2015 Fiscal Year Annual Research Report
Beカルコゲナイドを用いた高信頼性緑色~黄色半導体レーザの実現
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25289092
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
秋本 良一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 上級主任研究員 (30356349)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 半導体レーザー / II-VI族半導体 / 量子井戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結晶強度の増大が期待できるベリリウム(Be)カルコゲナイド系II-VI族半導体材料を用いて、信頼性の高い緑色および黄色半導体レーザを実現するための基盤技術を開発する。活性層にBeを添加したBeZnCdSe量子井戸レーザの室温連続発振条件下における信頼性を検証し、Beの添加が素子の結晶強度や劣化抑制に与えるインパクトを定量的に明らかにすることを目的とする。これまで発表してきた利得ガイド型の素子構造は、ストライプ幅が10μm以下になると電流が横方向に漏れ出し、しきい電流値の増大およびジュール熱発生による信頼性の低下し、本格的にBeの添加効果を研究する上での障害となっていた。本年度はこの問題の解決のため、新規な電流狭窄構造をもった素子を開発した。具体的には、ディープエッチングによるリッジ構造の形成と、そのSiO2埋め込み平坦化プロセスを開発した。素子表面の平坦化プロセスにおいては、化学機械研磨と反応性イオンエッチングを組み合わせせることにより、精密に膜厚を制御しながらSiO2の平坦化および上部素子電極の精密な頭出しが可能となった。作製した素子のしきい電流値は10mA以下と極めて低くなり、従来構造の約1/10から1/5程度に抑制することに成功した。以上より、レーザ発振条件下においてBeの添加効果に素子与えるインパクトを定量的に明らかにするための基盤が確立できた。これらの結果を発表した国際論文誌(APL, APEX)はWebマガジンSemiconductor Todayの2015年11月6日および12月16日付ニュースにも取り上げられ注目を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新たな電流狭窄構造を導入した素子を作製し、しきい電流値は10mA以下と極めて低くなり、従来構造の約1/10~1/5程度に抑制することに成功した。今後最終年度に向けて、活性層やその他の層へのBeの添加効果を本格的に研究できる段階にまで達することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により低しきい電圧・電流を実現するためのレーザー素子の構造について一定の目途がついた。今後は、レーザ発振条件下においてBeの添加効果に素子与えるインパクトを定量的に明らかにする研究に本格的に取り組む。
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Causes of Carryover |
レーザ素子作製用ウエハの結晶成長の条件出しに予想外に時間を要したため、その後の研究計画に遅れが生じた。この遅延に伴い、作製したウエハを用いた素子工程やその後の評価で必要となる部材等の消耗品の購入計画にも遅れが生じた。当初の研究期間内にすべての研究予定項目を完了するのが困難であると判断したため、研究期間を一年延長した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に繰り越した予算は、研究計画で未着手項目のデータ取得用の結成成長、素子作製工程、評価に必要な消耗品の購入、得られた結果の学会発表のための旅費に充てる。
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