2013 Fiscal Year Annual Research Report
新しいヘテロ界面形成による高性能・省エネルギートランジスタの基盤構築
Project/Area Number |
25289082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹羽 正昭 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90608936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮沼 隆 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 講師 (90372341)
白石 賢二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20334039)
佐藤 創志 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 助教 (80649749)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炭化ケイ素 / 経時酸化膜絶縁破壊 / 信頼性物理 / 絨毯爆撃状絶縁破壊痕 / ヘテロ界面 / SiO2 |
Research Abstract |
本年度は、SiCヘテロ界面における信頼性物理の創成を目指して、高耐圧系の電気特性計測環境を整備し、SiO2/SiC構造の信頼性評価を行った。実験には、Al電極を用いた熱酸化膜SiC MOSキャパシタの信頼性評価を用いた。酸化膜信頼性を評価するためにTime-Zero Dielectric Breakdown(TZDB)およびTime Dependent Dielectric Breakdown(TDDB)測定を行ったところ、MOSキャパシタ表面に径が0.5 umから1umほどえぐれた穴が多数個集まって形成される絨毯爆撃状の破壊痕を見出した。SEM-EDX分析からこの特異的な絶縁破壊痕周辺のAl電極が消失し、”Self-Healing”が起こっていることが分かった。これらの実験事実から、絨毯爆撃状の破壊痕は”Self-Healing”を繰り返しながら穴がシリーズに形成されるというモデルを提唱した。絨毯爆撃状破壊痕を形成するために必要なエネルギーはキャパシタに充電されたエネルギーよりも非常に大きく、複数回の充放電を繰り返しながら絨毯爆撃状破壊痕が形成されることが分かった。 また、同分析によりSiC基板に形成された破壊痕表面のSi-richであることも判明した。断面TEM観察からは、SiC表面にSi-rich層、その上にC層が形成され、最上部に酸化膜層が形成されていることが判明した。この系のエネルギー見積もりから、これら破壊痕表面の組成変化は、絶縁破壊時に放出されたエネルギーがジュール熱となり、破壊痕表面でのSiCの状態に変化を及ぼした結果と考えられる。 以上のように、SiC MOSキャパシタ上のSi熱酸化膜の信頼性評価に関して当該キャパシタにおいてマクロな破壊現象がどのように生じているかについて詳細な検討を行った。 次年度以降は、本年度におけるマクロな破壊現象に対する知見を基にして、SiC上に形成したSi酸化膜信頼性の評価と信頼性物理の構築を目指して研究に取り組むほか、GaN on Siなど他の”on Si”ヘテロ構造についての取り組みにも着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、SiC基板上のシリコン熱酸化膜の絶縁破壊現象に注力して研究を行った。これは、今年度にて実施を計画していたHfO2/SiC積層構造を含めたSiC異種材料界面の信頼性物理の基礎となる成果である。SiO2/SiC構造は、SiO2/Si構造とは異なり、信頼性においても大きく異なる特性を呈することが予想されるため、これらの絶縁破壊現象を明らかにする必要がある。 一方、これらヘテロ界面を用いたパワーデバイス系の特性評価を行うために必要な装置の導入を行い、SiO2/SiC構造の絶縁特性測定に着手するなど界面科学構築への整備を行った。これらは、GaN on Si系デバイスの特性評価にも適用できることは言うまでもない。 以上のように、研究プロジェクト初年度としてはおおむね良好な進捗状況にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
SiC MOSキャパシタにおける絨毯爆撃状絶縁破壊痕のような新規現象の発見に対する物理機構の解明だけでなく、GaN on Siデバイス系にも展開してゆき、これらヘテロ界面系の界面物性など未知の物理現象について深堀することにより、高性能パワーデバイス実現に資する。 なお、当初は、HfO2/SiC系の検討も掲げていたが、当面は現在、パワーデバイスの根幹であるSiO2/SiC, GaN/Si系のヘテロ界面の検討を優先して進めることにする。 これらヘテロ界面系の試料作製は容易ではないため、入手ルートについても探ってゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成 26年度請求額とあわせ、導入した装置への設備追加に使用する計画である。
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