2014 Fiscal Year Annual Research Report
Datta-Das型スピン FETを用いた超省エネルギー論理回路実用化の研究
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25289100
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 省二 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (00262593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 比宇麻 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 助教 (10709132)
赤堀 誠志 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 准教授 (50345667)
土家 琢磨 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40262597)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピンFET / スピン軌道相互作用 / インバータ / 論理回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、スピンFETの原型の一つとなる、トップゲート付きスピンバルブ素子の作製・スピン輸送特性解析に取り組んだ。素子はInGaAs/InAlAsヘテロ接合にメサ加工を施し、CoFe電極をメサ表面上に形成し、その上からAl[2]O[3]絶縁膜を介してトップゲート電極を取り付けたものである。CoFe電極がメサ下にも垂れる構造のため形状が複雑になり、磁化特性が明確で無かったりサイズ依存による保持力差が出ない問題等は、作製条件を検討することにより解決できつつあるが、ゲートリークの問題は、まだ根本的解決ができずさらに検討を加えている。これまでALD堆積Al[2]O[3]膜の絶縁性は堆積後アニールにより保障してきたが、本スピンバルブ素子においてそれを行うと、既に堆積されているCoFe膜の変質・剥離を比較的頻繁に招くことが明らかとなった。これは当然磁化特性の劣化・破壊に繋がり素子作製上大きな問題となった。これに対し現在は、ALDでなくRF、ECRスパッタで絶縁膜を作製しアニール温度の低減を狙っている。 上記のゲート付きデバイスの狙いは、スピン軌道相互作用の変化、すなわち、Dresselhaus型のスピン軌道相互作用が一定の条件下でRashba型のものを変えた効果を見ようとするものであったが、別の視点からの取り組み、電流方向が面内で異なる素子を作製し、Rashbaの寄与はそのままで、Dresselhausのそれを変えた効果を見ようとする試みも開始した。 また、上記のような系における空間的スピン変調について理論的な研究を行っている。今年度はRashba有効磁場の制御法を中心に研究を進めた。量子井戸中に高濃度の不純物をδドープすることによって生じる強いビルトイン電場を用いることで、外部変調可能でかつ強度の強いRashba場を発生させることを提案し、またその有効性を理論計算によって示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スピンFETインバータの原型となる素子作製プロセスにおいて、多くの予想を超えた問題が発生していることが最大の原因である。すなわち、 1.強磁性電極磁化特性のプロセス依存性がいまだ完全に制御できない。スピンバルブ素子における強磁性電極は半導体2次元電子ガス上ウェハ上に形成するため、界面歪みの影響を受ける上に、形状が複雑になりがちである。特に界面歪みは、強磁性金属蒸着前の半導体表面処理法に強く依存し、再現性の良いプロセス実現に依然として困難を抱える。蒸着法の取捨選択(RF/ECRスパッタ法、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法)と表面処理法(wet洗浄、酸によるエッチング、逆スパッタなど)に多くの組み合わせがあり、いまだ完全に最適解を絞り切れていない。 2.Al[2]O[3]ゲート絶縁膜のリーク特性として、数Vの耐圧とスローリークの可能な限りの抑圧が求められるが、現在原子層堆積法により作製される膜厚は時間的制約から数10 nmであり、要求条件は堆積後のアニールによってやっと保障されている状況である。現在の典型的なアニール条件は、300°C、30分程度であるが、この条件ではこの段階以前のプロセスによる構造が重大な損傷を受けることがしばしばあることがわかってきた。特にその前に形成する強磁性電極への影響が大きく、変質・剥離が頻発して素子としては使い物にならなくなる場合がしばしば見受けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.強磁性電極の問題は、大体解決しつつあるので、さらに様々な条件でその作製条件を最適化し、サイズ依存性が明確に反映する強磁性電極の電極の磁化特性獲得をめざす。 2.より低いアニール温度で、所望の絶縁特性が達成できるAl[2]O[3]成膜法、成膜条件の最適化を進める。 3.これらの成果をもとに、スピンバルブ素子 → スピンFET ⇒ タンデムスピンFETインバータの設計・作製を進める。 4.基礎的課題の継続的追求:本スピンバルブ素子において、われわれの実験で得られている、著しく増大したスピン拡散長を説明するメカニズムとして、永久スピン螺旋状態の実現が推測されている。この状態は、Rashba型、Dresselhaus型のスピン軌道相互作用強度がほぼ同じ場合に実現できると予想されている。これを実験的に検証するオルタナティブとして、Rashba型スピン軌道相互作用を変化させることを目的としたゲート構造の作製・測定・解析に加え、[1-10]方向以外の[110]、[100]方向に電流方向をもつゲートをもたない素子も作製し、方位に依存するDresselhaus型スピン軌道相互作用を変化させたときのスピン緩和時間・スピン拡散長についての検討を進める。
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Research Products
(6 results)