは言えない可能性がある.次年度は,狭帯域フィルタのみならず,画像差分による輝炎信号の除去アルゴリズムを開発し,光学系のみならず,信号処理系側でもノイズ対策を実施する. 【問題2】カメラの感度直線性は当然ながら確認済みである.しかしながら,本研究で提案する「多波長偏光比法」では,散乱光強度の比が100倍程度もある信号を,高い精度で計測する必要がある.感度直線性の再検証(特に,輝度の低い信号領域での直線性)を実施し,本計測法に耐える計測精度を実現する. 【問題3】偏光比から粒径を判定するアルゴリズムは,常に改良を加え続けているが,多数の候補から「正しい粒径」を短い時間で抽出する手法の開発が遅れている.研究計画も後半に入ってくるため,迅速なデータ処理を行うことができるアルゴリズム開発を行い,研究推進に弾みをつけたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」は,平成25年度の「補助事業に要する経費」のおよそ1%であり,ほぼすべての配分額が研究経費として執行された状態にある.この「次年度使用額」は,年度末まで実施していた実験の消耗品費(燃料,試料ガス等)の一部であり,ほぼ計画通り実験が終了したため,わずかに残された経費である. 「次年度使用額」は,平成26年度の実験計画を遂行するための消耗品費(燃料,試料ガス等)として使用する計画である.
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Research Products
(1 results)