2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25289083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋本 克洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90251040)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アモルファスカーボン / カーボン薄膜 / アモルファス / 反応性スパッタ成膜 / 光照射成膜 / ドーピング / 結合型制御 |
Research Abstract |
水素化アモルファスカーボン膜作製法および物性制御法を確立し、太陽電池への応用を目指している。25年度は、①反応性スパッタリング法で作製する膜の電気伝導度制御法、②光照射法による水素化アモルファスカーボン膜作製の2点について実験を進めた。 反応性スパッタリング法で作製する水素化アモルファスカーボン膜のバンドギャップ制御は予備実験である程度めどが立っているので、ドーピングによる電気的性質の制御を試みた。用いたドーパントは、BとFである。炭素原料にはアセチレンを用い、BおよびFドーピング原料にはそれぞれB4C,CF4を用いた。Bドーピングにおいては、ドーピング量に応じて抵抗率が10E8Ωcmから10E5Ωcmまでの間で変化した。このとき、ラマンスペクトルに大きな変化が観察され、構造変化を伴うドーピングであることが推定された。一方、Fドーピングにおいては、抵抗率は10E8Ωcmから10E2Ωcmまでの間で変化した。この時のラマンスペクトルに大きな変化はなく構造変化を伴わないドーピングがなされていると推定される。構造については今後詳細に検討する。 光照射法による水素化アモルファスカーボン膜作製については、原料、光強度、パルス数の効果を調べた。用いた高原はNd:YAGレーザで波長266nm、パルス幅3nsecである。原料にはアルカンであるペンタデカン(C15H32)と芳香族化合物であるベンゼン(C6H6)を用い、原料に含む二重結合性の膜への影響に注目した。ペンタデカンに光照射すると二重結合性が増加、ラマン分光で水素化アモルファスカーボン様のスペクトルとなり、膜形成がなされことを確認した。ベンゼンも同様に水素化アモルファスカーボン膜が形成されているようであるが、光強度によるsp2とsp3の制御はペンタデカンの方が勝っていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書には25年度計画として、原料の効果、電気伝導度制御、光照射成膜法の検討を挙げている。 原料の効果については、一重結合のペンタデカン(C15H32)と二重結合をもったベンゼン(C6H6)を比較し、ラマン分光や光電子分光での評価においては共に水素化アモルファスカーボン膜が形成されるもののsp2とsp3の含有量制御はペンタデカンの方が良いことを見出した。成膜法は光照射成膜法である。反応性スパッタ法においては、二重結合を含む原料ほどsp2含有量が高くバンドギャップエネルギーが低くなることをすでに予備実験で確認しており、今回再現性を確認した。成膜法が異なれば、成膜メカニズムも異なるため、成膜方法ごとに原料の効果を確認しなければならないが、統一的な理解ができるように研究を進める。 電気伝導度制御に関しては、B,Fをドーパントに用い電気伝導度変化を確認した。従来、ドーパントは属が一つ異なる不純物を使用してきており、Bドーピングについては多くの報告例がある。本研究においても追実験で電気伝導度変化を確認した。しかしながら、抵抗率は高く、デバイス応用のレベルではまだない。そこで、新しい試みとして、Fドーピングを試みた。アモルファスカーボンはダングリングボンドが多くこれに1価の原子が結合しやすいこと、電気陰性度差が大きいことから電気的性質に変化を与えると予想した。実験の結果、抵抗率は10E8Ωcmから10E2Ωcmまでの間で変化した。電気的性質制御の新しい突破口となると思われる。 光照射成膜に関しては、波長266nmのNd:YAGレーザ照射で有機物膜をカーボン化することを試みた。水素化アモルファスカーボン膜と同じラマンスペクトルが得られ膜形成に成功した。これらの結果より、達成度は良好と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の成果を踏まえ、水素化アモルファスカーボン膜の膜形成法の開発と物性制御に力を入れる。ドーパントとしてFの有効性を見出したので、最適ドーピング条件の最適化、キャリアの活性化エネルギーや易動度の測定、Fの結合様式の解明等を通じて電気伝導度変化のメカニズムを考察する。さらに他のハロゲンイオンのドーピングや、nタイプ化を目指した1族イオンのドーピングを試みる。 原料がバンドギャップに与える効果についてはデータが蓄積しつつあり、継続して様々な原料を検討する。一重結合、二重結合が含む割合が膜のバンドギャップに与える効果に着目してきており、これらに加えて分子量の大小の効果についても検討する。原料が膜物性に与える影響については個別実験に終わらず、体系的理解ができるよう系を工夫して実験をする。 新しい成膜法である光照射法については25年度に膜形成が確認できたので、照射条件と膜質の関係を明らかにするとともに照射条件の最適化を行う。膜形成のメカニズムを考察しながら電気的性質制御の試みを開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ホウ素のドーピングにガス原料使用を予定していたが、B4Cなる固体原料を見つけこれを賜与ぷしてドーピング効果が認められたため、ガス配管用の設備は現段階では設置不要となった。この分を新たな実験に使用するため次年度に使用することとした。 ドーピングによる電気伝導度制御に関する実験に使用する。 ドーパント原料の購入、配管増設を行い、様々な原料のドーピングを検討する。
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