2014 Fiscal Year Annual Research Report
微細流路内沸騰における界面挙動と熱伝達特性の高精度把握・冷却能力評価方法の確立
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25289040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大田 治彦 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50150503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新本 康久 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30226352)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱工学 / 沸騰二相流 / 狭あい流路 / 高性能熱交換器 / 混合媒体 / 強制流動沸騰 / プール沸騰 |
Outline of Annual Research Achievements |
微細流路内強制流動沸騰時の熱伝達に関しては、データが散乱し、普遍的な知見が得られていない状況下で、高効率冷却システムへの適用を検証する。基本的な単一微細管を対象として実験を行い、コールドプレート内に微細管群を最適配列する方法を見出す。加熱部入口流量の変動が熱伝達特性に大きく影響することを実証しており、各条件下で入口流量一定条件を実現しながら実験を行った。 ①応用を考慮して蒸発潜熱の大きな水単成分を使用して実験を行った。管内径0.51mm、加熱長さ100mmの条件下で、低質量速度100kg/m^2sで熱伝達が安定したのは環状流となる領域の一部で熱流束100-110kW/m^2の範囲に限られ、微細管内での水の使用は他の有機液体に比してきわめて不安定となった。 ②流動不安定の主たる原因が微細管内の気泡の急速な伸長であることを観察結果から確認した。そこで自己浸潤性混合媒体が液膜破断を回避するのみでなく、気泡成長(界面移動)速度を低下させて流動を安定化し得る可能性に着目した。 ③微細管の大きな圧力損失下で下流に向かって相平衡計算を更新しながら、蒸発による濃度変化に伴う管軸方向流体温度分布の上昇割合を推算する方法を確立し、局所熱伝達係数の評価を可能にした。 ④低沸点媒体の優先的蒸発に伴う物質拡散抵抗の存在による気泡成長速度の低下割合を1-プロパノール水溶液(1-プロパノールが低沸点媒体)および1-ブタノール水溶液(水が低沸点媒体)の各濃度に対して計算し、それが顕著となるアルコール低濃度域を中心に実験を行った。気泡成長速度が最小となる濃度と、熱伝達が安定する熱流束範囲が最も拡大する濃度域とが一致することを確認した。すなわち蒸発熱の大きな水にアルコールを低濃度で添加することにより、安定して高い除熱特性が得られることを見出し、微細管内の沸騰を応用する上でのきわめて重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書の年度実施計画の項目達成度に対する自己評価結果は以下のとおりである。 1-2:単一微細管のテストセクション製作と実験装置本体の製作--ガラス製観察部を持つテストセクションを製作し、管軸方向局所熱伝達係数分布の詳細把握と気液界面挙動の同時観察を実現した。また熱損失の評価精度を上げて、より高精度な局所熱伝達係数が得られるようになった。|1-3:単成分媒体に関する単一微細管内熱伝達に及ぼす入口流量変動の影響--除熱能力の高い水の気泡成長速度は大きく、入口流量変動の有無によらず、熱伝達は安定しなかった。比較的低熱流束において、周期的に乾き部が生じて限界熱流束状態に達した。 2-1,2-2,2-4:単成分媒体に関する各種条件下における単一微細管のデータ取得--上記理由により水に対するデータの取得範囲はきわめて限定的となった。しかしアルコールの添加により大きな除熱能力をそのままに、安定した熱伝達が実現できることを新たに見出し、1-プロパノール水溶液に対して、出口圧力0.1MPa、質量速度100kg/m^2s、熱流束90-130kW/m^2、アルコール濃度0(水単成分)-10wt%、乾き度0-0.25の範囲で系統的な熱伝達データを取得した。また非共沸混合媒体に固有の物質拡散抵抗に基づく熱伝達低下割合を検証した。|2-3:自己浸潤性混合媒体の性質に関する計算・検討--圧力低下が顕著な微細管内下流に向かって、低沸点成分の優先的蒸発に伴う流体温度の上昇を評価する方法を確立した。また表面張力の変化に着目しながら、気泡成長速度が低濃度域で最小となることを複数のアルコール水溶液に対して示し、アルコール添加により水の流動不安定が回避できることを示した。 大きな除熱能力を持つ水を微細管内で安定的に沸騰させる方法を新たに見出し、高性能冷却の確立に対してきわめて重要な知見を得たので、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は以下の項目を実施する。 3-1 自己浸潤性混合媒体の核沸騰における伝熱劣化と伝熱促進に関する解析および考察--①既存の物質移動による伝熱劣化機構の見直し ②マランゴニ効果による伝熱促進の定量的把握 ③混合媒体の核沸騰における伝熱劣化と伝熱促進機構の重畳効果 ④最適混合媒体と限界性能(熱伝達係数、限界熱流束) 3-2 管内沸騰流における表面張力、慣性力、重力の支配域に関する検討--①ウェーバ数、フルード数、ボンド数の定義に関する検討 ②上記定義による各力の支配領域マップ作成 ③とくに異なる液体に対して普遍的に適用可能な各無次元数の定義、および新たな無次元数の導入 3-3 並列微細管冷却部の冷却性能に関する解析および考察--①シミュレーションにおける基本的考え方(ポンプ動力一定条件での比較、フィン効果と同様な計算法の導入) ②単相強制対流での冷却性能(流量、等価直径、ピッチの影響) ③強制流動沸騰での冷却性能(流量、等価直径、ピッチの影響) 3-4 冷却部における微細並列管群の最適配置に関する考察--①冷却部の体積あたりの除熱量を最大とする条件(微細管群の配列方法、冷却部材質の変化に対して) ②冷却部の体積あたりの除熱量を最大とする条件(発熱条件の変化に対して) 3-5 3年間の成果まとめ
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Causes of Carryover |
物品費は,微細管内強制流動沸騰を実用化して高性能冷却システムを開発するに際し,入口流量をほぼ一定に保ったにもかかわらず,除熱能力の高い水で大きな気泡成長速度を伴う伸長気泡発生により,非常に多くの実験条件下で流動不安定が観察されため,実験は流動不安定に基づく熱伝達の不安定を抑制するための具体的方法を見出すことを優先したので,使用額が少なかった.管の姿勢に加えて圧力,質量速度を広範囲に変化させるには至らず,気泡成長速度を低下させて熱伝達を安定させるためのアルコール濃度を細かく変化させる実験が主体となった.これにより熱伝達を安定化させる条件を計算により推定し,次年度に継続して実験を行う. 旅費は,関連研究の発表や調査に際し,適用可能な別費用を充当したため,使用額が少なかった.微細管内での強制流動沸騰における熱伝達の安定化を実現する方法を見出しているので,次年度に海外も含めて発表する予定である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由を踏まえ、平成27年度は以下の予算使用計画で進める予定である。尚、※印は学術研究助成基金助成金の繰越額(計:5,000,000円)を表す。 物品費(4,500,000円, うち※4,000,000円)は主に試験装置の補修および調整費(※2,500,000円)とし、他、配管材料、試験液体等の消耗品(1,780,000円, うち※1,500,000円)とする。国内外の学会発表のための旅費(2,200,000円, うち※800,000円)を、国内旅費として 680,000円(うち※320,000円)、外国旅費として 1,520,000円(うち※480,000円)を使用する。人件費・謝金として計上するものは無い(0円)。その他、会議参加登録費用等として 300,000円(うち※200,000円)を使用する予定である。
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