2014 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚受容体センサアレイを用いた香りの記録再生と要素臭探索
Project/Area Number |
25289120
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中本 高道 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (20198261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 亮平 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40221907)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 匂いセンサ / 嗅覚受容体 / 昆虫 / 蛍光測定 / フロー測定系 |
Outline of Annual Research Achievements |
匂いセンサ素子の構築では、キイロショウジョウバエ一般臭嗅覚受容体を、補助タンパク質(Orco)およびカルシウム感受性蛍光タンパク質(GCaMP6s)とともに遺伝子導入することで、匂い物質に対してSN良く蛍光強度変化を示す細胞系統を作出した。作出した細胞系統が、アルデヒドやアルコールといった化学構造の異なる匂い物質を異なる蛍光強度変化量で検出できることを示した。これにより、複数の匂い物質に対する嗅覚受容体の応答を蛍光強度変化量として検出できる細胞系統の作出技術を確立した。 次に測定系の検討を述べる。前年度は蛍光測定系の確立を行ったが、本年度は匂いの記録再生システムを実現する上で必要な測定系の改善を行った。マイクロポンプを使用してフロー測定系を構成し、嗅覚受容体を発現した細胞にリンガー液もしくは匂い溶液を供給する。前年には流量が大きすぎて細胞が剥離する問題があったが、マイクロポンプの駆動周波数、駆動電圧を調整することにより剥離の問題はなくなった。また、4サンプルをセットして電磁弁により自動的にサンプルを切り替えてセンサチャンバに匂いを供給するフロー測定系を開発して、その動作を確かめた。しかし、現状ではまだセンサ応答が予想される値より小さいために、次年度この点を改良する必要がある。また、前年度は、1種類の細胞の応答の測定のみを行ったが、本年度は複数種類細胞の測定の基礎的検討を行った。さらに、2つの流路を有するマイクロチャンバを用い光学系の対物レンズの倍率を下げることにより、2種類の細胞の蛍光輝度変化を同時に測定できることがわかった。それから、水晶振動子の上に嗅覚受容体発現細胞を吸着させ、高湿度下で匂い測定実験を行い、気相測定の可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
匂いセンサ素子の構築において、平成25年度の技術を改良し、平成26年度では一般臭嗅覚受容体の応答をSN良く取得できる細胞系統の作出技術を確立した。この技術により、化学構造の異なる複数の匂い物質を蛍光強度変化量として検出できる細胞系統の作出を達成した。現在、この技術を複数種類の一般臭嗅覚受容体に展開し、細胞系統の作出、および匂い応答特性の取得に着手している。以上から、匂いセンサ素子の構築はおおむね順調に進展している。 それから、測定系に関する部分であるが、現在までに複数サンプルの自動測定を行い、複数嗅覚受容体の応答を同時計測を可能にする見通しを得た。また、自動測定系を用いず手動測定を行った場合には、励起光に変調をかけて行うロックイン計測法と併用して500nM程度の濃度のジオスミンの計測に成功しており、かなり低濃度の測定も可能である。自動測定系を用いた場合はまだかなり高濃度にしないと測定できないが、測定システムを最適化できれば研究は飛躍的に進展すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した技術を発展させ、平成27年度では、複数種類の一般臭嗅覚受容体を対象に、様々な一般臭を異なる蛍光強度変化量で検出できる細胞系統を作出する。作出した細胞系統について、光学イメージングにより、アルコール、アルデヒド、エステル、芳香族といった多数の一般臭に対する応答特性、および濃度応答を取得し、一般臭の検出性能を明らかにする。これにより幅広く一般臭を検出できる細胞系統を選択し、複数種類の匂いセンサ素子を完成させる。 測定系に関しては、現在使用しているマイクロポンプは流量が大きく、低流量の実験には向かない。そこで、シリンジポンプも使用して、低流量でもセンサ応答の測定を行い、本実験系に適したポンプと流量の検討を行う。さらに細胞を収納するチャンバの形状も検討する。昨年度まで使用していたチャンバは高密度の細胞を収納するのに適しているが、細胞の上部に大きなデッドスペースが存在する。このデッドスペースを極力減らしたチャンバの構造も考えられるので、このチャンバを用いて従来チャンバとの比較を行う。さらに平成25年度に検討した画像処理も組み込み、蛍光強度変化のある細胞のみをピックアップして輝度変化を求めるようにする。そして、これらの検討を行った後、2種類の嗅覚受容体を発現した細胞を使用してセンサアレイを構成し、複数の匂いを調合した匂い溶液を測定に用いて、匂いレシピ探索実験を行う。調合比とセンサアレイ応答パターンの関係及びレシピ探索アルゴリズムについても検討し、嗅覚受容体発現系に適したアルゴリズムを確立したい。
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Causes of Carryover |
平成27年度前半に国際会議発表の予定があり、その旅費として使用する分を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年6月にマレーシアで開かれる国際会議の出張費用として使用する。
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Research Products
(16 results)